文系人間のための「AI」論(小学館新書 た 22-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253005

作品紹介・あらすじ

人間の脳がコンピュータに繋がる日がくる

連日ニュースになり、世間で話題となっている人工知能(AI=Artificial Intelligence)。その発達はめざましく、囲碁の対局からホテルコンシェルジュ、会社経営まで、人間の仕事を奪いつつある。将来、“ハイパーAI”が登場し、人間の能力を凌ぐ特異点(シンギュラリティー)が訪れると、人間の脳はコンピュータと融合しサイボーグ化せざるをえないという。
学生に大人気の講義を持つ早稲田大学文化構想学部の教授が、最新技術の情報をふまえて、AIのある未来を哲学的立場から考察。AIを通じて、人間の存在意義、これからの人類のあるべき道を考える。

【編集担当からのおすすめ情報】
『攻殻機動隊』の世界が現実となる日がすぐそこに!?
2017年4月に、アメリカ映画の『ゴースト・イン・ザ・シェル』も公開され、ますますAIのある未来への感心が高まっています。
AIは理系キーワードだと思っている人、今ひとつAIがピンとこない文系ビジネスマンに最適の良書です。

感想・レビュー・書評

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  • 「AIの本質」とは、どの年代で切り取ったとしても「その内容」だけを探っている限り本質に辿り着けない。
    結局、AIの本質を知ることは「AIの未来がどうなるのか?」を探すことに尽きると思うのだ。
    当面というか数十年単位のレベルで「完全に完成されたAI」が実現することはないだろう。
    そもそも「AIに完成はあるのか?」という疑問が残るし、永遠に進歩し続けるとしたら、その進歩に終着点はないことになる。
    しかしながら「何年後には、これぐらい進歩しているだろう」という予測は常にある訳で、それはつまり、「今どの時点なのか?」「今後(数年間)どうなりそうか?」を勘案しながら、予測を立てるということになる。
    もしくは「何年後には、これぐらい進歩していたい」という単純な研究者側の願望だったりするもするかもしれない。
    いずれにしても、未来を予測するためには、過去から学ぶしかなさそうである。
    馬車の時代に、自動車が発明された。
    その時点で、自動車が街中を走り回る未来を当時の人々は予測できたのだろうか?
    結局「AIの未来がどうなるのか?」を突き詰めても、それによって「我々の生活にどう影響するのか?」を正確に予測することは、実際は相当難しいのではないだろうか?
    馬車から自動車に置き換わった過去の事例は確かに参考になると思うが、果たしてその置き換えがAIについても全く同じに当てはまるのかは、今の段階では何とも言えない。
    やはり、AIに関する様々な情報を広く集め、その情報を多面的に検証していくしかないのだ。
    AIの進歩により「自分の職は果たしてAIに奪われるのか?」が一番の関心ごとであるのは間違いないが、話はそんなに単純な事ではないだろう。
    一側面で捉えずに、多面的に考えるためにも、「AIとは何なのか?」というシンプルな問いを様々な角度で検証していく必要性があるのだ。
    著者も語っているが「AIが何か?」を探ることは、実際「人間の脳とは何か?」を探ることと等しい。
    それは、AIが目指す一つの目標が「人類の脳を模倣する」であることからも想像できる。
    これは非常に分かりやすい。
    「結局、我々は何者なのか?」「我々の意識とは、結局何なのか?」
    こういう人間の思考を知ることが、つまり「脳」を知ることであり、自分自身を知ることにも通じる。
    それはつまり「哲学の探求」そのものなのである。
    とは言え、普段の生活の中で、一般の人々が哲学者のような探求心を持ち「人間とは何か?」を考えることはほとんどないだろう。
    結局、我々のような一般人に関心があることは「自分の職はAIに奪われないだろうか?」なので、自身の生活に直結する話なのかどうかが重要となってしまう。
    結局AIは、人間(つまり自分)にとって脅威なのか?味方なのか?について考えることとなる。
    本書の中で、古代ギリシャのソクラテスやプラトンなどの哲学者についても触れていた。
    当時、ようやく「文字」の発明がされた時代。
    そしてその「文字」は、当時の最先端テクノロジーだったというのだ。
    「情報を紙に文字で書き残す」ということは、記憶デバイスに知識を保存しておくことと同じこと。
    これはものすごく画期的な技術革新だったということである。
    しかし、当時の人々の反応は二分したという。
    知識を保存し、さらに他人とも共有ができるという便利な部分がある一方、その副反応として「人間は考えなくなるのではないか?」と真剣に検討されたらしい。
    今でも「スマホで何でも調べられるのに、学校の知識詰め込み型の勉強法に意味があるのか?」と議論されているが、それと内容が似ている。
    自動車に乗ってばかりいて歩かなくなると、足腰が弱まるという考え方も同じだ。
    ではAIは?
    AIは今後益々便利になって、人間の生活の中心になっていくだろう。
    そうなればなるほど、人間の能力は本当に退化してしまうのだろうか?
    こういう部分も含めて、一部の天才だけにAIを語らせず、もっと一般の人もAIに関して議論した方がよいのではないかと思ってしまう。
    過去の歴史を振り返ってみれば、自動車の発明によって、人間の足腰が弱くなったかもしれないが、それでは自動車は悪だったのだろうか?
    悪の発明が、現在こんなに我々に便益をもたらす訳がない。
    結局は副反応の部分を正しく認識しつつ、便利な新技術を使いこなす方が得策なのだ。
    きっとAIという新技術だって同じことが言える
    だったら我々が行うことは、AIというものをまず正しく認識することが重要となる。
    AIは何が得意で、何が苦手なのか?
    AIが人間に及ぼす副反応とは、どんなことが起こり得るだろうか?
    やはり、新技術をきちんと勉強し理解し、未知の部分を皆で議論し、単純否定するのではなく、使用方法の最適解を見つけていく。
    この姿勢が大事だし、文系だからと言ってAIから距離を置くのではなく、積極的に学ぶ姿勢が必要だということだ。
    そういう意味でも、AIに対する心構えや向き合い方について、初心者向けで分かりやすい書籍であったと言える。
    未知なものに対し、無知のままでいることは罪である。
    自分の身を守るためにも、勉強し続けろということなのだ。
    (2023/7/29土)

  • 文系人間とはあまり関係なく、「AI論」の入門書。

    タイトルとは裏腹に、内容は難解に感じた。

  • 2017年の書籍なので最新の部分は入っていない可能性もあるが、十分に楽しめた。
    前半はAIについての現状や概要が整理されてあるので、ざっとつかみたいときに役立ちそう。
    後半は著者の専門である哲学の立場からテクノロジーについて考察されている。
    AIの進化とともに語られる人間のサイボーグ化の必要性が著者のAI時代の人間論である点が面白かった。
    来るべきサイボーグ・エコノミーにおける、脳内快楽物質の数値の等価交換という新しいマネーの形態はとても面白かった。私達の日常も、少し前まではそんな未来は想像だにしなかった状態であることを思えば、きっといつの間にか現実になっていくのだろう。
    文系、特に哲学分野にとってAIについての議論は今後必須だと思うが、その中での著者の立ち位置を俯瞰的に見ながら読んだ方が面白いと思うので、そういう意味ではタイトルの「文系のための」というのはちょっと異なるという印象も受けた。著者のサイボーグ論をタイトルの全面に押し出しても良かったのでは。

  • やっぱり新書は難しい

  • AI、人工知能、それらがもたらす社会への影響。
    哲学を専攻する大学教授の本というだけあって、AIそのものというよりは、AI社会に生きる“人間”を主体に論が進む。工学的なことはとんとわからないが、それでも十分に楽しめた。

    AIの進歩によって職を奪われることをいたずらに恐れる社会の傾向があるが、彼らは一様に「人間も同時に変化していく」ことを見落としているように思う。ヒトという生物はヒトなりに技術を我が身に取り込み、変貌する社会の中で歩んでいくのだ。
    言ってしまえば当然のようにも思えるが、なぜだか思いつかないその未来を「文系のため」に説明していく本書は、題の通り新しいAI論だろう。

    作者は学生に向けて筆を執った様で、そこまで複雑な内容でもないのが、さらりと読むにはちょうどいい。気軽に触れられるAI論として、オススメの一冊。

  • レビュー省略

  • 好:汎用人工知能、ブレイン・マシン・インターフェイス、人機一体

  • AIについて哲学者が書いているのに興味を持って読んだが,素晴らしい内容だった.話題になっている将棋や囲碁のプロに勝つ特化型AIと汎用AIの違いを丁寧に説明し,将来的には後者のAIが人間を超えるシンギュラリティの可能性まで議論している.さらに人間とAIが一体化(マインド・アップロード)することで生まれるポスト・ヒューマンまで考察している.その中でキーワードとしているの「可塑性」だ.私たちの脳が状況や時間に応じて変化していくことを脳の可塑性と称しており,これが人間の根本だと述べている.楽しい議論が楽しめた.

  • 途中からついていけなくなった。
    根源的には人間とはなんなのか、欲望が根源にあるので、それを刺激し続けるといった内容。

  • 哲学的な視点で語った人工知能の本。
    第2次AIブームの時にはAIが高熱患者の体温を下げるためにどうしたらいいのかという設問に「解熱剤を投与する」という回答と「殺す」という回答を提示したらしい。そういう結果にいきつくAIってどう実装されたんだろう。ある意味、すごいような。でも、こういう話きくと、AIが暴走する未来とかちょっと怖い気もする。
    なお、映画が登場した時に上映された『ラ・シオタ駅への列車の到着』という映画では、蒸気機関車が駅に到着する映像を見て轢かれると思って逃げ出した客もいたんだとか。YouTubeで映像があったので見てみたけど、ただたんにプラットフォームにカメラがおいてあるだけの映像で、しかも白黒で、本当にそんなことがあったのか疑問に思いそうだけど、やっぱり映像なんてものがなかった時代の人にとってはそれだけ衝撃的だったということなんだろうと思う。

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著者プロフィール

ニューチャーネットワークス代表取締役。1987年上智大学卒業。旭硝子株式会社で、材料の製品開発、新製品マーティング業務などに5年間携わった後、大手コンサルティング会社に転身。30歳で経営、事業コンサルティング会社、ニューチャーネットワークスを創業。化学、製薬、住宅、半導体、電機など、激変してきた日本の主要な製造業の事業戦略、技術開発、などに関わる。日本企業の弱点でもある、トップマネジメントの意思決定プロセスの変革を推進し、同時に短期で成果を出すことで組織体質を変革する「ブレークスループロジェクト」をこれまで500プロジェクト以上で実践し、「突き抜けた人と組織」づくりに貢献。「戦略理論は一流で当たり前、クライアントの生き延びようとする才能に火をつけ、成果を出す」ことをモットーに日々コンサルテーションを進めている。主な著書に『事業戦略計画のつくりかた』(PHP研究所)、『ネットワークアライアンス戦略』(共著、日経BP)など。

「2014年 『90日で絶対目標達成するリーダーになる方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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