ねじの回転 FEBRUARY MOMENT

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087745856

作品紹介・あらすじ

「不一致。再生を中断せよ。」近未来の国連によって、もう一度歴史をなぞることになった2.26事件の首謀者たち。彼らは国連の意図に反して、かつての昭和維新を成功させようとするが。恩田陸渾身の歴史SF大作。

感想・レビュー・書評

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  • 226事件を題材としている。そこにタイムパラドックスを
    取り込み、さらにAIDS(エイズ)ならぬHIDS(未来の病気)を織り交ぜているのだが。
    何度でもタイムパラドックスが出来てしまうと、面白みに欠ける。
    私の所感だか、恩田陸節(独特の発散、読者に委ねる)炸裂なのかもしれない。
    NHK歴史ドキュメンタリードラマ(日露戦争~第2次大戦)を見たことがあるので、世間では知られていない事実をうまく表現しても良かった気がする。

    私だったら、歴史を変えるのではなく、歴史上の人物の印象・謎を変えるかな。よく、なぜか、昔の書簡が出てきたり、科学分析で見方が変わることがあるのだから。

  • 正直SFではないなと思う。歴史物、といわれても疑問。
    全体的にぼんやりとしたファンタジーのお話でしたね。そういう作風なのかな。恩田さん初読。

    SFを期待してもっと、細部の設定を作りこんでるのかと思ったら最後まで肩透かしでした。
    「シンデレラの靴」「足」「王子様の手」「ラスト・ダンス」「聖なる暗殺」「HIDS」……で、結局なんだったの?と思うことが多々。
    タイムトラベルにしたってずいぶん都合のいい展開ばかりで、なんだかなーと。
    重大プロジェクトを任されているはずの国連スタッフも、なんか全員ノリが軽くないか、と。
    そんな大事なプロジェクトのくせにほとんどのメンバーが、話の根幹部分を知らなかったり、「好奇心はギフト」とかわけのわからない理屈で茶々を入れられる始末。
    なぜ、「二・二六事件」が選ばれたのか、最終的にどうしたかったのかもいまいち不明瞭。
    歴史物として書くなら、もうちょっと当時の時代背景とか調べてほしかった。なんか伝わってこない。
    登場人物が少なすぎるから、事件の意味もなんだかぼやけてるし。みんながみんな、いい人で終わってしまってたのが残念。

    終盤のネタばらし、というか物語がすべてつながっていく感じはよかった。
    ラストの出会いも、きっとこれがやりたかったんだろうなあ、と思ったし綺麗にまとまってた。
    だからこそ、別に「二・二六事件を題材にした歴史物SF」にしなくても良かったよね?、と思う。


    文章はうまくて、話もさくさく読めるから一気に読んじゃったけど、なんか最後までぼんやりした話だった。
    この人の作品はもっとこてこてのファンタジーを読んだほうがいいのかな。
    他の作品も読んでみたい。

  • 実際の2.26事件を知らなくてもわかります。
    読み出しは少し抵抗感がありましたが、だんだん引き込まれて最後まで一気に読み終わりました。
    面白かったです。

  • 全体として陰鬱な空気。ミステリアスなというのでもなく。舞台が日本で戦争前の起点と言われる二・二六事件が舞台。歴史をやり直せるSF 要素があり。事件を見守る未来の人間側は空気感が違うのだけど、歴史を続ける側の兵士一人一人の気持ちとなると、苦しくなる。
    ただし、どちらも好奇心が行動原理になっている。この歴史を変えたらどうなるか。熱がうくまま進んだらどうなるか。それに伴う結果に思いを馳せる前に動いてしまう好奇心。
    人間の原理はそこなのかもと思わせられた一冊。タイムパラドクスは、ちょっと混乱した。

  • 最初は重くて読むのが大変だったが読み進めるにつれどんどんおもしろくなっていった。

  • タイムパラドックス

     きれいにオチが決まるなぁ。前半は少しだるいけど、後半の加速は心地良い。エピローグの時間遡行発明話もすばらしい。フィラデルフィアみたいな感じだが、厚い本を一気読みだな。

  • 捻れてまた元へ戻っていく。やり直しが出来たとして、私はより良い私になれるだろうか。

  • 歴史に「if」があるならば。

    時間遡行術が発明された世界。
    人類は、起きてしまった悲惨な事件を未然に防ぐために、過去へ遡り、歴史を修正するプロジェクトを実施していた。
    しかし、このプロジェクトは副作用として、人類にHIDSという病をもたらす。
    国連は、このHIDSを食い止めるためにも、更なる歴史修正プロジェクトを続行させていた。

    今回、国連が修正介入点として選んだのは、日本陸軍青年将校が起こしたクーデター、二・二六事件。

    歴史の修正には、「現代」のスタッフだけでなく、
    「当時」の重要人物の協力が必要であるが、
    本件では、のちに首謀者として死刑となる安藤大尉・栗原中尉が選抜される。
    彼らは、こうして「2度目」の二・二六事件を生きることになる。「1度目」の記憶を持ったまま。
    国連スタッフからは、「歴史は自己を修正するので、1度目と同じように生きるように」と言われるが、
    彼ら自分たちが無念・失意の中、処刑されることを知っているため、
    なんとかして、自分たちの目的を果たす方法・散り方を選ぶ方法がないかを考え、実際に行動に移してみる。
    その中で、多少の誤差は許されること、大胆な変化をすると修正が失敗しプロジェクトが一時中断することを学んでいく。
    安藤たちの試みにより、ただでさえ中断続きのプロジェクトなのだが、
    更にメカ不調やハッカー侵入など、トラブルが相次ぐ。
    二・二六事件の修正は無事に終了できるのか。
    そして、この修正により世界は、良くなるのか。

    約10年ぶりの再読ですが、色あせない。やはり面白い。
    タイムトリップものはよくありますが、
    それの題材に二・二六事件を選択したところが秀逸ですよね。
    そして序盤から伏線のオンパレード。(今回は首尾よく回収されます。途中のfragmentもお見逃しなく。)
    構成も巧みで、ディテールも(比較的)しっかりしていて、文章も流麗。
    これぞ、恩田陸!という作品です。大好きだー。

    完全ネタバレですが、
    自分の覚えのために、少し最後の部分を整理すると、

    A 歴史上の再生時間。
    B Aの不一致の時間。スタッフの時間。Aをつまめる。
      ジョンはここから最終兵器マツモトをつまんでいる。
      逆上がりができないよ!→少年時代につまんで、マツモトは自分の逆上がりを補助
      栗原が安藤を撃つ。
      マツモトはピリオドを破壊して、自力でB→Aの世界へ。
      そのタイミングでジョンがAの世界を少しだけ遡行。
      安藤を生き返らせる。

    よくできてる。本当に。

    この本は
    「正しい歴史」「良い未来(現代)」について読者に考えさせます。
    それらは、立場次第で変わる。
    そして、ほんの少しのきっかけで、がらりと変わる。バタフライ・エフェクト。

    考えれば考えるほど、安藤と栗原を選択したのはまちがいでしたね。
    そりゃ、一度失敗したら学びますよ。人間だもの。
    安藤といい、栗原といい、できた人なら尚更。
    いくら安藤を死なせたくなかったとはいえ、
    そのチョイスが最大のミスでしょーと突っ込みたくなる。

    今回もいろいろ心惹かれる小ネタがありました。
    ・日本人は悲劇趣味かつ思いやりのオンパレード
    ・好奇心は理性・知性・タブーなどのすべてを凌駕する
    ・時間遡行術を持った王国が結局は滅びる話。
    などなど。ほかにもいっぱいあった気がする。

    もう一度、二・二六事件について調べてみようと思う。

  • 休日の午後を恩田睦さんの「ねじの回転」を読了して過ごしました。226事件ものと予備知識なしで読んだのですが面白かったです。いわゆるタイム・パラドックスものですね。
    安藤大尉と栗原少尉と石原莞爾大佐が登場…こういう物語でジョーカーのような使い方をされる石原莞爾氏ですが
    作中「本来226事件に関係ないのに未来の意思によって事件に関わらされた」的描き方でしたがあれれ?事件勃発後
    青年将校を一喝したって有名なエピソードがあったよね?
    その辺ちょっと歴史考証的にあやしげなところはあったけど概ね楽しめました。

  • ねじの回転、とはこれまさに。
    恩田陸という作家のらしさがよく出ている、と思った後で、あら恩田さんがらしくない物語なんて書いたことあるかしらと思った。
    史実、歴史上の人物が主要人物として登場するところは珍しいと言えば珍しいけれど。

    1936年2月26日、のちに2・26事件と呼ばれる四日間。兵を率いる安藤と栗原は懐に一つの秘密を抱えていた。
    彼らは二回目の2月26日を生きていた。未来から来た人間たちが手渡した懐中時計の形をした連絡機は、彼らの現実を救うための最後の命綱だった。
    二人の科学者が発見した過去に戻る技術、それを使って世界は過去の最も悲惨な事件をなかった事にした。しかし、ひとつのホロコーストを無くすことで十のホロコーストが生まれることに気づく。それを防ごうとまた過去へ。歴史の改変を繰り返した未来にはある奇病が地球規模で広まった。最初は咳が出始め、寝込み、次の日には老人のような容貌に変わり果て息絶える。これを防ぐには数時毎の薬の摂取が必要となった。しかしこの薬を全人類に行き渡らせる前に人類は死に絶えてしまうだろうと予測されている。そんな行き止まりをどうにか回避するために、国連が立ち上げたプロジェクトがこの歴史を元の通りに再生しなおすことだった。
    過去の再生のために必要なピリオドという役目を任されたのが安藤、栗原、そして軍側の石原だった。彼らはこの後どうなるのかを知りながら破滅の道を歩めと懐中時計を渡されたのだ。
    しかし折角手に入れたこの機会をなんとか活かせないものがと、3人が三様に動き出す。それを監視している国連のプロジェクトチーム内にも思惑は入り乱れて、四日間の再生にあてられたリミットのなかでそれぞれの未来をどうにか掴もうと足掻く。

    最初は事件自体を詳しくは知らず(学校の教科書では確か二行ほどで終わってた気が…)人物たちの動きや、立場がよく分からずなかなか入り込めなかったが、三分の一ほどで持っているはずのない四人目の懐中時計をもつ人間が安藤を襲う場面あたりから先が気になりはじめ、それでも時間が細切れにしか読めない環境が災いして読むのに時間がかかった。ラスト百ページは朝早くに一人起きて一気に読んだ。
    ライオンハートに近い感情になるラストだったと思う。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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