バスを待って (小学館文庫 い 12-1)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 167
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062694

作品紹介・あらすじ

町の景色と人の思いを見事に描く傑作短篇集

「いちばん前の席があいた。となりのおじいさんは、いそいで移動して、椅子によじのぼった。男のひとは、いつまでもあの席が好きでおかしい」(本書より)。
路線バスには、ほかの乗り物にはない、ゆっくりとした時間が流れている。自分もバスに乗って、車窓からの風景を眺めながら、自分の人生に思いを巡らせてみたくなる20篇。人気画家・牧野伊三夫の挿絵も物語の雰囲気を盛り上げる。
解説は、小説家の戌井昭人。

感想・レビュー・書評

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  • バスに揺られながら読むのにぴったりな、
    バスにまつわる短編集。
    20篇それぞれの人生模様が愛おしく思える。

    「みどりちゃんの友だち」という作品が、
    中でもとても印象深く素敵な物語だった
    友だちの正体が明らかになったとき、なるほどそう来たかと意表を突かれ、みどりちゃんと友だちのお互いを思い合う気持ちに涙が出そうになった。

  • バスという程よい速度の中で過去を振り返りつつ、次の一歩への勇気を絞り出す そんな印象の話が多かった
    驚くような仕掛けや見事な落ちがあるわけではないが、静かに内面が描かれる良作と思う

  • どちらかが先に死期を迎える時が必ず来る。そんな当たり前のことを今更悲しみ、枯れない花に手を伸ばしたのは、親が目に見えて歳をとったと実感した日からかもしれません。面と向かって会話をすることも無くなっていたのに、いなくなってから貴方に毎日呼びかけてるだなんて不思議ね。大切な人に、一人でも前を向き生きていける力、居場所を作ろう、それは不器用な男が残した何よりの『愛』という贈り物。言葉というのは空気のようなもので、短くとも無くともそこに居てくれる、それだけで涙が頬を伝うこともあるのです。
    バスに揺られながら人は何を思うのでしょう。私はいつでも苦しいです。私と同じ苦しみを全員が感じているならば、私は悩まなくていいのかもしれない、そんな考えすらどうしようもなく。笑っていても会話していても寝ていても音楽を聴いていても、心の中では涙を流している人が多いのかもしれません。きっと人生は苦難の方が多いから。バスを待ちながら、そして揺られてるひと時に優しい花を咲かせてくれる、それも本の魅力なのだと思います。着けば花は枯れる。でも私の中に残るのです。

  • どんな感情もどこか柔らかい。

  • 石田千さんの短編小説はどこかせつなくて、でも最後はほっこり、暖かい気持ちになるので元気をもらえます。

  • 池袋・梟書茶房で出会った本。
    (全ての本にカバーが掛けられて売られており、あらすじで本を選ぶ体験)
    長らくバス通学だったので、知っているバス路線が出てきて懐かしく思った。
    大きい事件が起きるような話ではなく、ゆったり読める本。

  • バスの話。バスは道路を走る。停留所は比較的短い距離で点在している。シートの数は窓際分で、つり革で立つ人もいる。ゆっくり走る分、街中との距離感も近い。運転手は一人で、降車の際はコミュニケーションをとる。
    移動手段としてのバスの特徴はたくさんあって、そんなユニークさを短編集としてまとめたのが本書だ。関わるのは人間だけではなくて、アゲハ蝶が主人公の話もある。中でも『スパイスの国行き』は牧歌的だけれど、様々な人が入り混じって、カレーの匂いが文字通りスパイスを加える、ノスタルジックな話で、最後の最後にきっと乗客の一人になって、思わず笑顔になってしまう。

  • いろんな状況でバスにのる人々の話。静かな本でした。

  • 人とバスにまつわる20の作品の短編集。
    一生懸命生きていると、悲しいことや辛いことも沢山もあるけど、それが楽しいことや嬉しいことをもっと色づけてくれるんだなと改めて。

  • 短編集か‥と思ったけど、テーマにあってて納得。
    バスの中という同じ空間を、ほんの少しだけ共にする人達にもみんな、それまで積み重ねてきた人生とこれから生きる未来がある。
    名前も知らなくて、もう2度と会わなくてもバスに乗り合わせた人として私達は誰かの人生に存在する。それが幸福なのか、恐ろしいのか。難しいなぁと思う。

  • 最後はほっこりした。
    他はまあ、ふつうかなあ。

  • 2016/7/5 読了。

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著者プロフィール

石田千(いしだ・せん)
福島県生まれ、東京都育ち。國學院大學文学部卒業。2001年、『大踏切書店のこと』で第1回古本小説大賞を受賞。「あめりかむら」、「きなりの雲」、「家へ」の各作品で、芥川賞候補。16年、『家へ』(講談社)にて第3回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。16年より東海大学文学部文芸創作学科教授。著書に『月と菓子パン』(新潮文庫)、『唄めぐり』(新潮社)、『ヲトメノイノリ』(筑摩書房)、『屋上がえり』(ちくま文庫)、『バスを待って』(小学館文庫)、『夜明けのラジオ』(講談社)、『からだとはなす、ことばとおどる』(白水社)、『窓辺のこと』(港の人)他多数があり、牧野伊三夫氏との共著に『月金帳』(港の人)がある。

「2022年 『箸もてば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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