語りなおしシェイクスピア 2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087735062

作品紹介・あらすじ

世界のベストセラー作家が、シェイクスピアの名作を語りなおすシリーズ第二弾。
あの「リア王」が、現代のメディア王に。
巨大な企業王国をめぐる三人の娘の忠誠と裏切り。

テレビ局や新聞社を傘下に収めるメディア王ダンバーは、会社の乗っとりを狙う娘たちによって療養所に入れられるも、脱走。末娘だけが父の身を案じて捜索にのりだすが…。父親から虐待を受け、クスリと酒におぼれた自らの体験を基にイギリス上流階級の腐敗を描き続ける作家が、強烈で横暴な父親「リア王」を語りなおす。解説・河合祥一郎。

【著者略歴】
エドワード・セント・オービン
1960年生まれ。イギリスの作家。男爵家の末裔として生まれ、イギリスとフランスで育ち、名門ウエストミンスター・スクールを経てオックスフォード大学で文学を学ぶ。幼い時に父親から性的虐待を受け、のちにアルコール依存症、ヘロイン中毒に苦しんだ半生をつづった「パトリック・メルローズ」シリーズ(全5作)が高く評価され、なかでも『マザーズ・ミルク』はフェミナ賞外国賞を受賞、ブッカー賞の最終候補作に。シリーズはベネディクト・カンバーバッチ主演・製作総指揮でテレビドラマ化された。

小川高義(おがわ・たかよし)
1956年生まれ。翻訳家。東京工業大学名誉教授。東京大学大学院修士課程修了、訳書『オリーヴ・キタリッジの生活』『オリーヴ・キタリッジ、ふたたび』(エリザベス・ストラウト 早川書房刊)、『停電の夜に』『低地』(ジュンパ・ラヒリ 新潮社刊)、『ねじの回転』(ヘンリー・ジェイムズ 新潮文庫)、『老人と海』(アーネスト・ヘミングウェイ 光文社古典新訳文庫)『アッシャー家の崩壊/黄金虫』(エドガー・アラン・ポー 光文社古典新訳文庫)他多数。

【原書タイトル】
Dunbar

感想・レビュー・書評

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  • するするいけるのでシェイクスピアのリア王も読むかという気持ちになった。今世紀の王国の人たちはどうも俗っぽくていけない。愛と涙と暴力とお色気で、2時間ドラマにするとちょうどよさそうな内容だったので、リア王の翻案として正しいのかもしれない。

  • 現代作家は、超有名「リア王」をどうするのか。

    「リア王」を戦国時代に変換した黒澤明監督映画「乱」では、億かけて作った城を燃やすシーンや鬼気迫る仲代達也の演技が、今も語り継がれる。

    この物語では、現代でのメディア王ダンパーが娘たちの謀略により精神治療の病院へ「幽閉」された後から始まり、ダンパーの脱走、娘たちの追跡、関連する人物たちの思惑などが、株主総会までの数週間に繰り広げられている。

    原作では強烈な国王として君臨したリア王が、一代で大企業を築き上げたカリスマ経営者となり、老いて権力を子供に譲るときの未練と傲慢さがゆえに、怒り、裏切り、孤独を招き、荒地を放浪するところが、一つの見どころとなる。

    現実と妄想のはざまを行き来する老いたダンパー
    冷静さをダンパーに与え続ける道化師役のピーター、
    悪役を演じても、どこか幼さが潜む長女と次女

    巻末には「オリジナルストーリー」や「訳者あとがき」「解説」がついている。
    先に「オリジナルストーリー」、物語と並行して「解説」を読み進め、読後の余韻に「訳者あとがき」を読むと、悲劇「リア王」をどのように同期させどのように差別化したかったかが、少し見えてくる。

    悲劇は時に「後味の悪さ」を残す。
    その残骸を読者はどのように昇華するのか……。
    人によって、そのときによって、変化する……シェイクスピアだな~ぁ。

  • バッドエンド作品からは喪失感や悲壮感だけしか得られないのではないかと思っていたが、マイナスの感情や描写にこれだけ感嘆できたのは驚いた。
    それぞれの思惑の描き方が(嫌なことに)全て共感できてしまう、共感させられてしまう。ダンバー逃走劇の盛り上がりも面白いし、とにかく秀逸な表現が、読み応えがあってどんどんページをめくってしまった。

  • さすがシェークスピアの悲劇。救いが無い。先に読んだ本と設定同じなのに、むしろ娘を可愛い盛りに亡くす方が酷いのに、リア王の方が業が深いのかしら。途中でせっかく心入れ替えたのに、結局娘失うし。殺したいほど恨まれるような金も権力もいらないから、てっぺん掴みたい気持ちがさっぱりわかんない。それにしてもほんとになんで物語に出てくる上の子はろくでもないのか。

  • リア王やシェイクスピアを読んだことがなくても、楽しめると思う。でも、読みながら、む?このセリフは確かあれの…とか、この関係性はこの構造はあれと似てるような…などとモヤモヤしていたものが、河合祥一郎氏の解説にて、そうだそうだった!とスキッとする。セント・オービンがいかに研究したか凝ってるかがわかる。

  • 富と権力を奮っていたメディア王は娘達との骨肉の争いで何が大切か悟った。

     カナダのメディア王''ダンバー・トラスト''の会長ヘンリー・ダンバーは娘2人と医者の共謀によって英国の療養所に入れられ、経営権を奪われようとしていた。

     末娘のフロレンスは父親と会社経営で仲違いを起こし関係を絶っていたのだが父親への愛情か彼を探し始めた。

     一方で医者のボブはアビゲイルとメガンの2人の娘に協力すると見せかけ競合社のユニコムと結託しダンバー・トラストを乗っ取ろうと画策していた。

     そんな中、ダンバーは療養所を抜出し3日間飲まず食わずで山や谷を彷徨っていた。フロレンスに助けられた時には精神に異常がみられた。裏切った2人の娘と乗っ取りの競合社との戦いが急なテンポで進む。

     本作は、シェイクスピアを現代の作家で語り直すプロジェクトの2作目で今回は''リア王"の現代版です。オリジナルは王様が娘2人に陥れられフランス王国に嫁いだ末娘と共に戦争をするが敗北、そして多くの仲間や王自身が亡くなってしまう。
     リア王とハムレット・オセロー・マクベスの4作品はシェイクスピアの''4大悲劇''と言われる代表作で救いは無く、悲劇が続く作品です。

     ダンバーは、権力を使い会社を拡大させる事のみに人生を掛けて来たが病院から逃亡劇で人の大切さ、亡くなった妻と末娘への愛情を募らせはじめた。権力を手放して残りの人生を穏やかに生きようと決心した。

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