すべてあなたのためだから (小学館文庫 た 38-2)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072273

作品紹介・あらすじ

中学受験があぶりだす、母のエゴと娘の闇 良子は夫と小学4年生の娘・菜摘と暮らす、ごく平凡な主婦。何事にも消極的な我が子の性格に少々不満はあるものの穏やかな日々を送っていた。優秀な娘を持つセレブなママ友・麗香は娘が赤ちゃんの頃から仲良しで、憧れの存在でもある。彼女の勧めで菜摘は中学受験に挑戦することに。麗香の娘・涼香と同じ塾に通えることに喜び勉強に励むと、菜摘は意外な才能を開花させ、39しかなかった偏差値をみるみる上げていったのだ。我が子の可能性に舞い上がった良子は麗香に菜摘の成績をさりげなく自慢する。すると麗香の態度は一変、良子を無視し、ママ友とのランチ会で良子を貶める発言をするほどまでに。私と仲良くしていたのは、愚かな母娘を見て優越感に浸りたかっただけ……。これまでの憧れと信頼の深さゆえに、そう悟った良子の反動は大きかった。麗香を見返す。成績を伸ばし涼香に勝つことこそ、菜摘の将来のため。決意した良子は娘に勉強を強い、その教育熱は次第にエスカレートしていく。やがてそれは思いもよらぬ悲劇を招くのだった。「どこかの家庭で今まさに起きているのでは」と思わせる、リアルな恐怖が読者の心に爪痕を残す衝撃作! 【編集担当からのおすすめ情報】 AppleBooks先行配信作品。配信中からも、中学受験での母親の心理描写がリアルで恐ろしいと反響続々!

感想・レビュー・書評

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  • イヤミスのような読後感。……ミステリー要素はないんだけれども。
    小学・中学受験にまつわる親の狂気は、これまでドラマや小説などでたびたび触れてきたので、そういう意味では目新しさはとくにないのだけれど……
    毎回、「これはフィクションだからね~」で片づけられない何かがあるのは事実。

    子育てにおいて、「自分」がない親はダメだ。
    でも、「自分」がありすぎる親もダメなのだ。
    当たり前だけど、子どもの人生は、子どもが主役。
    親にできるのは、子どもをよく観察し、必要なときに手を差し伸べることくらいしかない。
    子どもの「受験」は、自分の経験から、達成感・挫折感、いろんな感情を呼び起こされる。
    現実の世界でも、受験が悲劇につながってしまう事件が絶えない。
    誰でも一度は通る道だからこそ、間違えないようにしたい。

  • 憧れのママ友にすすめられて娘の菜摘を中学受験の塾に入れた良子。
    できない子だと思っていた娘が塾の先生たちに十年に一度の才能の持ち主だと目をかけられ、「本当の力」を出し始める。出し始めたと思ったら、トップクラスのトップを狙うまでに時間はかからなかった。

    憧れのママ友に敵視され無視される良子。
    今までアドバイスをくれ、良好に付き合えたのは、相手にとって下に見られていたからだと気づく。
    娘たちも母親の影響を受けないわけもなく、幼稚園時代からの仲良しがライバル、敵であるかのように、会話もできなくなってしまう。

    菜摘はどんどん成績を伸ばし、良子はそれを娘のために支える。
    が、いつの間にか、そしてあっという間にママ友に勝ちたいという苛烈な執念と、自分の劣等感を払拭するためのもの変わってしまい、良子と菜摘の関係を蝕んでいく。

    いつも母に従順な娘は受験まで持ちこたえることができるのか?
    母は娘を追い詰めずに、娘のために、自分のために勝つことができるのか?


    いやー、すごい展開で半日で読みきった。
    よく聞くところの、「あなたのためだから」というのが本当に相手のためだったことがあるのか、ということを何度も感じさせられた。

    子供をいい学校に行かせたい、経済的に苦労させたくない、幸せになってほしいという願い自体は自然なものなのに、他人との競争を前提とする世界でそれを求めると、何だかもう...

    子供は当然気の毒だし、最後もああそうか...そうなるのも仕方ないのかもねと悲しくなるけど、良子も糾弾しきれなかったな。
    純粋に娘を思う気持ちもあったはずなのに、それにママ友が絡み、娘同志ではなく母親同志の競争になり、きっと本意ではないのに般若のような顔で娘を追い込んでしまったんだろうね。

    誰か幸せになったのかな、と考えると、この本はしんどい。
    でもエンタメとして読むと、本当に面白い。

  • 飯田良子は平凡な主婦。娘の菜摘は何ごとにも鈍く、そこに少々不満はあるが平穏に暮らしていた。ある日、憧れのセレブなママ友・麗香の勧めで娘を中学受験塾に通わせることに。初の試験は偏差値39という惨憺たる結果で愕然とするが、菜摘は意外な才能を見せ、一気に成績を上げていく。辛かった自らの学生生活を重ね、我が子には明るい未来をと願う良子は周囲に娘を絶賛され有頂天に。だが麗香はそれを知ると良子への態度を豹変させた…。受験に形を借りて母親同士のエゴがぶつかり、娘へのプレッシャーもエスカレートしてゆく。あまりにもリアルな衝撃作!

  • 一気読み。

    最初の方はブログってこんなに個人情報がわかるように書くものかな、
    とか細かいところが気になったけれど
    読み進めていくうちにやめられなくなってしまった。

    母親の良子の感情、気持ちはわからないでもない。
    子供に才能があるとわかったら浮かれるだろうし、
    もっと頑張ってほしいと思うだろう。
    実際、過去に自分も子供に受験勉強をさせようと
    結構厳しくしていたから。
    だから子供の気持ちを無視して突き進む
    彼女の事を責められないし、
    悲しい気持ちで物語を読み終わった。。

  • 昼ドラのように人間の持つ危うい部分が現れていて興味深くグイグイ読み進んで読了。中学受験がテーマだったが、スポーツでも、我が子の活躍に高揚してしまう母親の気持ちは理解できる。こわいなあ、自分にもきっとそういう一面は潜んでいる。面白かったです。

  • 中学受験モノと思ったのだけど、ママ友トラブルものなのね。舞台はスポ少でも、バレエでもよさそう。中学受験としては成績が上がるのがびっくりするくらい早すぎるのが気になる。

  • 平凡な主婦「良子」が憧れのセレブママ「麗香」に勧められ娘を中学受験塾に通わせることに
    そこから平穏に暮らす一家の歯車が狂い出す

    ぐんぐん成績を上げていく菜摘に、麗香の態度が豹変しなければ、お互い切磋琢磨しながら受験出来、良子もモンスターにならなかったかもしれない

    終盤折角気づいたのに、、、、とても残念です
    が、物語としては想定外で良いのかもしれません
    一気読みしてしまいました

  • 恐ろしい教育虐待。
    頭に思い浮かんだ言葉は「モンスター」

    実際に教育虐待ってあると思うし、自覚してないだけの親っていると思う。

    「あなたのため」って言葉よく聞くけど、本当に“あなた”のためなことってどのくらいの割合なんだろう?

    子供のため、将来のため、そんな理由で始めたけど
    親の見栄だったり世間体だったり、押しつけだったり…エゴなことって結構あると思うんだよね。

    子供が休みたいって言ったらある程度は休ませてあげたり、
    意見を尊重してあげることが出来ない人は手を出したら行けない領域な気がする。

    でも、母親・良子の心情は少しわかってしまうところもあるからそれが怖いとこ。
    まぁ麗香の心情も、菜摘も涼香も、全員わかっちゃうから怖いし、しんどい。

    お受験組の親御さん、是非手に取ってみてほしい。

  • 想定可能なところへ着地する、かと思いきや、しませんでした。「母親のエゴ」に起因させているけど、そうでない=本気で子供の為と思い込んで、こういう状況になってしまうことがある、本当にあるコワイ話なんです。
    「母親のエゴ」だからまだ、小説として一気読みして、こうやって感想を書くことが出来る。。。

  • 受験にハマった親が最後は娘の幸せに気づく、というある意味既定路線の話か〜と思ってたら、最後の結末には驚いた。自分もここまでとはいかなくても沼に陥る可能性がある、他人事ではないのだと同じ母親として震えてしまった。
    一人称で進み、ブログという形で進むので読みやすい文章だった。中学受験というテーマでの人間劇はあまり読んだことがなく新鮮だったので、他の視点からも登場人物や状況を見たいという思いも。

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