横濱王 (小学館文庫 な 23-3)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 119
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094065572

作品紹介・あらすじ

今の日本に、こんなリーダーがほしかった!

昭和13年、青年実業家の瀬田修司は横濱に降り立った。関東大震災から復興した横濱は、ジャズが流れモガ・モボが闊歩する華やかな文化あふれる国際都市。折しも日中戦争が始まり、軍需景気にあやかりたい瀬田は、横濱一の大富豪である原三渓からの出資を得ようと、三渓について調べ始める。
実業家としての三渓は、富岡製糸場のオーナーであり「生糸王」の異名を持っていた。関東大震災では、復興の先頭に立ち私財をなげうって被災者の救済にあたった。また、稀代の数寄者として名を馳せ、茶の湯に通じ、「西の桂離宮、東の三渓園」と言われる名園を築いた文化人。前田青邨や小林古径など、日本画家の育成を支援……と、いくら調べても交渉材料となるような醜聞は見つからず、瀬田は苛立つ。
やがて「電力王」として知られる実業家、松永安左ヱ門に会った瀬田は、松永の仲介で三渓に会うことが叶う。
三渓園の茶室を訪れた瀬田は、そこで原三渓と話を交わしたことで、少しずつ考えを変えていく。
実は少年時代、瀬田には三渓にまつわる忘れ得ぬ記憶があった……。

感想・レビュー・書評

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  • 木挽町のあだうち文庫化待ち。図書館にある永井さん全部読みます、6作目。
    横浜の実業家原三溪ー原富太郎ーの人柄と業績を描く時代小説。
    関東大震災で妹を失った瀬田という青年実業家が原から出資を取り付けたいと原三溪の周辺を調べて関係者に近づき周囲の話からその人となりを描き出す。
    震災で壊滅的な横濱の復興の先頭に立ち、優秀な実業家としての側面と 美術愛好家としてのパトロンとしての側面。
    茶の湯に通じて100年200年先まで見据えていたような原の言動を見て、瀬田が今まで即物的な生き方を見直していく。
    横濱っ子は、読んで三溪園へ行きましょう。

    • なおなおさん
      行ったことないのですよね…なんか遠くて^^;
      行く前にこの本を読むべし!なのですね!
      (๑•ω•́ฅ✧ 承知しました!
      行ったことないのですよね…なんか遠くて^^;
      行く前にこの本を読むべし!なのですね!
      (๑•ω•́ฅ✧ 承知しました!
      2024/03/20
    • おびのりさん
      こんばんは、なおなおさん。
      実は私も数十年前に一度だけ。
      今年は行こうと思います。
      元町には、行っちゃうのにね。
      こんばんは、なおなおさん。
      実は私も数十年前に一度だけ。
      今年は行こうと思います。
      元町には、行っちゃうのにね。
      2024/03/21
  • 歴史的であり、ちょっとヤクザっぽくもある、実話とフィクションを混ぜた小説。

    横浜育ちの方からプレゼントして頂き積読になっていた本。
    なんとなく読む気になってあっという間に読んでしまった。

    原三溪という人にも、お蝶さんにも、瀬田にも、人間味を感じるものだった。

  • 青年実業家が出資を得る為に大富豪のスキャンダルを探して実在の人物らを訪ねて周り身辺を探る、と言う前半。主人公の幼少期からと戦後まで、富豪と関わる事での心の変化を描いた後半。横浜の三溪園を作った原三溪の物語。面白かった。

  • 横浜で荷物運びをしながら幼い妹と暮らすシュウ。
    9月1日の関東大震災で妹を失ったシュウは大人になり青年実業家として海外を周っていたが、原田三溪に出資をしてもらう為、周辺を調べ始めついに本人に会うことになる。己の王になりなさい。その言葉で自分の心と向き合い始める瀬田。今の横浜の街と比べながら読むとぐっと惹き込まれる。

  • ハマっ子は読むべし。

    横濱に生きた魅力的な人物を描いた歴史小説。

    曾祖父が横濱で生糸貿易をしていたので、私小説のように個人的にも当時に思いを馳せることができた。

  • 横浜市に生まれ育ったからこそ、楽しくて読み返した。

  • 202309/

  • 読んだのは図書館から借りた2015年刊の単行本。

    直木賞受賞後、横浜出身とあちこちで吹聴しているようwに見え、
    斜に構えた気持ちで初挑戦した著者の小説。
    タイトルは「横濱王」、しかも三渓園の原三渓をめぐるとな。
    ああ、なんか嫌だ、嫌だ・・・
    昭和のハマッコは、なんだかいらつく。

    横濱の港で少年は関東大震災に遭遇する、序章。
    そこから胡散臭い自称実業家が出資を求め、
    原三渓についてあちこちで聞き込みを続ける・・・
    そして・・・という物語。

    正直、あちこちでの聞き込みは、途中睡魔に襲われることも・・・
    ほらね、やめようかな・・・と思う気持ちを踏みとどまらせたのは、
    各章の終わり、原三渓対する見方や語り手自身の自称実業家を見る眼差しが
    ちょっと良いからだった。

    作者は、このまま原三渓像を聞き書きを通して浮き彫りにするのが
    テーマかと思いきや・・・
    思わぬ方向へ・・・
    ネタバレになるので、なんと三渓と自称実業家が会うことになるのだ。
    こんなに早く?w

    ここからが面白かった。
    今までの長い長い助走を補うかのような疾走。
    その分、最後の方は、少しご都合主義かも知れないけれど。

    ・・・読み終わって涙した。

    いいじゃん、横濱、横濱王。
    横濱の心をしっかりわかっていてくれる。
    それは登場人物にも、ちゃんと投影されている。

    私の祖父母や両親が体験した道、
    わたしが知っている横濱をちゃんと描いてくれている。
    でも、それは横濱に限らない。
    災害、戦災を乗り越えて、今なお存在する土地に通じる強さだ。

    著者は、確かに横濱の人。
    昭和ハマッコは己の不明を恥じる。

    もう少し、他の作品を読んでみたくなった。

  • 原三渓と言う人物も、有名な庭園のことも全く知りませんでした。今はこれだけの資産家はなかなか現れないと思うし、ただの資産家だけではない、彼の人性がとても面白かった。

  • 歴史・時代小説として原三溪の人となりを描いた本。といっても原三溪が主人公ではなく胡乱な若手実業家が原三溪を知る商売敵、元芸者、元女中、そして前田青邨や松永安左ヱ門という実在の人物との対話を通して原三溪の姿をあぶり出していく展開が秀逸。
    昭和初期の華やかな横浜の風景をキングの塔、ニューグランド、聘珍樓など実存する場所を織り交ぜ浮かび上がるような描写が読んでいて楽しい。関東大震災や第二次大戦の空襲といった横浜の苦難の時代もカバーしていて横浜生まれの作者の思いを感じさせる。
    ユニークな切り口とライブ感あふれるタッチでありし日の横浜を描いた秀作。

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、「絡繰り心中」で第11回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2021年、『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で第40回新田次郎文学賞、第10回本屋が選ぶ時代小説大賞、第3回細谷賞を受賞。他に『大奥づとめ』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『帝都東京華族少女』『横濱王』『広岡浅子という生き方』などがある。

「2023年 『とわの文様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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