無理ゲー社会 (小学館新書 た 26-2)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098254002

感想・レビュー・書評

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  • 近年話題のトピック・本を手際良くストーリに仕立ててわかりやすくまとめてくれて大変助かる。

    Part1では、人間関係が希薄化し自分らしく生きることが求められるようになり、知覧の特攻隊に共感する人々の語りから初め、その起源がヒッピームーブメントにあったことを『緑色革命』に沿って紹介される。
    その後、Part2では、ヤングやサンデルに沿って、メリトクラシーが過去の門閥の貴族制度を才能の貴族制度に変えてしまったこと、メリット(知能+努力)だけで評価される世界になるとメリットを持たない多くの人たちを絶望に追い込むことが記述される。そして、人間の能力は遺伝と非共有環境によりほとんどが決定されるというどうしようもない不都合な事実を認めた上で、“よりよい社会“を構想する進化論的リベラリズムしかないのでではないかとする。
    Part3では、映画『ジョーカー』を紹介し最底辺にいて自尊心を毀損されたところから陰謀論が生まれること(映画では絶望の果てにジョーカーになる)、そして経済格差は恋愛格差にもつながることが、秋葉原事件を下敷きに描かれる。
    そしてPart4では、正規分布的な富の配分が崩壊し、フラクタル的なロングテールの世界が生まれていること、シャイデルの『暴力と不平等の人類史』を紹介し、人類史においては平等は、戦争や災害、疫病により社会秩序が破壊されることで達成されてきたことが記述され、そこまでの犠牲を払っても平等を達成すべきかどうかと投げかける。8章では、より良き社会を作るための方策として、UBI、MMT、超富裕税について検証され、UBIには誰を対象とするのか(“日本人“を厳密に定める必要がある)、MMTには有権者の財政破綻への懸念に応えきれないこと、超富裕税は超富裕者がたくさんいるアメリカでこそ成立する税制であり、日本では税収増につながらず、結果年収1千万の小金持ちへの懲罰的課税になりかねないことが示される。それらの施策よりは、テクノロジーを生かした“負の所得税“や“COST“の可能性が紹介される。
    エピローグでは、テクノロジーを加速し、人間を物理的にアップデートすることで人類が一体化する究極的なユートピア=ディストピアの可能性が示される。
    そして、そんな絶望的な社会の中でも私たちは何とか生き延びねばならないとされる。

  • 物の見方の参考にはなるが、問題点を踏まえたあるべき論をもっと展開してもらいたかった。

  •  学校教育では「自分らしく」とか「将来の夢」を重要視しがちだと思う。確かに「将来の夢」をもつことは同時に「目標」をもつことになる。「目標」があって日々の生活を送るのとそうでないのでは大きな差が生まれるだろう。そういった意味で「将来の夢」には価値がある。しかし、無理矢理「自分らしく」や「将来の夢」を強要するのは違うのかもしれないと思った。
     そもそも自由に生きることのできる世の中ではなく、知識社会であるため、学校教育にて学力を身につけなければならないのは前提にある。その上で、「自分らしく」仕事で力を発揮することもできて、満足のいく人生を送ることができる人にとってはそれで良いだろう。そこから漏れてしまった人はというと、「自分らしさ」を抑えた上で社会で生きていくことになる。そうもいかない人(「自分らしさ」を抑えた上でも社会で生きていけない、仕事がままならない人)は、どうしたら良いのか。もはや「無理ゲー社会」である。このように社会にはヒエラルキーが存在している。「平等」な社会について様々な角度から考察している1冊。

  • 著者の作品はほぼ読んでいるが、新たな気づきも得られたので非常に参考になった。最近は、今回のタイトルにもなっている「無理ゲー」な社会について斬り込んでいるという印象が強いが、当たり障りなく誰にも批判されないようなことを発さざるをえない昨今において、貴重な方だと考えている。絶望的な方向に話しをもっていっているように思える箇所もあるが、橘氏のような切り口は社会にとって必要である。

  • 冒頭、知覧の特攻隊平和会館にいくと「魂がつながる」スピリチュアルな体験ができるとあった。私たちは繋がりをもとめ繋がりに触れた時に感動し、生きている実感を持てる。
    無理ゲー社会となった今、この繋がりを得たくても得られず、生に希望が持てなくなっている人が増え、自己実現できている人との格差は開く一方である。このことはとても同意なのだが、本書ではそんな現実を生きるしかない、という結論なのか?現実への気づきは与えてくれたが、持たざる者がどう生きていけばいいかは相変わらず答えがなく暗い気持ちになった。

  • 今作品は期待していたのですが、あまり響きませんでした。

  • 「無理ゲー」という表現はなるほどと思う。考察的にも同意するところが多い。

  • 引用が多くて筆者が本当に伝えたいことが見えてこなかった。
    が、日本の行く末や各国の政治、なぜ無理ゲーなのかをマクロ視点から解説していてなるほど?となった。

  • 難しすぎて、私にはわかりませんでした❗

  • 倫理観から離れて物事を考えてみることができた。自分らしさや、心理コストによる友だちの消滅など今を生きる人達の悩みへの手がかりとなる1冊だった。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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