- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093884365
作品紹介・あらすじ
日本脱出した高齢者達の衝撃ルポルタージュ
一年中温暖、物価は日本の3~5分の1、やさしく明るい国民性、原発ゼロ、年の差婚当たり前。日本で寂しく貧しく苦しい老後を過ごすなら、いっそのことフィリピンで幸せな老後を送りたいーーしかし、そう現実は甘くない。
恋人候補200人のナンパおじさん、19歳の妻と1歳の息子と、スラムで芋の葉を食べて暮らす元大手企業サラリーマン、東日本大震災を機に、東北から原発ゼロのフィリピンに移住した夫婦。ゴミ屋敷暮らしだった母親をセブ島に住まわせる娘、24歳年下妻とゴルフ三昧の元警察官。90歳の認知症の母親をフィリピン人メイドと介護する夫婦、「美しい島」で孤立死を選んだ元高校英語女性教師……。さまざまな「脱出老人」のジェットコースター人生を、マニラ在住、開高健ノンフィクション賞受賞作家が、フィリピン&日本で3年間にわたり徹底取材した衝撃のノンフィクション。
【編集担当からのおすすめ情報】
開高健ノンフィクション賞を受賞した『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』は、大きな話題を呼び、ベストセラーとなりました。その著者が次に挑んだテーマは、日本の高齢者達の老後の幸福。移住したからといって必ず幸せになるわけではないが、この本に登場する人たちは、日本の問題だらけで先行き不安な超高齢社会でもがき苦しみ、そして、日本を脱出するというアクションを起こした人たち。幸せな最期を迎えようと、あまりにもドラマチックな生きっぷりに、ぐんぐん引き込まれること間違いありません。
感想・レビュー・書評
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フィリピンに10年以上住んでいる著者がインタビューしてきた実際の日本人の様子が描かれている。
個人的にフィリピンに滞在したことがあり、その時に若いフィリピン人女性を連れて歩く高齢の日本人男性をちょくちょく見かけたことから気になって手に取った本。その男性たちは幸せそうに見えたし、この本の中でも幸せに暮らす人たちの様子も描かれている。一方で、フィリピンへ移住したはいいものの現地の文化に慣れることができなかったり、金銭トラブルに合ったり、病気になったりと困っている人もそれなりいる。そんな人たちは日本に帰れば良いじゃないかと思ったりしていたが、本書を読む限り日本にも居場所がなかったり、金銭的に日本ではやっていけなかったりとまた別の苦労もあるみたいだった。
個人的に一番驚いたのは第2章に登場する吉岡さんの話で、ほぼ現地の人、それもスラム街で暮らす人と同じ生活をしているということで自分にはまったく想像できない価値観だなと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021年 49冊目
このところ、たまたまですが連続して東南アジアが舞台の本を読んでいます。
3作品とも毛色は全く違うのだけど、舞台となる東南アジアの国々の雰囲気はどれも似通っていると思って読んでます。
実際はミャンマー、カンボジア、フィリピンとそれぞれ国の体制や言語も違うし、一括りには出来ないんだろうけど所謂発展途上国と言われて久しい国々。
今回の本はフィリピンに移住する年金生活者達を描いたノンフィクションでした。
著者はフィリピン在住11年の元「日刊マニラ新聞」の記者でこの本の前作「困窮邦人」で開高健ノンフィクション賞をとったそう。
前作は読んでないけれど、「困窮邦人」に「脱出老人」。
題名と肩書だけで内容が想像できましたが、想像を裏切らない内容でした。
題名からも楽しい内容ではなさそうで、読んでみても楽しい内容では無い。
でも、そう言う生活をしている人たちがいるという事実がある。
この本を読んでみても答えはないけれど、知らなきゃ良かった事実でも無いので、読みやすくあっという間に読めて良かったです。
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2019年12月6日読了
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「だから居場所が欲しかった」
を読んで
おっ と思った水谷竹秀さんの二冊目
暮らしのベースをフィリピンに置いておられるだけに
筆者ならではのフィールドワークが興味深い
ますます高齢化していく日本
ますます近隣諸国、それもアジア地域
と繋がるを得ない これからの日本
マレーシア
ベトナム
タイ
ラオス
インドネシア
…
これから、日本人たちは
これらの国とその人たちと
どのようなつながりを持っていくのだろう -
☆お金があればね。
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ノンフィクション
お金
人生 -
老後をフィリピンで過ごす、過ごした年老いた日本人たちの声を拾ったノンフィクション。ただ舞台はフィリピンだが、結論は日本の老後の課題に行き着く。
ほとんどが、フィリピンパブで知り合った女性とともにフィリピンに渡った男性の老人の話。レアケースで女性のパターンもある。
しかし、いくつかもエピソードから読み取れるのは、ほぼバッドエンドだという悲しい現実。
ただその人たちが日本で暮らしていたら幸せかというと、決してそうではないだろう。日本で、経済的、身内を含めた人間関係が充実していない老人がフィリピンに移住したと考えるべきだろう。
問題提起はしているが、解決策は示していない。 -
心無しか暗いです。
良いことばかりを書くのでなく、本当に現実に聞いたこと、見たことを書いております。ドキュメンタリーとしては、とても良いです。ただ、気は滅入ります。 -
マニラ駐在時に読んだ「困窮邦人」と同じ著者の水谷竹秀さんのノンフィクションで、いわば続編にあたる位置付けの本です。内容もちょうど自分が駐在していた2013年を中心に取材されているようで、なんとなく臨場感があります。前作は題名の通り、フィリピンに渡って困窮してしまった邦人に焦点を当てていましたので、基本は経済的に大変な事になってしまった方が中心でしたが、本作は似たようなに困窮した方も出てきますが、それだけではなく、経済的な尺度ではなく実に多様な理由がある邦人が登場します。
そんな方々のインタビューを中心に前作と同様に日本国内での取材も丁寧になされていて、裏付けやそこに至ったまでの経緯に説得力のある文章になっています。本作では更に踏み込んで、これらから浮かび上がる日本の高齢者問題の現状をきちんと浮き彫りにしているところが大きな違いでしょうか。何度も出てくるキーワードに「フィリピンには老人施設が存在しない。何故なら子供が親の面倒をみるのが当たり前だから」というものがあります。将来的には、フィリピンもそれだけではなくなる可能性は示唆しているものの、現状ではこの差が日本との大きな違いとしてのフォーカスされています。
そんな中で、最後トピックスとして登場するセブ島で孤独死した高齢の女性の話が出てくるのですが、著者が生前の足取りを日本から順に辿っていく中で明らかになるこの女性の半生を考えると、言いようのない寂寥感を感じざるを得なくなります。この女性がセブの前に住んでいた場所がなんとバコロドであったりと、自分も実際に訪ねた場所も出てきて何とも言えない現実感を感じました。そして、この女性が最後の地に選んだ「美しき島」が日本ではなくフィリピンだったことを思う時、日本の高齢者の孤独(死)の問題が読者には重い現実としてのし掛かってくる感じです。
今回の題名だけからですと「脱出老人」という日本を捨てた印象しか受け取りませんが、実際には日本を捨てざる得なかった複雑で深刻な日本の高齢者問題について考えさせられた書籍でした。