四十八歳の抵抗 (P+D BOOKS)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 32
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093523639

作品紹介・あらすじ

“中年の危機”の男を描く「男性研究の書」

1955年から56年にかけて読売新聞に連載され、大反響の下、流行語にもなった「四十八歳の抵抗」。

55歳が停年の時代に、真面目一筋に勤めてきた48歳の保険会社次長、西村耕太郎は恵まれた家庭を持ち、傍目には幸せそうな日々を送っているが、実のところはなにやら満たされない。

その心中を見透かしたように社内の島田からヌード撮影会に誘われる。そして一度も恋愛をしてないという焦燥から、耕太郎はバーの娘で19歳のユカリを口説いて熱海の旅館に出かけるのだが――。

社会的な地位があり体裁を繕って生きてはいるが、まだ燃え上がる激情も秘かに抱えた“ミドルエイジ・クライシス”を描いた普遍的な「男性研究の書」である。

感想・レビュー・書評

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  • 「金環蝕」で石川達三にハマり2作目。

    四十八歳の抵抗。
    えーっと、このタイトルの本を電車で読むのはなかなか冴えないものがある。

    まさしく同世代として、身につまされるというか、あるあるというか、ライフシフトで人生100年と言われても、本書の出版された昭和30年代初頭と、サラリーマンの心象は大して変わらないことを痛感させられる。

    要は会社人生で先の見えた男が酒場の若い女の子にのぼせ上がる、というだけの話である。

    しかしこれが全方位的に読ませるのは、年齢に相応しい仕事への自信と倦怠、体力への自負と不安、家庭に対する(昭和の保守的な)責任と疎ましさ、そうしたものが余さず、かつ渾然一体として描かれているからだ。

    自分は身の程知らずの色恋に夢中になりながら、一人娘には徹底的に保守的な貞操を求める、そういうダメさ加減が呆れるほどきめ細かく書かれていて、一人の父親としてつくづく嫌になった。

    老いは若さに敗北する。これが本書のテーマである。
    これを正面から受け止められないことが老いであり、受け入れることが成熟である。
    そんな言い訳を胸に、静かに読後の感慨に耽る四十八歳のゴールデンウィークであった。

  •  1956(昭和31)年刊。明治生まれの作家石川達三、51歳の作。戦時に戦地に派遣されルポルタージュ的な小説を書いて発禁処分されたような世代ながら、戦後に非常に活躍した作家で、とてもパワフルな人、というイメージがある、
     本作はやや男尊女卑的な記述が時代がかってはいるものの、最近の作品としても遜色のない、リアリティを持った小説だ。
     当時55歳が定年であったようで、主人公は保険会社の「次長」を務める48歳の男性。くたびれて味気ない拘束が際立って感じられる夫婦生活や、年頃になった娘が親元を離れ自立していこうとする時期の寂しさを細かく描写しており、それがすこぶるリアルである。私自身が身につまされる部分がかなりある。
     会社で身を粉にして働き、帰宅しては眠るだけのような単調なサイクルを脱しようと試みる話で、冒頭の方で主人公が書店で購入するゲーテの『ファウスト』が鍵となっており、途中何度も引用される。そしてメフィストフェレスさながらの役柄で登場する30歳くらいの部下・蘇我が、「誘惑者」とし主人公を怪しげな歓楽へと誘う。この人物、あまりにも主人公のことを知りすぎているし、全然リアリティは無い。とってつけたようなマンガ的人物。ここまで「いかにも」な造形をしなくて良かったのではないか。
     しかし、まあその分、世代間の対立や古い夫婦のやり取りと心理が極めてリアルなので、許せるかなという感じだ。
     もちろん、このリアルな心理描写は男性目線のものに他ならず、夫婦生活等に関する女性目線の描写は、もう少し後の時代を待たなければならない。
     結局は「48歳の抵抗」は失敗に終わり、もはや老いゆくのをただ待つのみ、と覚悟するところで本編は終わる。それが普通だろう。私自身が、49歳以降突然老眼になり、髪が抜け、歯もぽろぽろと抜けていき、様々な点で「老いてしまった」という体感を持ったので、この小説の心理はとても他人事ではなかった。

  • 昭和30年当時の生活が描かれていて興味深い

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