- Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091437037
感想・レビュー・書評
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合言葉は「まぁゴルシだし……」、それで許して愛して笑い合おう!
2020年代のスターダムを突っ走るメディアミックス・プロジェクト『ウマ娘』のスピンオフコミックのひとつです。『ウマ娘』を冠するコンテンツとしては本丸のアプリゲーム「プリティーダービー」を筆頭にアニメ、漫画問わず多種多様にリリースされてますが、これはその中でもギャグに振り切った作品になります。
主役に据えたキャラがキャラなのでこの上なくカッ飛んでますが、これもまた数多あるうちのひとつ。
シリアス、コミカル問わず個々の作風は幅広いので、あり得た可能性のひとつでなら大いにアリでしょう。
そんなわけで、我々の世界における競走馬のソウルを宿すと言い伝えられる神秘の種族「ウマ娘」のひとりから。王道と呼ぶにはあまりにも癖が強すぎるけど、愛されっぷりと破天荒さでは随一な「ゴールドシップ(通称:ゴルシ)」を主役に選び、彼女のカオスの権化っぷりを大いに楽しむコミックということになります。
ギャグを事細かに解説するのは野暮なので詳細は語りませんが、とにかくノンストップっぷりがヤバいです。
ギャグは個人の感性によって刺さり方が違うので一概には言えませんが、少なくとも私には刺さりました。
息つく暇なくギャグにギャグを重ねて一話一話を形作っていきますし、虚の付き方もウマい。だんだん読者の笑いのボルテージを上げてくるので、個々のネタじゃなくて流れを読むべき漫画なのでしょうね。
それでいて、どれだけ縦横無尽にゴルシが暴れようとも、読者の視線が迷うことがないコマの流れもナイス!
作者の「柴田直樹」先生は新人ながらに、相当な腕前であると断じることができます。
なお「ウマ娘」のジャンルは、アスリート兼アイドルが切磋琢磨するスポコンの文脈に乗るのが主流です。
ゆえにメインキャラの年代は中学生~大学生くらいのイメージなんですが、今回は幼稚園児なんですよね。
舞台を幼稚園にしたのはコロコロブランドなのはもちろんのこと、園児のやることならどんだけ破天荒でもオッケー! ってムーブを増幅させるためなんでしょう。同時に、無駄にスケールの大きいネタをぶち込んでもまぁアリだなあ……って思わせる一助も担っているのかもしれません。断言はできませんが。
とは言え、本作はどちらかと言えばアプリやアニメで「ゴルシ」のハチャメチャっぷりを見知っている方向けの漫画であり、初見の人にはあんまり向かないと思います。予備知識なくても話は通るんですけどね。
「“あの”ゴールドシップのやることならすべて許せる」と思える方以外には少しハードルが高くなるかもしれません。もっとも、その辺はほかの方の感想を積み重ねてみないとわからないんでしょうけれど。
ただ、ゴルシの持ちうるポテンシャルを最大限に引き出しているのは事実なので個人的にはオール満点です。
ゴルシはギャグ漫画の到達点のひとつである『ボボボーボボ・ボーボボ』に喩えられるのも納得なキャラで、実際にゴルシの挙動を目撃した暁には、両作品を知る万人のことをうなづかせると聞き及んでいますから。
というか、アプリゲームでゴルシが魅せてくれたカオスギャグのノリをそっくりそのまま漫画に落とし込んでくれています。そのためウマ娘ファンのひとりである私としても大満足の出来だったと申し上げておきます。
ゲームで披露された豆知識などもしっかりネタに活かされているので(「雑学クイズが得意」、執拗なまでの数字語呂合わせ「564(ゴルシ)」推しなど)、ファンなら間違いなく買いかと。
と。話を戻して作画面にもう少し触れてみると、幼児ということで等身を落としながらもしっかり元となったキャラクターのシルエットを崩さず、破綻なく動かすバランス感覚もお見事でした。
デフォルメキャラって下手なリアルより難しいんですよね。私が言うことではないかもしれませんが。
ただ一応補足しておくと、擬人化された「ウマ娘」としての「ゴールドシップ」にとってのバックボーンを占める現実世界の競走馬「ゴールドシップ」号のリアルなエピソードの盛り込みは現状行われていません。
この辺についてはもっとも一巻時点で何から何まで盛り込むことは現状では求められていないのも確かでしょう。それに児童向けってことになってる漫画でそこまで問うのは無理筋ってヤツなのかもしれません。
ですが、一応指摘しておきます。
もちろん今後の展開次第ですが、現状では良くも悪くも割り切りが必要なのかもしれません。
他方で一巻時点からゴルシのマブダチ「メジロマックイーン」がさっそく登場したりもします。彼女とゴルシの絡みも背景を知ればより刺さるので、今後の掘り下げに期待! と(保険ついで)申し上げてみますね。
それと二巻以降もゴルシと絡みがあるウマ娘を投入していく(予告では「ナカヤマフェスタ」)ようなので、早々ネタ切れはないでしょう。
というか、盛り込めるネタが多すぎるので本作についてはどう話を組み立てるかが難しそうですね。
ここはひとつ、その辺のハラハラ感も込みで続刊に私は期待してみることにします。
舞台である幼稚園の先生以下オリキャラが割りを食ってしまうのは避けられないかもしれませんが、その辺のバランスも込みで読者諸氏は作品がどう転ぶか(いや、「立ち上がるか?」)を楽しむが吉かと存じます。詳細をみるコメント0件をすべて表示