ようこそ、ヒュナム洞書店へ

  • 集英社
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087735246

感想・レビュー・書評

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  • 本屋大賞翻訳部門受賞ということで手にしました


    翻訳した牧野さんも書いていますが
    『時には立ち止まって休むためのきっかけ』
    となりそうな優しい一冊


    ヒュナム洞書店を舞台に
    店主のヨンジュやバリスタのミンジュン、
    常連のお客さんたちが
    少しずつ回復していく話



    生きるのがちょっと楽になる言葉が
    沢山散りばめられていて
    なんかホッとする作品でした


    特に好きなのは

    『いい人が周りにたくさんいる人生が、
    成功した人生なんだって。

    社会的には成功できなかったとしても、
    一日一日、
    充実した毎日を送ることができるんだ、
    その人たちのおかげで』

    という言葉。

    成功した人生とは、
    幸せな人生とは、
    とても考えさせられました。


    あとは読んだ本をすぐに忘れてしまう私としては
    ヨンジュも同じことを言っててホッとしました笑

    本が好きな人、本屋が好きな人には
    共感できる部分も出てくると思います(^^)



    ヒュナム洞書店がとってもいい雰囲気で
    私も常連になりたい…
    いやもはや常連の気持ちで読んでました
    ミンジュンのコーヒー飲みたいな
    飲んでのんびり本読みたいな



    あと韓国が舞台でしたが
    日本と思って読んでもほとんど違和感ないほど似ていました
    あちらのみなさまも生きづらさを感じているんですね




    『時間が必要なんだって

    しばらく休む時間、
    考える時間、
    のんびりする時間、
    振り返る時間』


    そんな時間をくれる作品でした(^^)


  •  何っ、本と書店ですと? それにコーヒー? これは見過ごせませんなぁ。それこそマストで読めってことですよね。はい、という訳で、本書は本好き更には生き方を模索している方に好書です。

     ソウルの平凡な住宅街に開業した『ヒュナム洞書店』を舞台に、店主ヨンジュと常連客たちとの交流を描く物語です。(はは〜ん、ありがちな話?)
     主人公の新米店主・ヨンジュは、30代後半の心に傷を負う女性。(ふふ〜ん、店主の成長物話?)
     40のショートエピソードがつながって全体を構成していくスタイルになっており、とても読みやすいです。
    (ほほ〜、隙間時間にもってこい?)

     店主のみならず、周囲の人々の過去も徐々に明かされ、韓国の社会事情の厳しさも伝わります。んで、その対象も意外に広く深く、軽いようで結構刺さります。
    (ひひ〜ん、馬か! 異国も同じ?)
     常連客も個性豊かです。店主も周りも悩みや傷を抱え、そんな人々が書店に集い、緩やかに交流して知らず知らず再び前を向いて歩き出す力を得ているんです。
    (へへ〜、やっぱり感動もの? いいね!)

     そんな人と人のつながりをもたらす場が書店というのが味わい深く、実際ちょっとないよなーと、うらやましくも元気をもらえる読書体験でした。
     豊かな人生の評価基準は、他人との比較や他人が決めるのではなく、自分の中にあるのですね。
     以上、心の声〔は行〕間投詞による紹介でした。

     余談ですが、TVドラマ『深夜食堂』が好きで、『深夜食堂fromソウル』も視聴しました。路地裏に佇む小さな食堂に、その街で生きる様々な人が集い、心を満たしていく設定は同じで、韓国版も文化の違いが見て取れ、興味深かったです。
     人を引き寄せる店っていいですよねー。なんか、本書と通じる部分がある気がしました‥。

    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      ぜひぜひ、笑っちゃうかもですよ(^^;)
      ぜひぜひ、笑っちゃうかもですよ(^^;)
      2024/03/09
    • あんころうさん
      んんん…!もう今すぐ近所のくまざわ書店に行って買いに行きたくなるような素敵なレビューを読んじゃいました!ありがとうございます!
      んんん…!もう今すぐ近所のくまざわ書店に行って買いに行きたくなるような素敵なレビューを読んじゃいました!ありがとうございます!
      2024/04/19
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      あんころうさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      本書はとても滋味あふれる作品と思いました。
      海外作品は人名が入り込まない(私...
      あんころうさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。

      本書はとても滋味あふれる作品と思いました。
      海外作品は人名が入り込まない(私もです)デメリット
      もありますが、読まず嫌いももったいない気がします。
      2024/04/19
  • 新米女性書店主・ヨンジュは、書店を開いた当初、力なく座ってぼんやりし、時には涙までこぼして客を当惑させていた。
    バリスタ募集をし、ミンジュンが来てから徐々に書店の雰囲気も変化していく。

    ヨンジュの性格も掴みきれないままだったが、話が進むにつれて彼女の過去が明らかになり、かつては燃え尽き症候群だったこと。
    そして、ミンジュンは就活が上手くいかずに将来の不安もあったこと。

    書店に来る人たちのそれぞれの悩み…仕事や家族との関係などさまざまだが、互いに付かず離れずの程よい距離感を保ちながら関心は持ちつつも押し付けがましくないところが心地よく感じた。

    何も話さなくても察してくれて、わざとらしい心配とか慰めのことはをかけてくれる人はいなくて、ありのままの自分を受け入れてくれる感じがよくて、今の自分を否定しないでいられるようになったんだと言ったミンジュンの言葉が心に残った。

    書店に集う人々の交流のなかで、不安定な非正規雇用、劣悪な労働環境、就職難など社会問題が見え隠れする。読んでいるうちに自然と、多様な働き方や生き方、働くことの意味についても考えさせられる。

    人との関わりを通して気づきを得たり、慰められたりしつつ、最終的には自分の足で再び立ち上がる勇気を手にする。
    10代の男子高校生から自営業の50代女性まで、さまざまな個性を持った男女が登場するのも書店ならではだろうか。
    書店ならではの醍醐味にいくつかの本も出てくるので、それも楽しめる。







  • お店に入って本を選ぶ。何を買うかを迷って
    グルグルお店の中を歩き回り疲れたら、
    椅子に座って美味しい珈琲を飲む。
    少し休んでからまた本を探す。
    そんな私の理想の本屋が"ヒュナム洞書店"。
    この書店の雰囲気が読んでていいなと思う。
    時間がゆっくり流れてて、時間を気にしなくていい。まるで群ようこさんの『かもめ食堂』みたいと思ってたら、最後の『作家のことば』に映画の『かもめ食堂』のような雰囲気の小説を書きたかったと書いてありました。

    この作品に登場する人物はみんな悩みを抱えている。そんな人たちが"ヒュナム洞書店"に来て、
    色んな人と出会い、話をして心が軽くなっていく。
    話をしてる内容が私には難しくて「結局何を言っているの?」というところもあったけど、共感できるところもあった。読んでる途中で「今、すごく重要な事を言ってるよね。私、今大事なところ読んでるよね」というのがあり、気付いたら読み返してました。
    特に共感できたのが、P167の『仕事に対するわたしたちの姿勢』とP203の『怒りを鎮める能力が必要』です。この二つの話はまさに今、私直面してるなと思いました。この作品は癒し系の本屋さんの話だと思ってたけど、仕事の話も結構出てくる。それも苦しい思いをしてる話。日本も韓国も働く環境は一緒。もう無理、と思ったら休むのも大事。
    そんな事を気付かされた作品でした。

    あと韓国の呼称の文化がいいな。
    年上の女性に使う"イモ"、女性が年長者を呼ぶときに使う"オンニ"、子供を持つ女性に使う
    "子の名前➕オンマ(お母さん)"などが出てきたけど、これが温かくて優しさを感じました。

    • kuma0504さん
      多分、「かもめ食堂」は、韓国で何度も何度もテレビ等で再放送されていると思います。10年ほど前、若い夫婦が小さなおにぎりの店を出していて、その...
      多分、「かもめ食堂」は、韓国で何度も何度もテレビ等で再放送されていると思います。10年ほど前、若い夫婦が小さなおにぎりの店を出していて、その名前がかもめ食堂でした。突出しで出て来る味噌汁ちゃんとお出汁で作っていました。
      2024/04/22
    • Sさん
      こんばんは、kuma0504さん。
      コメントありがとう。

      「かもめ食堂」韓国でも人気あるんですね。実際にその名前のおにぎり屋さんがあったと...
      こんばんは、kuma0504さん。
      コメントありがとう。

      「かもめ食堂」韓国でも人気あるんですね。実際にその名前のおにぎり屋さんがあったというのは、なんか嬉しいです。

      kuma0504さんはよく韓国に行かれてるみたいで、羨ましいです。地元の人が行くお店とかも入って、お食事もされてるのですごいですね。
      1月の旅行記、面白かったです。
      2024/04/22
  • 本屋大賞翻訳部門受賞した当日、図書館より届いた。以前からとても読みたかった上に、巡り合わせも良いタイミング!

    心に染みるフレーズが多く付箋だらけ。
    こういう時に限って借りた本だからメモしとかなく
    ては…

    小説なのだが、様々な悩みや個性を持った登場人物が主役であり、読了時は人生の哲学書を一冊読み終えたような気持ちになる。

    自分が本を読む意味、仕事の楽しさ辛さなどなど多くの事を気づかせてもらえる本かと。

    文庫化されるくらいのタイミングで再読したくなるんじゃないかな。
    その時はぜひ手元に用意したい。

  • ずっと読んでいたい小説がある。
    これもまたその一つだった。
    この書店の仲間として自分がそこにいるような気がしていた。読み終わるのが惜しかった。

    しかし、韓国と日本のよく似ていること!生きづらさの質が同じで、なるほど出生率がニ国とも低いはずだよね、と思った。
    ニ国とも儒教の国だから、家父長的なプレッシャーが強く残ってしまってるんだよね。儒教の発祥の中国では、とうに抜け出しているというのに…
    末端で受け止めたこの双子の国では、家父長制の実がじゅくじゅくと熟れて腐っていく…。その犠牲となるのは、女性であり、権力志向のない男性であり、子どもである。

    そんな生きづらい世の中から抜け出して、自分が好きでいられる小さなことを少しずつ実践していく人たち。
    ここに登場する人たちはみんなギリギリを踏ん張ってる。性善説で描かれすぎかもしれないが、読んでいてこちらも肩の力が抜けてくる。
    そして、その中心に書店が存在することが、読書好きとしてはたまらない。
    日本でもこんな書店あるといいな。

    • はらださん
      心が温まり清々しくなる感想、同じ気持ちになりました。
      私もこの書店の風景をずっと読んでいたいです。
      心が温まり清々しくなる感想、同じ気持ちになりました。
      私もこの書店の風景をずっと読んでいたいです。
      2024/05/07
    • hasemaさん
      コメントうれしいです。
      「幸福を求めるのではなく、幸福感を求める」というくだりとか、いろんなところで、うんうんと頷きながら読みました。この本...
      コメントうれしいです。
      「幸福を求めるのではなく、幸福感を求める」というくだりとか、いろんなところで、うんうんと頷きながら読みました。この本を好きな人は、なんていうか、うまい言葉が思いつかないけど、もう「仲間」ですよね(笑)
      こんな空間、自分の近所にもあるといいですね。
      2024/05/07
    • はらださん
      hasemaさん、本棚の選書もお人柄の様な温かいヒュナム書店の様ですね
      とても参考になりフォローさせていただきました
      (当方、激務のせいにし...
      hasemaさん、本棚の選書もお人柄の様な温かいヒュナム書店の様ですね
      とても参考になりフォローさせていただきました
      (当方、激務のせいにしてはいけませんが、読書の時間が無く、大海に居るのに潤いを得ずでした…)
      フォローさせていただきました事、嬉しいご縁と思い、本書を大切に読み返したいと思いました。
      長文失礼致しました。
      2024/05/07
  • Amazonの紹介より
    完璧な人生なんてないけれど、「これでいい」と思える今日はある。ネットで人気を博し韓国で累計25万部(2023年9月26日現在)を突破した、心温まるベストセラー小説!
    ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……。それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
    新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。



    【2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位】ということで読んでみました。構成としては、10分ドラマを見ているかのような短めのエピソードを40編描かれていて、区切りとしてちょうど良く、気軽に読めるかなと思いました。

    個人的に海外小説は人の名前を覚えるのが苦手なので、あまり手に取らないのですが、ちょっと似ている名前はあったものの、登場人物は比較的抑えめなので、なんとか最後まで読めた印象でした。

    冒頭部分では、何の前触れもなく、小さな書店をオープンさせます。そこからバイトが入ってきたり、常連ができたりと奮闘劇が始まります。主人公が本屋を開くまでの過程は、後半になって明らかになります。
    小さな書店をオープンするということで、初めは経営大丈夫かな?と思いつつも、本を売るだけでなく、イベントを行ったりと徐々に経営が成り立っていきます。

    その中で垣間見るのは、登場人物達の苦悩です。主人公だけでなく、バイトや常連がいかにして今に至っているのか?そこには韓国の仕事事情も絡んでいくのですが、日本と似ている部分もあって、とても他人事ではないなと思いました。

    みんながみんな、同じ考えではなく、十人十色、色んな考えを持っている人達ばかりでしたので、しみじみと色んな人間だなと気づかされました。
    単なる本屋の奮闘劇ではなく、人生教訓といいましょうか、言葉のチョイスが良く、時折、心にグサッと刺さりました。感情で伝えるというよりは、淡々と論理的なのですが、「なるほど」と思えるような人生にとってのワードだったので、そういった意味でも楽しめました。

    今迄の行動から新たなる行動へ。変わろうとする登場人物たちの姿勢に人生を学ばされました。
    実際、こういった書店があったら、行ってみたくなりました。どのように展示し、どのようにして経営がなりたっているのか?興味がわいてきました。

  • いい人が周りにいる人生が成功した人生だという言葉に感動。私も解き放ちたい過去がいっぱいあるけど、今家族に恵まれていい人が周りにいる人生を送れている。素晴らしい本とはこのように別の視点から気づかせてくれる本。良い本を探しながら書店でコーヒー飲みたい。

  • 本屋大賞、翻訳小説部門の受賞作。

    「ヒュナム洞」という「休(ヒュ)」を冠した本屋さんを通して、働くことを振り返ったり、自分自身にとっての良いリズムを探す人々の姿が描かれる。

    世代間の働くことに対する価値観の違い。
    男女の社会における待遇の違い。
    当たり前とされることに抗うことは、エネルギーのいることだけど。
    人や本が、そっとそのエネルギーを補充してくれる。

    読みながら、私もこんな書店をやってみたくなった。
    素敵なバリスタと、知識のあるアルバイト。
    そして、自分自身のアイデアで、人と人と本を繋げていく空間。いいなあ。

    途中でスンウという、堅物の作家(サラリーマン)が登場するのだけど。
    無愛想な彼が、自分の心について深く考える様子、そのことが彼自身の姿を変えていくのに、ときめく。

    「仕事って、階段のようなものだと思っていたんです。てっぺんにたどり着くために上っていく階段。でも実際には、ご飯のようなものだった。毎日食べるご飯。自分の身体と心と精神と魂に影響を与えるご飯。この世には、急いでかき込むご飯もあれば、心を込めて丁寧に食べるご飯もある。これからは、素朴なご飯を丁寧に食べる人になりたいと思っています。わたしのために。」

    良い時間を過ごせた一冊。

  • 優しい時間ですね…
    人生に疲れて立ち止まったり、方向を見失った人たちに寄り添う空間。
    癒されますね。
    読書≦本屋好きな私にとっては、垂涎ものの空間でした。

    「仕事に対するわたしたちの姿勢」とか、「ボタンはあるのに穴がない」などは、ちょっと沁みました…

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