ヴィジランテ 11 ―僕のヒーローアカデミアILLEGALS― (ジャンプコミックス)
- 集英社 (2021年1月4日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784088824840
作品紹介・あらすじ
ポップが撃たれた! 色々と聞きたいこともあるけど、とにかく今は彼女の手当てが先決。そんな俺の前に現れたのは「オクロックII」を名乗るヒーローで、ポップのことをなんだか知ってるみたいなんだけど…。
感想・レビュー・書評
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暴走したポップは何者かに撃たれて落下していく!どうにか彼女を抱きとめたコーイチだったが、目の前に謎のヒーローが立ち塞がる。さらに、オクロックの過去も明らかに。
ついにあの男がコーイチの目の前に立ち塞がる!奴は“オクロックⅡ”と名乗った。ヴィランの濡れ衣をコーイチに着せ、自分はポップを助けられなかった(というテイで口封じ)悲劇のヒーローとしてデビューするというおぞましい計画!何者でもなかった実験体がヒーローになる夢を叶えるため、他のすべてを踏み台にしようとする。これまでどれほどの犠牲者を出してきたのかと思うとゾッとする。
その一方で、コーイチはポップの命を救うために、己の脚で空へ飛び上がる!自分のために誰も踏み台にしない。踏み台にするのは己の魂だ。エンデヴァーを目の前にしたコーイチとオクロックⅡの対応がまさに明暗を分けたのが皮肉。利他的か利己的か。ヒーローは力や外見ではない。生き方そのものなのだ。ここでオクロックⅡがコーイチへ「俺はおまえみたいな人の夢を踏みにじる奴が許せない」と言い放つのが印象深い。夢を見るだけなら、善悪も人間性も関係はない。だが、その夢が自分たちの命を脅かすものなら、コーイチは命を懸けて立ち向かわなくてはならない。悪意に鈍感だったコーイチが初めて向けられた殺意。彼はこれからどう動くのか?!
後半は師匠がオクロック時代の事件が語られる。地下で開かれる仮面武闘会に潜入調査へ向かうオクロックを出迎えたのは、本編でも登場するあのキャラたち!オクロック師匠がクールでカッコよすぎる。師匠だけ『黄泉のツガイ』感がすごい(笑) 合理的かつ容赦ない雰囲気がいいね。ここで登場したフードが6号なのかな?武闘会の裏にいたあのヴィラン!結末は知っているけれど、そこへどう至るのか気になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
物語の序盤から暗躍した狡獪なヴィランである6号の去り際の呪詛を、初読時は軽く流していた。無辜の少女を苦しめ利用し、命までもを浮薄に玩ぶ存在が何を一端に夢だの願いだののたまえたものだと呆れ果てる思いだった。当人は以上で悲惨な境遇から抜け出すため必死で懸命だったのだということも、理解し切ったつもりでいてなおそう思った。ありふれた逆恨みに過ぎないと。
だが再読時、自分の読みは浅はかだったと気づいた。6号は、あのとき自分の野心を妨害した者であれば誰であれ呪ったというわけではない。それが(たとえばソーガではなく)ほかならぬ「コーイチ」だったからこそ、あれほどまで怒り猛ったのだ。徹頭徹尾6号に一切の興味関心を抱かない、敵と認定して排除するという職業ヒーロー的な思考も働かない、ポップのことが優先……ゆえに6号のことなど「どうでもいい」善性に溢れ前途もある「幸福な一般人」が「そうと知らぬ間に」6号の計画をズタボロにしたということが、あの激怒の源なのだ。夢の潰え方にも種類があり、その中には深刻な憤怒を呼び覚ますものもあるということなのだろう。
夢を持ちゼロから計画を立てるのはいつも悪の組織の方で、ヒーローはただそれを邪魔するだけ、という揶揄がある。人の夢を(その心や命ごと)踏みにじってきたのは6号の方なのは間違いないが「人の夢を折る」とはどういうことなのかについて、もう少し認識を深めたい。