ビターシュガー(虹色天気雨2) (小学館文庫 お 27-3)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094085730

作品紹介・あらすじ

前作『虹色天気雨』から数年後。市子、奈津、まりの三人は、中学、高校からの二十年来の付き合いを続けている。モデルをやめて専業主婦になった奈津は、失踪騒ぎを起こした夫・憲吾と別居、娘の美月と二人で暮らしている。キャリアウーマンのまりは年下のカメラマン・旭との恋愛に疲れ、別離を選んでいた。市子はあいかわらず執筆業を続けていたが、ひょんなことから、まりの恋人だった旭が彼女の家に転がり込んできたことから、市子、奈津、まりの三人の関係に微妙なほころびが生じることになる…。連続ドラマ化もされたアラフォー女性の恋愛&友情小説。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えてまず思ったのは、
    「あ~、わたしもこういうの、面白いって思うようになったんだなぁ」
    ということ。
    誤解を恐れずに言うと、これを読んで何かしら共感したり、面白いと思えたりするのは、どこかしら「年、とったなあ」と自分で感じ始めている人なんじゃないだろうか。
    事実わたしはちょうどそんな時期にあるわけで。
    きっとこの本を5年前に読んだなら、けっして「面白い」とは思わなかっただろうし、まず手に取ることさえしなかっただろう。
    20代から30代へ、30代から40代へ…そんな、ちょっとした人生の区切りにある人には、どこか共感できて、ちょっとだけ勇気と元気をもらえる、ほんな「ほっこり」した一冊だと思う。

    小説というよりは、長編エッセイのような本作。
    主人公は40代だか50代だか、恐らく漫画家らしい女性。(すみません、前作読んでないもので。)
    未婚、子供はなし、恋愛にも興味なし。
    そんな自分の現状に特に不満を持つわけでもなく、個性的な友人とその子供達に囲まれて、日々を淡々と、しかしピリッと刺激はありつつ楽しみながら生きている。
    そう、まさにビターシュガーな日々である。
    わたしはバツイチ。
    おまけに、大恋愛の末のこの結末だから、正直もう一生「恋愛」はできないと思ってる。
    実はそんな自分自身にちょっと焦りと感じていたりして。
    新しい出逢いを求めて新しい環境に飛び込んでみたり。
    旅に出てみたり。
    まあ、ここ一年半、足掻いてきたけれど…。

    なぁんか、別にいいんじゃない?

    読み終えたとき、カラッとそう思った。
    不思議なくらい、自然にカラッと。
    いいんじゃない、一生分の恋をしたんなら。もう無理して恋愛に拘らなくても。「友愛」の果てが一緒にいる相手だった、でもアリじゃない。
    良い友人、大好きな妹ちゃん、おちゃらけて明るい両親、絶対出会うことはなかっただろう人々…そんな人達と、楽しく元気に生きていければ。
    その中でちょっとシュガーだったりビターだったり、いろいろ感じながら生きていけば。
    気楽に生きよう。
    レッセフェール、ケセラセラ。
    奇しくもずっと自分のモットーであったその生き方に、巡り巡って辿り着いた感じ。

    本当に、本との出会いは奇なるもの。
    「傑作だ」とか「これ絶対読んでほしい」という作品ではない。
    でも、わたしのように、「一般的な人生ってなんだろう」と、それとの乖離に密かに焦っているような人には、ちょっと読んで欲しい一冊。
    ビターシュガー。
    人生ってそんなもの。
    気負わず、わたしも、日々のシュガーとビターを淹れたての珈琲を味わうが如く噛み締めつつ生きていこう。
    ふと、そう思った本なのでした。

  • 『虹色天気雨』の3年後。
    いまだに奈津は夫と別居中。
    全然事態が進展しない中、大人びて健気で空気読み~で美少女だった美月は、いっぱしの大人のつもりで、分かってない事まで分かったつもりで大人の生き方に口をはさみ、批判し、不潔扱いするという、まさに中二病真っ盛りの女子に変貌を遂げた。

    そして、主人公の市子は、厄介事を次々と押しつけられ、善意でした事(というか断れなかっただけ?)をみんなから非難され、家には押し掛けられ…という気の毒な状態。
    前作はそんなに気の毒にも感じなかったのだけれど…
    まりとか美月が何だか強烈で。

    前作は運動会、今作は、小糸ちゃんの結婚式やリンゴ狩り?
    登場人物が総出で楽しむ。
    切れたと思ったら、まだ繋がっていて、ちょっとついたと思ったら、ずっと切れなくて、納豆のような人間関係である。
    離婚したり、元夫と撚りを戻したりと、波乱といえば、皆、波乱に満ちた人生を歩んでいるのだが、まるでお経を聞いているような語り口で書かれている。
    以前、ドラマになったそうなのだが、この淡々とした感じを出す事が出来たのだろうか?

    厄介事が次々と舞い込む…と書くとマイナス印象だが、実は主人公のマンションは、みんなの帰る場所のような、つまり安らぎの空間なのである。

    そして、大所帯な行事の写真を“興奮した犬みたいに”写真に撮りまくる土方さんが、目に浮かんでくるようで、なんだか可愛かった。

    前作では、失踪してまで憲吾さんが何したいんだか全然分からなかったのだが、今回、長野が描かれるに至って、何だかちょっと分かったような気がした。

    “女性の友情”は、前作の方が感じたかなあ…
    私は、今作のまりはちょっと遠慮したいです。

  • わーわー騒げる仲間。
    そりゃ心配もイロイロするけど、基本そのコ達の人としての強さを信じてる。だから踏み込みすぎない。存在に励まされる。いいな友達。


  • 前編の「虹色天気雨」では、友人奈津の夫の失踪騒ぎを巡るちょっとハチャメチャなお話ですが、そこで描かれた登場人物たちの人間模様が、2作目の「ビターシュガー」でものすごく生き生きと動き出す感じ。キャラがより一層立つというのでしょうか。私は2作目の方が好きでした。
    特に、2作目でゲイの三宅ちゃんが最高にいい味を出してきます。
    読者が女性か男性か、また年代で受け止めも変わるような気がします。若い人なら、現実的ではないけれど、齢をとることも悪くないなぁと思うかも。それなりに年齢を重ねた自覚がある方々なら、一緒に齢を重ねる友人のありがたさを思い出すのではと思いました。

    女友達ってこういう関係だなぁと、自分の古くからの大事な友人を、出会いから若い頃の付き合い方まで(付き合い方の変化も)いろいろ思い出しました。

  • 腐れ縁でもなんでも続いている友情とその距離感が絶妙です。そして振り回されてばかりの市子の避難所のごとき存在感に乾杯です。

  • さくさく読める。なにも考えなく読める。

  • 虹色天気雨の続編と知らずいきなり読んだので面白さは半分だったかもしれない。続きのようでわからないところもあったが中学、高校からの付き合いの市子、奈津、まりの何でも言い合える関係…絶妙な友達関係が大人になっても続くのはいいなぁーと思った。

  • 相変わらずいい大人が四六時中女子会を開いてる。

  • トレンディドラマのようでした。

  • 「虹色天気雨」の数年後。
    ひょんな事からまりの元彼・旭が市子のマンションに居候になり…

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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