タコピーの原罪 下 (ジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
3.98
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本棚登録 : 2231
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088831046

作品紹介・あらすじ

まりなの遺体が見つかってしまった。警察から事情を聞かれても夏休みの計画に余念がないしずかに対し、東は何とか上手く切り抜けようとする。そして夏休み、しずかはタコピーと二人だけで東京に向かうが…!? 衝撃の小学生ドラマ、完結!!

感想・レビュー・書評

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  • ぼくは常々思っているんだけど、ドラえもんの物語は、既に世界を構成する前提条件みたいになっているって。タイムマシンや様々なSFグッズが物語に登場するのは特別なことじゃないんだって。もうそれだけじゃ(子どもの)世界は「解決しない」んだって、今の世代はもう知っている。何百回とリセットやり直しても、不幸はやってくるって、この世代はもう知ってる。

    ぼくは奇跡的にドラえもんの洗礼から外れているんですよ。あのアニメが始まったちょうどその時に、ぼくは初めてテレビのない四畳半の暮らしを始めたばかりだった。世の中がザワザワして、大晦日に特番を始めても、ぼくはそれを見ることなかった。

    ぼくは常々思うんだけど、今の世代は、どうしてそんな物語を繰り返し繰り返し作るんだろう。どうして異世界転生物語も繰り返し繰り返し作るんだろ。そんなに苦しいんだろうか?苦しいんだろうな。

    しずかちゃんは物語冒頭で自殺してしまうほどのイジメに遭っている。イジメ主謀者のまりなちゃんも、親の虐待に遭っている。彼らを助けようとする東くんも、親の期待と、友だちの期待に振り回されて殺人に手を貸してしまう。

    ぼくは「タコピー」のように、まるきりわかってあげられない。だからこそ、こんな物語が「このマンガがすごいオトコ編」の第三位を取ったことに感動している。しずかちゃんも、まりなちゃんも、東くんも、実は知っていた。ドラえもん以前と世界が大きく変わっても、これだけは変わっていないってことを。

    「おはなしが、ハッピーをうむんだッピ。」

    そう言えば、
    ぼくは思い出していた。
    大事なきみたちのこと。
    ありん と かりん
    手の指をVにしてひっくり返して足にしたら出来上がり
    両手があるから2人いる超人たち
    正義と悪、永遠のライバル、永遠の戦いを続ける
    だから、ぼくはずっとひとりじゃなかった。
    しずかちゃんにも、まりなちゃんにも、
    ハッピーが見えたんだね。

    • 松子さん
      くまさん、こんばんは(^^)
      タコピーの漫画、娘がずっと読みたがっていて買おうかどうしようか迷っていた漫画でした。
      くまさんの☆4つなら間違...
      くまさん、こんばんは(^^)
      タコピーの漫画、娘がずっと読みたがっていて買おうかどうしようか迷っていた漫画でした。
      くまさんの☆4つなら間違いなしですね。

      そして、今更ですが
      ブクログの受賞おめでとうございます!
      知らなかったー!
      何だか嬉しくなってコメントしちゃいました!
      改めて、おめでとうございます(^^)
      2023/02/07
    • kuma0504さん
      松子さん、こんばんは。
      私の★4は、ものすごく幅が広いんだけど、これは★4上です。特に若い人におすすめです♪

      受賞へのお祝いのコメントあり...
      松子さん、こんばんは。
      私の★4は、ものすごく幅が広いんだけど、これは★4上です。特に若い人におすすめです♪

      受賞へのお祝いのコメントありがとうございます。
      心境としては、一休さんではないですが「めでたくもあり、めでたくもなし」という感じです。
      受賞の基準が結局わからないんですよね。
      私なんか、松子さんがルーキー賞取らないのはなぜなんだ!と思うのですが‥‥。
      それとはまた別で、受賞の記念品送る手続きのメールで、一言「Best本を選んで理由書け」というのを送ってきていて、
      長々と小言を書いて送り返しました。
      (ここでは公表しません)
      そんなこんなで、
      お祝いコメントありがとうございます(^_^;)。
      こんな天邪鬼な私ですが、これからも宜しくお願いします。
      2023/02/07
  • 好きな人を幸せにするってどういうことなんだろう。
    好きな人の幸せはタコピーの幸せ。
    けれど、好きな人の幸せは他の誰かの不幸せだった場合。
    他の誰かの不幸せはタコピーの幸せ?
    それとも不幸せ?

    幸せの不均等。
    不幸せの連鎖。
    ぐるぐる考え出すと生きているのが恐ろしくなる。
    こんな世界でどうやって生きていけばいいのか。

    タコピーの出した答えはシンプル。
    馬鹿で純粋なタコピーらしくて泣きたくなる。

    インパクト大の表紙に負けない心揺さぶる衝撃作。

    上下まとめての感想です。

  • 3人の子供達の未来がちょっぴり明るくなったのなら、タコピーの秘密道具は意味をなしたのかな。
    世界中の子供達の未来にもタコピーが光を与えて欲しい。

  • 話題になってるから読んでみたけど、残酷。
    上下巻ではなくて、もっと細かく丁寧に書かれてたらまたイメージ違ったかもだけど、展開早すぎてか、人の死を軽んじてる様に思えてしまった。
    主人公の性格がころころ変わるのもなんか違和感。

  • 回を追う毎に高まりゆく不協和音、これでもかと振り下ろされる親からの痛打、そして幕が降りる「おはなし」。
    夜空の表現が好き。

    上下巻合わせて16話と短い尺であるが信じがたい程に濃密。
    そしてなかなかどうして一筋縄ではいかない筋書き。最終話〈2016年のきみたちへ〉をどう読むか・受け取るかがとにかく肝だと思う。

    タコピーの役割は「宇宙にハッピーを広めるため」であり、その対象は作中キャラばかりではなく読者も含められているのではないだろうか?
    少なくともラストシーンまで読んだら多かれ少なかれ誰もが「ハッピー」を受け取るのではないだろうか。しずかちゃんの爪綺麗。

    また、p196でのしずかの目線が完全に’こちら’を向いている。つまり呼び掛けたタコピーの役割は’読者’が担っており、’タコピー=読者’がここまでページを運んできたからしずか・まりな・直樹の元へハッピーが届いたのだ!「わったっし〜はサザエさん、あなたもサザエさん〜♪」的な思考法ですね。
    …という解釈に私は落ち着きました。

    少なくとも〈おまけ5〉の絵はハッピーに満ち満ち溢れているように感じられた。それは’読者=タコピー’がそこまでページを運んだから届いた、という受け取り方もアリかな、と。

    これはリアルタイムで追っていたら超楽しかったでしょうね。

    色んな感想がありそうな漫画ですが、私は良かったと思います。



    1刷
    2022.4.11

  • 感想書こうかどうしようか悩んでたんだけどやっぱり書く。
    連載中にアプリで読んでいてめちゃくちゃ好きで、とうとう書店で購入して読み返したのです。
    カバー裏めちゃかわ。表紙が印象的なのはもちろん、背表紙も個人的に良き。この塗り好きなんだよなあ。本文カラーだったとこまたカラーで見たかったなあ、見たくなったらアプリに飛ぼう。

    何書いてもネタバレになるかなぁ、誰にとってどこがネタバレになるかわからないからなぁ、と思うくらいには、予備知識なくぜひ読んでほしい。と勧めたい。
    好みが分かれるのは承知の上で、、

    上下巻と短く間延びなくぎっちり凝縮された作品で、それだけに余計胸を打つのだと思う。
    これがたとえば5巻分くらいの長さになってしまっていたら、余韻が薄れていたかもしれない。
    全16話は本作にはベストな長さだ。
    伏線やさりげない描写にしっかりと登場人物の人格や生活が反映されていて、読むたびに発見がある。
    メッセージ性も一貫してある。
    そのメッセージ性についてなど感想を何行か下に書くが……ネタバレになるので、よかったら読了後に気が向いたら見てほしい。
    アニメ化してくれないかなあ〜〜アニメで見たいな〜〜







    <以下ネタバレ含む感想>
    タコピーは口ではおはなしが大切と言いつつ、なかなか実行できなかった。高校生のまりなが母親を殺してしまったときも、まったくまりなの話を聞かずにハッピー星に帰り、まりなを1人にしてしまった。
    でもタコピーはそんな自分を省みて、もう誰も寄り添ってくれる人がいないしずかちゃんを1人にせずに、ずっと寄り添い続ける。
    大切なのはおはなしをすること・寄りそうこと…つまり相手にも自分にもちゃんと向き合うこと。
    作中では、しずかちゃんにも、まりなちゃんにも、真剣に向き合ってくれる人はいなかった。
    彼女らに寄り添ってくれる人は誰もいなかった。

    ハッピー星と地球じゃ文化が違いすぎて、タコピーは的外れな解釈をし続けた。そんなタコピーが鬱陶しいと感じる人も多いだろう。
    けれど、実際、たくさんの人たちは(私ももれなく)タコピーほど極端ではなくとも、悪意や善意や無意識で、相手を理解できず(しようとせず)に、相手にとってすごく無理解なことをしたり言ったりしてしまうのは日常茶飯事で。そういう意味ではタコピーのような人は地球人にもたくさんいるよね、と思う。

    相手と向き合って、おはなしをしたり寄り添ったりすることは、とても、大変難しい。
    最後にはタコピーはそれを成し遂げるのだが…
    タコピーが自己犠牲を賭してなお、しずかちゃんとまりなちゃんのおうちの惨状が変わるわけではない。そのあたり、やっぱり絶望的じゃないかと悲しくなったりやるせなくなったりする部分はある。
    それでも、タコピーをかすがいにして、2人は完全な孤独ではなくなった。
    高校生になったしずかちゃんはきっとチャッピーが天寿を全うしても受け入れられるだろうし、まりなちゃんは根本的な考え方はなかなか数年じゃ変わらないが、自分を傷つけてくる母親に心から依存する必要がなくなった。
    (ラストで彼女らが互いの家について軽口を言い合える仲になっていたのは、ある種救いに感じた)
    そして、ここまで名前を出さなかったけれど、東くん…直樹くんも兄と腹を割って話すことで、母親に認められたくてできない勉強(十分できてると思うんやが…)ばかりして自分を追い詰めることなく友だちを作ることができ、しずかちゃんに依存する必要がなくなった。

    …彼は作中で「(しずかちゃんを)助けて"あげよう"なんてのが間違いだったんだ」と省みる。自分の承認欲求のためにしずかちゃんと一緒にいたことに気づけたのだ。小学生にしてその自省はすごいよ直樹くん。…

    ほんのひとつかふたつ、安心して存在していられる場所があるだけで、自分を見てくれていると感じられる場所があるだけで、心に余裕が生まれる。
    少しの余裕が生まれたおかげで、彼女らはきっと大人になることが、生き延びることができるだろう。
    もちろん、大人になったその先は彼女ら次第なのだが…彼女らが互いに心を許せる、互いに寄り添え合える存在に出会えたら…
    逆にいえば、誰も自分を人として尊重してくれない、寄り添ってくれない世界では、人は絶望してしまって生きていけない。
    誰もが自分のことで手一杯になってしまうこの世の中、タコピーほど献身的でなくとも、ほんの少し関わりほんの少し寄りそうことで、生き延びることができたり、追い詰められていた心をほぐされたり、変わることができる人は多いのではないだろうか。
    とても難しいけれど、ハッピー道具がなくても、できることなのだ。

    (今思ったけど、タコピーってポンコツなドラえもんって感じがするな。動機は違えど、ドラえもんものび太に寄り添って居場所になってるんだもんな。)

    そういえば、タコピーがハッピー星を追放された理由ってなんだったんでしょうね、1人で戻ってきたからって…?それだけがわかってなくて気になる。

  • まりなの遺体が発見されてしまい、警察から事情を聞かれるしずかたち。夏休みに東京へ向かう計画のため、東を頼って切り抜けようとするが──。東京での父との再会、そして物語の意外な発端が明らかになっていく。衝撃の小学生ヒューマンドラマ完結!

    話題になっていたので読んでみたら一気に引き込まれ、毎週の楽しみになっていたタコピー。どの回でも感情をぐちゃぐちゃにかき乱してくるのがすごかった。傷よりも痛みが伝わる表情の描き分け、現実と理想を重ね合わせる構図、絶望感で圧倒される見開きの描き込み。そこに放り込まれた無垢なタコピーが純粋にも葛藤していく姿が、癒しと苦しみを一緒にお届けしてくれる。シリアスにタコピーを放り込んだという仕掛けが画期的で、ぼくみたいに重い作品が苦手な人でも読みやすかった理由なのかなと感じた。

    毒親と機能不全家族の中で育ち、小学生にして様々な苦しみを引き受けているしずかたち。最近読んだスーザン・フォワード『毒になる親』でも、「とかく人間は、ネガティブな感情を本来向けなければならない対象からそらせ、より容易なターゲットに向けてしまいやすい」とある。親に反抗できず、子世代でその罪と罰を引き受けてしまっているのはまさにこれだなと。

    東の「助けてあげようなんて思うのが違ったんだ」という言葉が好き。親から期待をかけられなくなった東が、しずかからかけられた毒のような期待の甘さの描き方はゾッとした。これはタコピーもそうで、ハッピーを押しつけてはダメなんだよね。おはなしをして、二人で何がハッピーなのかを探すことがきっと掟だったんだなと。結局、親も環境も何も変わらないけど、おはなしが子世代を繋いでいくささやかな希望になる。最後はタコピーがただただ切なくて泣けてきた。みんなが大人になれますように。

  • 息子に勧められて読む。
    幼い?善意が予想外の結末を呼び起こす。
    相手のことを知れば解決できる、、、
    そんなに人生甘くない。
    複雑な心は小学生だって中学生だって深くて、そこに家族が絡むからやりきれない。
    私は、子どもたちの人生に呪いをかけてないか、不安になった。

  • 賛否両論ある終わり方だと思うけど私は好きでした。インタビューで作者さんが「現実世界の問題は、誰か1人が悪者だと決めつけることができないものが多いと思っていて」と答えていてそれが形になったようなお話だなと思った。生きている以上、誰しもが罪を犯す可能性を秘めていて原罪を抱えている。それをわかったうえで「おはなし」して生きていく。しずかちゃんとまりなちゃんがおはなしできるようになってよかった。

  • 何も救えないもどかしさとタコピーの純粋さが心にきました。
    おはなしが大事、という人によっては陳腐なテーマかもしれません。
    最初からそれが出来なくて苦しんでいた登場人物達が最後に一緒に寄り添っている姿に、これから世界が少しずつだけど良くなっていくのかなというほのかな希望を感じました。

    というわけで最終回が特に好きです。

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