日本短編漫画傑作集 (3)

  • 小学館
4.22
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本棚登録 : 42
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091793522

作品紹介・あらすじ

珠玉の短編で綴る日本漫画の表現の歴史!

選者にいしかわじゅん、江口寿史、呉智英、中野晴行、村上知彦、山上たつひこ(五十音順)の6氏を迎え、日本の漫画を彩った幾多の短編の中より選び抜いたアンソロジーを編年体でお送りします。第三巻は百花繚乱の70年代をセレクト!かわぐちかいじ、松本零士、ジョージ秋山、上村一夫、実力者達の知る人ぞ知る短編を収録!

【編集担当からのおすすめ情報】
いしかわじゅん、江口寿史、呉智英、中野晴行、村上知彦、山上たつひこが選んだ珠玉のアンソロジー。一筋縄ではいかない選者達がこれでもかと選んだ短編達。他ではなかなか見られない異本の漫画の多様性をお楽しみください。など

感想・レビュー・書評

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  • 手塚治虫以後の漫画の爆発期後半、手塚治虫的なものが飽和状態となり、徐々にそこから離れていく段階のもの。明るく健康的なトーンから、内省的・破滅的なものへと向かっていく時代のもの。

    自分は暗いテイストを好むので、この巻に収められている作品は好みのものが多かった。
    (過去に行くと明るかったり教訓じみているし、最近のものは私には暗がりへの踏み込みはあまりないように感じており…。)

    特に面白かったのは以下。

    「ススムちゃん大ショック」永井豪
    楳図かずおの漂流教室を思い出した。
    大人が子供を急に殺し始める。
    生き残った子供らは「本能というあやふやな糸が親子を繋ぎ止め、子を大切に育てていたがその糸がプツリと切れてしまったのではないか」と考察する。
    が、ススムは自分の母親を信じたいと危険を冒して帰宅する。母親は虫やネズミのようにススムちゃんを殺した。親子関係についてふと考えてしまう引力があった。

    「地獄」辰巳ヨシヒロ
    原爆が落とされた直後の広島の街、主人公の写真家は母親を息子が肩揉みをしている影が焼き写った壁を撮影した。その写真は有名になった。写真家は人の死で金を稼ぐことに後ろめたさを感じつつも、世の中に注目されて有頂天になっていた。そんな中で死んだはずの(写真に収めた肩を叩く影となった)息子が現れ、あれは自分の友人に母殺しを頼んだために友人が母親の首を絞めている場面だと伝え、金品をゆする。写真家は人気のない川のほとりに息子を呼び出し、殺してしまう。

    「ヘビの雨宿り」つげ忠男
    つげ忠男はすごい!何事もないようでどこか不気味。急な雨に雨宿りする人と蛇。たいしたことのない会話のようでどこかおかしくて薄暗さを感じる。日常を文学にしてしまう。

    「オートバイ少女」鈴木翁二
    中学生の女の子がオートバイに乗ってでかける。黒目がちの少女が可愛らしい。コマには少女の心がぽつりぽつり記されていてなんともきれい。
    若い男に下品な声かけをされて嫌な思いをしつつも海を目指す。桜の花の中を抜け虫の歌を聞き海に出ると、(うみはやわらかそうだ)と。とにかく美しく情緒的。

    「不安の立像」諸星大二郎
    電車の車窓から、いつも黒い布をすっぽり被った人影が見えることを気にする会社員の男性が主人公。周囲の人は、害がないから別に構わない、と気にもとめない様子。男性だけが気にしている。ある日その人間らしきものを追いかけて触れると異様な気味の悪さを感じた。また、ソイツが逃げていった先は行き止まりだったのに姿を消した。それからしばくして、ある日飛び込み自殺があったときに、ソイツが近付いて肉片を食べ血を舐めているのを目にする。男性は人間ではない何かだが、どこかで自分自身の闇に繋がっているような恐怖を感じ、ソイツを目で追うのをやめた。

  • 安部慎一「美代子阿佐ヶ谷気分」、永井豪「ススムちゃん大ショック」、松本零士「夜光都市のミライ」、かわぐちかいじ「直次郎哀歌」、辰巳ヨシヒロ「地獄」、川崎ゆきお「猟奇の果」、つげ忠男「ヘビの雨宿り」、ジョージ秋山「俺はぼろぼろ」、鈴木翁二「オートバイ少女」、諸星大二郎「不安の立像」、上村一夫「修学旅行」、山上たつひこ「地球防衛軍」。この時代は私が最も漫画を読んでいた頃なので、既読の作品が多かった。安部慎一、鈴木翁二や川崎ゆきおが掲載されていることはうれしかった。

  • 日本短編漫画傑作集第3集。
    安倍愼一、永井豪、松本零士、かわぐちかいじ、辰巳ヨシヒロ、川崎ゆきお、つげ忠男、ジョージ秋山、鈴木翁二、諸星大二郎、上村一夫、山上たつひこ。1971年から1974年の12作品。

    永井豪「ススムちゃん大ショック」。タイトルのポップさと、内容のショックさのギャップがえげつない。ススムちゃんがピュアなのが、余計にショックです。嫌な話です。でも面白くて好きです。
    松本零士「夜光都市のミライ」。主人公、語り手は足立という青年で、タイトルのミライはヒロイン。ただ、足立の心情に寄り添い読み進めていくのですが、終盤でミライの心情を考えざるを得ない展開になってしまうのが、苦しい。何が誰が正解で、何が誰が間違っていたのか、間違ってしまったのか。初読の時の年齢、人生経験で変わるのだろうなぁ。青春時代に読んでいたら、違ったのだろうな。
    諸星大二郎「不安の立像」。安定の諸星大二郎。日常と幻想が、不安と興味を絶妙に配合されて存在している世界。恐怖でなく不安。そのバランスが好きです。日常ではない、薄皮一枚分だけ非日常。
    山上たつひこ「地球防衛軍」。やりたい放題なんでもありのギャグ漫画。ばかだなぁ。

  • 3巻は1971年から74年にかけての作品を収録。
    収録先の中では鈴木翁二の「オートバイ少女」の何もなさが群を抜いて良い。
    あとジョージ秋山の「俺はぼろぼろ」のラストの唐突の笑顔も印象的を通り越してちょっと怖い。
    山上たつひこのギャグは流石に今読むのはちょっと厳しいものがあるかな。

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