魔性の馬 (SHOGAKUKAN MYSTERYクラシック・クライム・コレクション)

  • 小学館
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本棚登録 : 50
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093564618

作品紹介・あらすじ

「あんた、あいつに瓜二つだ」飲んだくれの役者ロディングがロンドンの街頭で出逢った孤児のファラー。彼はロディングが彼の親戚アシュビー家の行方不明の長男パトリックと間違えたほど、そっくりだった。金に困っていたロディングは、彼を説得して家督相続者である行方不明の兄が戻ってきたという触れ込みで、アシュビー家に彼を送り込んだが…。『時の娘』で世界的な評価を受けた実力派女流作家が、それに先だって発表した異色作。物語の面白さを満喫させる、意外性とサスペンスに満ちたミステリ・ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • ティの作品はほんと語り口が上品ですね。登場人物が皆魅力的です。なぜパトリックがいなくなったか、読者は見当がつくけれども、ロマンスありサスペンスあり、はらはらどきどき。読み進めるページがとまらない。

    結末は意外かも。アクロイド殺しもそうだけど、あの時代、こういう風にするのがベストだったんだろうと思う。すべてが丸くおさまるべきところへちゃんとおさまった、そういうすっきりを感じます。

  • イギリスの地方の古い一族アシュビー家。数年前に失踪してしまった長男の代わりに、近々次男が家督相続するという時に長男パトリックを名乗る人物が現れる。その人物とは、パトリックの従兄弟に唆された孤児のファラーだぅた。ファラーはその従兄弟から様々な事を教え込まれ、嘘がバレないよう綱渡りの生活を始める。
    登場人物たちが皆いきいきと描かれる他、田舎の生活の描写やファラーの馬に対する情熱も魅力たっぷりで、悪人のはずのファラーをつい応援したくなる。
    パトリックの失踪の真相は予想通りだったけど、真相が明らかになった後が駆け足で簡単にハッピーエンドとなり納得いかなかった。

  • 孤児のブラットはロンドンの街を歩いていると、役者のロディングに、故郷の親戚にそっくりだから、成りすましてその男になり遺産を相続し、二人で山分けしようと言われる。その親戚では両親が飛行機事故で亡くなっており、双子の弟がもうすぐ21才になり正式に財産を相続するというのだ。迷いつつその誘いに乘ったブラットはその故郷に向かうが・・

    無事プラットはなりすまし通せるか、はらはらどきどきの展開。双子の兄の死の真相、なぜブラットは顔が似てたのかも最後に明かされる。オリバー・ツイストみたいな感じのする奇想天外ともいえるストーリー。「ロウソクのために1シリングを」にも通じる突飛な感じの雰囲気と同じような活発な少女も出てくる。


    1949発表
    2003.3.20初版第1刷 図書館

  • Reading BOOK REPORT

    双子 自殺 相続 替え玉

    ---- basic plot ----

    ・イギリス 牧場で栄える田舎貴族

    自殺したとされていたパトリックが、突然家族の前に現れた。家族は彼の生存に驚き、彼の双子の弟であるサイモンも驚愕する。しかし彼の正体はパトリックの替え玉として送られた、その彼に瓜二つの男、ブラットという人物だった。ブラットが偽の家族と過ごしていくうちにパトリックの自殺の真相が明らかになっていく。

    途中で真相が読めてしまったのですが、人間関係や馬それぞれの性格などユーモアに溢れていて面白かったです。レポートがんばろ。

  • ファージングにて知ったジョセフィン・テイの「魔性の馬」

    読後、ジョー・ウォルトンが捧げた意味を分かったように思った。

    イギリスの田舎にある貴族の館、今は失われつつある階級と暮らしぶりを変遷も含めて描き興味深い。節度のある、良識のある登場人物たち。と同時にイギリスらしい変人に対する寛容さ。ゴシップ。

    罪に目をつぶり円くことを収める成熟した処世術。
    この作品では「良し」と温かい読後感を生み、もう一方の作品では生涯拭い去れない苦味を残した。

  • 成り済ましとか殺人とか自殺とか、そういう話しなのに、どこか牧歌的というかノンビリして感じがするのは、田舎が舞台だからなのか、戦争が終わったあとのほっと一息ついているような時代が設定だからなのか、訳文のせいなのか、あるいは装本の印象のせいなのか。というのも、これがもしハヤカワ・ミステリだったら受ける印象が違うかも・・・となんとなくだけど思ったから。そう思うと、これって紙の書籍だからこそであって、電子書籍じゃこういう楽しみ方はないんだろうねぇ。

  • リチャード3世の実像に迫る歴史ミステリの名作「時の娘」で知られる作者の、それに先立つ作品です。
    歴史ある牧場の跡取りだった少年パトリックが海で自殺したと思われて10年がたち、双子の弟サイモンが家督相続をしようという時に、死んだはずのパトリックが登場し、周囲を驚愕させます。
    実は、孤児で各地を放浪していたブラットが、たまたま瓜二つだったために替え玉に仕立てられたのでした。
    最初は断ったブラットも自分に似ているという一族を見てみたい気持ちがあり…
    いつどんな風にばれるかというサスペンスと、10年前に本当は何が起きたのかという謎で興味を引っ張ります。
    重苦しい話なのかと思ったらさにあらず、とまどう家族も個性的な馬たちもくっきりユーモラスに描き分けられ、地方の馬術競技など面白いシーンがあって飽きさせない。
    古い作品なのでややあっさりしていますが、読後感の良さは貴重で、どこかディック・フランシスを思わせます。

  • 牧場や農場を持つ名門アシュヴィ家のサイモンは21歳になったら、母親の遺産を相続することになっていた。その直前八年前に遺書を残して姿を消した彼の双子の兄が帰ってきた。「リプリー」みたいな話なので、終わり方を心配しましたが、読み終わってほっとしました。昔は今みたいに科学捜査もないから、こんな終わり方でも許されたのでしょう。時には真実を追究しすぎないことの方がいいこともあります。古き善き時代の御伽話もいいものです。

  • 「時の娘」の作者として名高いジョゼフィン・テイの、これは1949年の作品。

    300年の間、ラチェッツで自由農民として栄え続けたアシュビイ家では、跡継ぎのサイモンの成人式を目前にひかえていた。8年前、サイモン、エレノア、ルース、ジェーンたちの両親は飛行機事故でなくなり、叔母のビーは後見人として屋敷と三つの農場を支え続けてきたが、それもようやく終わろうとしていた。一方、アシュビイ家の谷の向こうのクレア屋敷のレディガム家は、今は没落し、一族の放蕩者のアレックスは、サイモンの成人式を吹っ飛ばすべく、画策する。両親の死後自殺したと思われていた、サイモンの双子の兄パトリックにそっくりの、ブレット・ファウラーを相続人パトリックとして屋敷に送り込もうというのだ・・・・・

    じゅびさんや茶葉さんの評通り、素晴らしい作品でした。
    死んでしまったはずのパトリックをどう迎えればいいのか、揺れながら、やがてブレットを愛しく思い始める叔母のビー、戸惑いながらも素直に愛し始める妹たち、あるときは親しくあるときは突き放すようにくるくると態度の変わるサイモン、一方、偽者でありながら強くアシュビイ家に牽き付けられていくブレットなど、登場人物の一人一人の心の動きが細やかに描かれて、真実が何処にあるのか、このお話はどこへ行くのか、読者をハラハラさせます。
    そして、第二次大戦直後の英国の田園地方には、貴族でも郷士でもない、しかし、豊かな自由農民の名家というものが存在したこと。彼らが豊かさを維持しつつ倹しく暮らし、必死に生活を維持しながらも、かつての使用人に年金を払い続ける、という奥行きの深い生活をしていたこと。そんな彼らの生活には馬が大きな比率を占めていたこと、などなど、その時代の暮らしぶり自体が私には興味深く、表題ともなっている「魔性の馬」が魅力的で、何処を読んでも興味深かったです。

    そして、ラストがやさしくて、心暖かになりました。う〜ん、いいわあ。

  • 行方不明の相続人に成りすましたブラットは、本来というか同じような小説であれば悪役みたいなもの。だけどこれを読んでいるとそっちに感情移入しちゃっていつばれるかいつばれるかとハラハラし通し。色々な場面それぞれもほのぼのしてたりハラハラしたりで物語にものめりこんじゃうからページをめくる手が止まらなくなってくる。楽しかったー。

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著者プロフィール

Josephine Tey

「2006年 『列のなかの男 グラント警部最初の事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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