- Amazon.co.jp ・マンガ (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784088900728
作品紹介・あらすじ
親に捨てられ、借金返済のために「へんたいのおじさん」に売られた11歳の少年・ジャン。女装しておとなのお店で働く生活に嫌気が差す中、ジャンは街で同い年の少年・ポールと出会う。一緒にいる時間を居心地良く感じる一方で、純粋なポールと過ごすことが後ろめたくなったジャンは…!? 表題作「アマリリス」ほか福島鉄平が青年誌で発表した5作品と描き下ろし漫画「アマリリス【epilogue】」を収録した短編集。
【収録作品】イーサン飯店の兄弟は今日も仲良し/ハルよ来い/ルチア・オンゾーネ、待つ/私と小百合/アマリリス【epilogue】
感想・レビュー・書評
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ジャンプに『サムライうさぎ』を連載してた福島鉄平が、「へんたいのおじさんに売られてしまった」り、孤児院を出て「せいどれい」になることに脅えたりする主人公を描くとは思わなかったけど、よく考えたら『サムライうさぎ』だって14歳で結婚させられる話だ。BLも百合も女装子も、っていうバラエティに富んだ短編集だけども、おおまかに言ってテーマはいつも「大人になってゆくこと」であり、そしてときどき(『サムライうさぎ』も例外ではなく)強制される「性」がそのターニングポイントになっている。
あと「私と小百合」で弓道の掛け声「よしっ!!」がポイントになってますが、『サムライうさぎ』連載前に「よしっ!!」っていう読切描いてます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者の他作品については未読。本屋で見かけて気になり入手。なんとなく、あぶない香りのする表紙絵が印象に残っていたからだ。それぞれの作品のキャラクターの持つ特性が、それだけでも面白かったので色々な人間の魅力に触れてきた人なのだな、と思わせられる。良くも悪くも、魅力的。誰もが幼い時、当たり前に受ける制圧に、進行形でおかされている少年少女たちの思考や行動が酸っぱい。メリハリのある線が少年少女たちを表現するのにマッチしていた。いつでも消えてしまいそうな幼く繊細な線と、誇張しているくらい元気な太い線とがその登場人物たちの心をも表しているように思えた。絵柄は最初、題材に対してポップすぎるかな?とも思ったけれど小百合ちゃんが可愛すぎたし、物語に合わせてうまく描き分けてあるのだと理解した。
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ショタ好き、BL好きの話題にのぼった表題作、アマリリス。誰もが掲載時の終わりかたにもやもやしただろうなぁと。それもこれも、書き下ろしで胸を撫で下ろせるかと…。私はこのオマケすごく、好きです。私と小百合もだけど、この終わりかたに福島さんの描きたいことが凝縮されてるんじゃないかな?
こんだけ誉めといてなんですが、個人的にはハルよ来いと、ルチア・オンゾーネ、待つが最高に好きです。濃い。とりあえず濃い短編集です! -
最初のタイトルの話が1番面白い。ダークなので…
残りもダークな話かと思いきやハッピーエンドなので、ちょっと一話目を引きずって読むと期待外れ感がある。 -
青年誌掲載の読み切りを収録した短編集。表題作「アマリリス」は借金のカタに女装パブに売られた少年・ジャンの物語。
勉強もできスポーツも得意、明るく母親想いのいい子だったジャンが汚い大人の世界を知って堕ちていく姿が痛くていじらしく愛おしい。
女装、ショタ、百合、BL、同性愛などやや倒錯的な要素を含む刺激的な題材を扱っているが、むしろ見所は思春期の少年少女のナイーブかつデリケートな変化を詩情に乗せてすくいあげる、リリカルで繊細な心理描写。
汚れた自分がそばにいたら友人までも汚してしまうと怯えるジャン、「きれいはきたない、きたないはきれい」の格言さながら彼を取り巻く環境が荒み翳りを帯びる程にひたむきにポールを想い自ら汚れ役を演じ身を引こうとするイノセンスが光る。
本作には大人びてシニカルな眼差しと斜に構えたシビアな態度のキャラも多く登場するが、そんな彼や彼女がふとした時に見せる背伸びした虚勢が剥がれた素顔の脆さと弱さ、無垢さや純粋さには心打たれる。
貴族の令嬢としてわがまま一杯に育ったルチアの人を見下し小馬鹿にする嘲笑、卑屈に媚びた醜い笑顔、洟水や涙をどばどば垂れ流す泣き顔といい、やや誇張された表現ながら多感に移ろい動く感情がストレートに伝わってきてぎゅっと胸を掴まれる。
ジェンダーを跨いだ描写が多いのは、成熟した男と女になる前、未だ男でも女でもない「子供」という未分化の性から羽化する通過儀礼と解釈。とはいえセクシャルな行為もキスどまりなので、その手の作品に免疫がなくてもさほど抵抗は感じない。
登場人物がいずれも弱さや歪み、劣等感を抱えているのも特徴。
全編通して共同体から迫害され忌避され孤立し、疎外感を味わってる子供たちのささやかで甘やかな共依存(「この美しく残酷な世界で二人」)と、その自立を描く物語と思った。
それを踏まえて単行本の描き下ろしを読むとポールとジャンの関係性が昇華され、なお一層感慨深い。
コーヒーを飲み干した後に溶け残る砂糖のようなほろ苦い余韻が素敵だった。 -
これはヒドイ。
"へんたいのおじさんは ホントウにへんたいで"
主人公も、見ている私も、「思っていたより状況は深刻だった」とジワジワ思い知る。絵の表情は溌剌としているだけにショックは大きく、お祈りのシーンでは絶叫。 -
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