オッドタクシー (小学館文庫 わ 9-16)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 63
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094070439

作品紹介・あらすじ

超話題のアニメーション、完全ノベライズ!

平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。少し偏屈で無口な変わり者の彼が友人と呼べるのは、かかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生・柿花ぐらいだ。小戸川が乗せるのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス。車内で交わされる何でも無いはずの会話が、やがて1人の少女へと繋がっていく──。
主演に花江夏樹を迎えた超話題のアニメーション「オッドタクシー」。人気漫画家・此元和津也が書き下ろした脚本をもとに完全ノベライズ!巻頭カラーで人物相関図と名場面も収録。唯一無二の不思議な世界を、小説でもお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  • 「オッドタクシー」のノベライズ。
    動物を擬人化したアニメ化と思いきや、叙述トリックに次ぐ叙述トリックのミステリ。
    アニメだと端折られた部分があり、ノベライズまで読まないと補完出来ない部分がいくつかある。白川さんが小戸川を助けに来られた理由とか、田中の銃の弾丸が残っていた理由など。小戸川の行動理念や内面の描写があるので、小戸川を突き動かしていたものが解る。
    良く出来たミステリ。

  • 学生(らいすた)ミニコメント
    ファンシーなのにダークな展開で伏線をきれいに回収していくのが読み応えありまくります。

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/658318

  • 全体的にアニメ以上に小戸川視点を中心に話が進んでいて、一本道としての話の流れと小戸川の感情はつかみやすく良かったです。
    田中革命がほぼカットされていて扱いが不遇。好きなキャラなので残念でした。でも前述したように「小戸川の視点」で言えば田中の背景など知る由もないのでこういう捉え方もあるのかなとも思います。

  • 【オッドタクシーノベライズ版感想&ネタバレ】

    手短に感想を言うと、
    ・小戸川の心理描写の肉付けが圧倒的で、群像劇要素は多少薄まり、代わりにこの作品の主人公は小戸川!!!!!感がとてもある。小戸川がずっとずっと好きになる作品。
    ・ノベライズ版のオリジナル要素があったり、肉付けされている部分があったりして、このノベライズならではの物語の見方と味わいができ、アニメとはまた違った作品体験をすることができるので、読んでいて非常に楽しめる。


    【詳しい感想、ネタバレ】

    ・アニメとの一番大きな違いは、小戸川の心理描写の肉付けがこれでもかとされているところ。
    白川さんを始めとする他人に対して小戸川がどういう感情や想いを抱き、行動したのかという、彼の思考と感情、心をこのノベライズで詳しく描きたいのだ、という著者の熱い意思が読んでいて非常に伝わってきた。アニメではそこまで深彫されていなかった小戸川が抱いている、他人を信用することへの葛藤、そんな自分の殻を破ろうと心揺れながらも少しずつ変わっていく精神的成長が濃密に描かれており、小戸川というキャラクターにより感情移入し、愛着が湧くような作品になっていた。
    ドブや柿花を筆頭に、他のキャラクター達もより詳しくその内面が垣間見える様にフィーチャーされており、良くも悪くも生々しい人間味が感じられるようになっていたのでキャラクターとしての魅力が増していた。しかし、主要キャラの内、ヤノ、関口、大門兄弟の人物描写の肉付けなどは余りされておらず、アニメと同等かそれよりさらっと流されている登場シーンもあったので、そこは少し残念にも思える。力を入れて描写したいキャラクターと、その必要を感じていないキャラクターとの差がかなり明確のように思われた。著者の好みが反映されているのかな。そういう意味では、場面毎の密度に多少のムラがある読み心地になってしまっている。

    ・せっかくのノベライズなのだから、アニメと全く一緒の作品体験を提供するのではなく、このノベライズならではの物語の見方と味わいを提供しようという意図が感じられる。
    上述したように小戸川やその他のキャラの心理描写に特化しているなど、肉付けがされていてボリュームが増している場面が多い。
    一方、アニメよりさらっと流している、或いはカットされている場面もある。これは、アニメと全く同じように場面を描いて小説という媒体での演出の関係上面白くならないなら、さらっと流すか、物語の進行上なくても成立するならいっそカットしようと判断されたからなのかもしれない。
    それについて個人的には、面白い試みだし嬉しいと思う反面、アニメで好きだったシーンがなくなっていたりあっさりめになっていたりしたのはやはり少し残念だった。勿論それを差し置いても非常に満足できるその他のプラス要素があるので、作品全体の満足度は高い。

    ・大まかな場面内容はアニメと同じでも、細かい状況設定や演出が違う部分がある。特に物語後半に行くに連れその割合は増している。
    例1)
    市村と山本が柿花が監禁されているヤノ達のアジトを訪れるシーン。アニメでは山本が関口に暴力を振るわれたり柿花が情けなく母親に電話をかけさせられるシーンは、市村がその場を去ったあとの出来事だったが、ノベライズ版では市村がその場にいる間に起こった出来事として描かれていた。これ市村の精神衛生大丈夫かな...と少し心配になった。

    例2)
    小戸川が山本に自分側に付くよう提案して襲われ、白川さんが助けに来る場面。タクシーが停まったのが山の中に変更されていた。また、白川さんが小戸川の場所を特定して助けに来ることができたのは彼女がドブに言われてGPSを小戸川のタクシーに潜ませていたからなど、オリジナル要素も追加されていた。

    例3)
    ヤノ達のアジトへ柿花の救出に向かい、その後ドブが樺沢と対面する場面。関口の武器が木刀に変わっていたり、アニメではドブは樺沢に対して暴力的には振る舞っていなかったのがノベライズ版ではきっちり落とし前としてボコボコにしていたりした。

    例4)
    今井と一億円+偽札を運んでいるヤノ達を大門兄が止め、ヤノ達がパニックになる場面。アニメではそのままその場面が描かれていたが、ノベライズ版では、待機しているドブと小戸川が大門兄との電話音声越しに彼らのやり取りを聞いている、という演出になっていた。これは、かなり面白い変更点だと思う。この小説は限りなく小戸川視点よりで物語を語っているので、そのような演出にしたのかな、と考える。

    これらの場面以外にも、アニメと演出や状況設定が変更になっている場面は多々あり、読んでいて違いを楽しむのが面白い。

    ・そもそもアニメにはなかった場面や情報などのオリジナル要素が追加されている。
    例1)
    アニメでは柿花と市村のデートはレストランでのシーンのみだったが、ノベライズ版では追加のデートも描かれていた。ここが肉付けされることによって、柿花の痛々しさ情けなさやが強調されたり、市村の性格がアニメとはまた少し違う印象になったりしていた。

    例2)
    アニメでは、ドブの脚を撃った人物が誰なのか小戸川は知らなかったり、ヤノとドブの銀行強盗計画を台無しにするために大門弟に協力を仰ぐが彼と連絡が取れなくなっていたりした。
    しかしノベライズ版では、小戸川は大門弟に連絡が取れ、尚かつその会話内容からドブを撃ったのは大門弟だったのだと小戸川自身が推測している。その為、駐車場で田中と対面した時、拳銃には弾が一発残っていると小戸川は知っている状態で接していた。
    アニメでは、ドブを撃ったのは大門弟だという情報をアニメならではの演出で視聴者に提供できていた。しかし文章だけではそれは上手く伝わらないので、小戸川が自力で気づくという演出に変えることで読者にその情報を提供したのだと考えられる。

    例3)
    ノベライズ版では、アニメ第4話「田中革命」に相当する部分は一切省かれている。そのため、何故ドクロ仮面が小戸川を狙っているのか、最後駐車場で対面するまで一切読者には明かされない。そして駐車場の場面で初めて田中の動機が彼の口から説明されるが、消しゴムのくだりは全カットされている。その為、彼のソシャゲーへの病的な執着心などの説得力がやや弱くなり、彼の異常性やキャラクター性の深みも減っている。
    これもやはり、ノベライズ版は小戸川に特化した物語として描かれているためだからかもしれない。

    ・最終シーン
    ノベライズ版では三矢を殺した真犯人は和田垣だとハッキリとは明かされていない。しかし、和田垣の母親との電話内容から推測はできるので、アニメほどではないが最後の不穏感は依然としてある。

    【総括】
    アニメ版との違いは多々あれど、ノベライズ版ならではの視点と味わいを存分に楽しめたので、普通にアニメと合わせて何度も読み返したいと思える作品だった。
    何度でも言うが、ノベライズ版は小戸川が圧倒的主人公色が強いというか、著者さんの小戸川贔屓の色が濃い。個人的には小戸川をずっとずっと好きになれたので、普通に良かった。

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