凍りついた瞳 2020 虐待死をゼロにするための6つの考察と3つの物語

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087808711

作品紹介・あらすじ

東京都の目黒区と千葉県の野田市で、相次いで起こった惨い虐待死の事件。「ゆるしてください」とノートに書き綴り、「どうにかなりませんか」と教師に訴えた幼い子どもたちを、なぜ救えなかったのか。2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」が施行され、それから20年経った今でも、虐待死の事件はあとを絶たない。なぜなのか!? 1994年、本書の著者である椎名篤子の「親になるほど難しいことはない」を原作とし、ささやななえにより漫画化された「凍りついた瞳」は、子ども虐待の存在を世に知らしめ、「親が子どもを傷つける、死に至らしめる」という現実が、世間に大きな衝撃を与えた。その後、同シリーズや「『愛されたい』を拒絶される子どもたち」などの作品(いずれも漫画化)で、子ども虐待防止について書き続けてきた著者。本書では、椎名篤子が最新の子ども虐待防止の現場に取材して執筆した3つの物語と、子ども虐待防止の最前線で闘う学者と医師達による、「子ども虐待死」を防ぐための提言を掲載する。

内容
第1章「救えなかった命」
虐待死を防ぐため、医療の現場では何が行われているか…!? 虐待死を見抜けなかった小児科医が、「予期できる死を防ぐ」ためのシステムを作ろうと奔走する物語と、立正大学副学長の大竹智先生、総合病院国保旭中央病院の仙田昌義先生、名古屋大学医学部附属病院の沼口敦先生による、「虐待死とは何か? 虐待死を防ぐため、医療関係者は何に取り組んでいるのか?」を掲載。

第2章「命を守るそれぞれの役割」
虐待を防ぐためには、妊娠期からの家族支援が大切…保健師として多くの家族を見守ってきた、武蔵野大学大学院教授の中板育美先生、病院内の虐待防止チームを率いる、松戸市立総合医療センターの小橋孝介先生が伝える、「母と子を支える虐待防止」の大切さ。物語では、市の相談窓口にSOSを寄せた若い母親を支えるための、保健師と、医療チームの連携を描く。

第3章「死を乗り越えた子どもたちを支えるために」
自立援助ホームでの仕事を離れた佐々生のもとに、ホームを卒業していたソラから「寮を出されて行くところがない」と連絡が。ソラに「家」を! 虐待を生き延びた子どもたちの居場所を作ろうと、心を尽くす女性たちの物語を掲載。児童精神科医として、多くの子どもたちの苦しみと向き合ってきた田中哲先生が、「子どもの心の育ち」について執筆。

日々繰り返される惨い事件の報道に憤るだけではなく、虐待と虐待死の現状を知り、虐待防止に取り組む人たちの思いと闘いに目を向け、「自分に何かできることはないのか?」を問うための1冊。

著者プロフィール
作家、フリー・ジャーナリスト。1993年、子ども虐待を医療側からレポートした『親になるほど難しいことはない』を刊行。1994年、同書を、ささやななえ氏が漫画化した「凍りついた瞳」が女性漫画誌「YOU」に連載され大きな反響を呼び、同書は児童虐待防止法の立法に際し、大きな力となる。

感想・レビュー・書評

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  • 虐待対応の『現在(2020)』を書いてある。
    現在の状況を数値化したり、家族を取り巻く環境の変化や虐待対応の変化について淡々と書かれてある。

    眠くなるような話が続く中で、眠る前に『物語』が差し込まれている感じ。

    眠くなる理由は一つ、専門的な話が続くからだ。イマイチ、自分の身近に引き付けて読むという事が出来ない。
    医療関係の話が多めなので、医療系に関わる人には役立つのかなと思う。



    読んだので振り返ってみる。



    第1章 救えなかった命。
    虐待死のあれこれと、病院での取り組みが書かれている。
    基礎知識として、虐待の発生要因や虐待の定義などが最初にあるので、なるほどーと読める。けれど、数値が細かくてちょっと混乱してしまう。集中力の問題か?

    発生要因
    1.親自身の要因
    2.家庭の状況
    3.社会からの孤立
    4.子ども自身の要因
    5.親とその子どもとの関係

    ……こうやって、羅列してあると分かりやすい。虐待は『親』だけの問題ではないという事が判る。複合要因で複雑。



    第二章 命を守る それぞれの役割。
    母子支援のあれこれが書かれている。

    英語圏では「チャイルドファースト」の視点から「子どもに対する大人の持つ力の乱用(child abuse)」という表現に変わっているらしい。
    分かりやすくていいなと思った。

    成人の日によく「大人になる=責任感を持つ人間」みたいなのを見かけるケド、その『責任感』って何なのよ?と思ってた。
    「自分が手にしている力(身体的・精神的・社会的立場)を乱用しない」という事。
    大人は大人と言うだけで、子供より力がある立場にいる。



    第三章 死を乗り越えた 子どもたちを支えるために。
    虐待を生き延びた子どもたちが感じる「生きにくさ」について書かれている。
    「自分はどこか皆と違う」という傷を刻んだまま、成長する樹に例えて解説が進む。
    それは『誰もが持ち得るモノ』ではないのかなと思いながら読んでしまった。読めば読むど、自分の中に入っていくようで気持ち悪い。



    そんなわけで、虐待された人達は生きる事に困難さを持っている。



    物語は読みごたえがあって楽しかった。
    虐待の複雑さ。その後の生きにくさ、『虐待の連鎖』と言われるけれども、それが絶対なものとも言えない。
    大ざっぱな感じは漫画で読んだものと、同じかなと思ったけど、病院での取り組みや、母子支援、生き延びた子たちの支援。
    さらに女性に育児を押し付ける事で、男性は『育て直し』の機会を失っているというのもあった。

    虐待について、基本知識を得るにはたぶん読みやすい…のかな。
    ……でも、細かい数値は……私、苦手だわ。

  • 医療機関で、救えた可能性があったのに、うまく支援に乗れなかったケース、とても歯痒い。もっとうまく連携できて、みんなで支える形を構築できないものか、、

  • 児童虐待、重いテーマだ。
    自分が育ちきっていない母親、望まない妊娠と出産等々で育児に向き合えない母親。その上、周りからの援助もなく孤立した育児。
    昔は周りにお節介な人達がいっぱいいて、助け合って子育てが出来た、とよく聞くがはたしてそうだろうか、とも思う。
    地域社会の人間関係が希薄になってきていることは確かかもしれない。
    だからこそこの本に出てくるような専門性を持った人達の組織が機能してくれればと思う。

    子どもも大人も生きづらい世の中なんだなあ、と改めて思った。

  • 東2法経図・6F開架:367.6A/Sh32k//K

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著者プロフィール

作家・ジャーナリスト。
主な著書に、『凍りついた瞳2020』(編著、集英社、2019)、『がれきの中の天使たち』(集英社、2012)、『愛されたいを拒絶される子どもたち』(集英社、2007)、『新凍りついた瞳』(集英社、2003)、『親になるほど難しいことはない』(集英社文庫、2000;講談社、1993)、『虐待で傷ついたこころのための本』(大和書房、1998)、『ちいさなわたしをだきしめて』(集英社、1998)、『家族「外」家族』(集英社、1997)、また、著書を原作とした漫画化作品に『愛ときずな』(絵:ごとう和、秋田書店、2010)、『凍りついた瞳』(絵:ささやななえ、集英社、1995)など多数。

「2019年 『イギリスの子ども虐待防止とセーフガーディング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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