国宝ロストワールド: 写真家たちがとらえた文化財の記録

著者 :
  • 小学館
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (111ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093887229

作品紹介・あらすじ

名写真家たちが捉えていた今はなき国宝の姿

明治5年、新政府による文化財調査、いわゆる「壬申検査」を機に、様々な機会に撮影されてきた国宝の写真。昭和に入ってからは、多くの著名写真家たちも、作品の被写体として国宝を数多く撮影し、自身の創作意欲や芸術性を投影してきました。
本書は、明治、大正、昭和に撮影された国宝の写真を、写真史上の意義も踏まえて解説し、掲載するものです。
これらの写真の中には、文化財整備のゆき渡った現代とは違う姿でとらえられた荒廃した国宝の姿や、第二次世界大戦の戦火の中で消失した国宝も多く、“失われた時代の貴重な国宝の姿”をみることができる写真が多数含まれています。
記録としての写真の時代から芸術作品としての写真の時代へ。写真家たちはいかに国宝に対峙し、どのような苦労と創意のもとに国宝を撮影してきたのか。その歴史を順を追ってたどることで、国宝の新たな魅力に邂逅し、文化財としての国宝の数奇な運命をも知ることができる、貴重な一冊。
折しも2020年は文化財保護法制定70周年の記念すべき年。文化財保護への関心が高まる中、是非とも愛読いただきたい書です。


【編集担当からのおすすめ情報】
1950年の文化財保護法制定から70年を迎える2020年、様々な場面で、文化財保護、国宝保護への機運の高まりがみられると思われます。
また、この文化財保護法誕生のきっかけとなった、法隆寺金堂壁画の消失から今年(2019年)で70年でもあることから、奈良国立博物館では12月7日から「重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板」と題する特別展が開催予定。
本書内でも取り上げている「法隆寺金堂壁画」写真は、まさに“国宝ロストワールド”の象徴的存在であり、展覧会会場でも本書が注目されることが期待されます。

土門拳の幻の名作エッセイ「走る仏像」全文掲載あり。

日本写真史を知る上での貴重な挿図28点を掲載。

感想・レビュー・書評

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  • 明治から昭和にかけて撮影された文化財の写真を取り上げ、時代背景や撮影技術、撮影者や撮影の意図などについて解説した本。消失してしまった戦前の首里城(焼失した首里城は戦後復興されたものなので、琉球王朝時のもの)など貴重な写真も掲載されている。

    写真技術が文化財の撮影に本格的に導入されたのは明治5年の古社寺調査からである。明治21年には仏像など古社寺以外の文化財も対象とした調査が行われ、記録のための写真が数多く撮影された。
    文化財調査以外でも、造幣局がお札に印刷するための候補写真として有名古社寺を撮影した記録や、民間の写真館で個人が私財をなげうって撮影した貴重な写真、外国の技師が中心となって観光名所の写真に色付けし販売した「鎌倉写真」などが残されている。

    今はデジカメやスマホで惜しげもなく撮影し、画像をすぐ確認することができるが、当時は限られた予算と技術の中、苦労しながら撮影した様子が写真から見て取れる。
    フラッシュ撮影で火事になることもままあったため、採光を得るために動かせる文化財は屋外で撮影したり(そのため紫外線に弱い漆器が反ってしまったらしい)、仏像を一堂に集め一気に撮影したり、と今ではありえない写真が残っているのがおかしい。

    時代を経るにつれ、写真は「記録」から「表現」の場へと変化していく。右ひじをつき、頬に手を当てた上半身を斜め右から撮影した小川晴暘の「中宮寺菩薩半跏像」は、切手の図柄として採用され、たいていの人なら、ああ、あれね、とわかるほど有名な写真だ。鏡を何枚も使い、柔らかい陰影を作り出して撮影されている。また、「古寺巡礼」シリーズで有名な土門拳は、クローズアップ写真を多用して自分の被写体への思いを写真に反映させている。入江泰吉は、古社寺を背景とした原風景を抒情的に撮影し、「大和路」という言葉を世に知らしめた。

    この本は写真を専門とする学芸員が中心となって作成しているので、写真の見せ方や解説の入れ方がとても工夫されていて、読みやすくまとめられている。また、一枚の写真を歴史的な視点だけでなく、芸術や技術など多角的な視点から鑑賞する方法を紹介してくれており、写真のおもしろさを改めて感じることができた。文化財を実際に見に行くのはまだ先になるかもしれないが、在宅で文化財を楽しむにはもってこいの本である。

  • 『国宝ロストワールド 写真家たちがとらえた文化財の記録』 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/609624

    国宝ロストワールド | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09388722

  • 明治~昭和に撮影された33の国宝の写真に込めれた、
    写真家たちの被写体への想いと、国宝の数奇な運命の物語。
    写真、解説、国宝データ、写真家プロフィール、
    ここに注目!での構成。
    解説1~2、KOKUHO COLUMN、用語解説有り。
    写真家たちが向き合い撮影した国宝の記録と記憶。
    それら文化財にも写真家にも、物語がある。
    よくぞ写真で残してくれた、記録。
    撮影当時の貴重な姿は、明治時代、荒れ放題の東大寺大仏殿。
    琉球王朝時代の名残りが残る、大正時代の首里城。
    戦災での焼失前の名古屋城。修理前の興福寺の阿修羅像。
    発見した翌日には撮影された、高松塚古墳の壁画の鮮やかさ。
    焼損前の法隆寺の金堂壁画には、思わず息を吞んでしまいました。
    写真家たちの、明治期からの撮影技術と工夫、苦労、
    そして執念は、並々ならぬものがあります。
    記録として残すことの重要性。そしてそれを表現する芸術性へ。
    簡潔ながら、当時の状況がわかる文章が良くて、
    国宝の本や、紹介された写真家の作品集が
    読みたくなってしまいました。

  • 国宝と向き合った写真家達の執念、その結果残った貴重な写真に感嘆した。「ここに注目」と各写真の見所を示してくれていて親切な作り。

  • 2019 

    国宝の写真というだけでなく、
    それぞれの写真が魅力的
    それは芸術というだけでなく意義のある写真として選ばれていることで重みが違っているからか

    KW 国宝、写真、文化財調査、写真技術

    写真に収めることで、復元の手掛かりになることは大事

    写真の歴史について書かれた「はじめに」の1839年フランス学士院の科学アカデミーと美術アカデミーの合同会議において発表された写真術についてのくだりは、まさに写真と文化財との関係を象徴している
    →文化財を記録するために写真術があるというところ

    文化財だけでなく写真家にも注目

    ★横山松三郎
    フェリーチェ・ベアト
    三枝守富
    日下部金兵衛
    アドルフォ・ファルサーリ、玉村康三郎
    ★小川一眞
    光村利藻
    ★工藤利三郎
    小川晴鑃
    鎌倉芳太郎
    佐藤浜次郎
    木村伊兵衛
    小石清
    渡辺義雄
    佐藤辰三
    辻本米三郎
    大八木威男
    坂本万七
    土門拳
    入江泰吉
    藤本四八
    渡辺義雄






    「横浜写真」~外国人旅行者の土産物のため、また輸出用に撮られた、日本の風俗や人物や風景を西洋画風の陰影法を用いた写真のこと
    白黒写真に着色

    コロタイプ印刷 網目スクリーンも使用しないので、再現性にすぐれていた

  • 写真家の残した国宝たち。修復される前の阿修羅像や、荒れた感のある彦根城、戦争で焼失する前の首里城。どれも貴重だ。高松塚古墳の鮮やかな壁画には、ただ感動する。

  • 写真がすばらしい。国宝データも写真家プロフィールも解説もいいですが、「ロストワールド」のキャッチの使い方はおかしいのでは?

  • ふむ

  • 2020-2-29 amazon

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