千羽鶴 (新潮文庫 か 1-7)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001081

感想・レビュー・書評

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  • 図書館から拝借。
    本書は『千羽鶴』とその続編『波千鳥』の二篇で成る。茶器と父の愛人に纏わる因縁が川端の美文で綴られている。死と生、愛と罪、そして贖罪とが二篇に渡り重く漂う。
    登場する女性たちが放つ異彩。その表現は時に触覚、嗅覚を刺激する。読んでいてゾクゾクした。
    ただ、続編の『波千鳥』が尻切れトンボに感じられた所為で、〝完成された作品〟とは言いきれないモヤモヤ感が残る。
    個人的に続いた川端ブームが終わった。

    ※登録していたのが電子書籍版だった為、紙の本で再登録。感想も挙げ直した。

  • 「千羽鶴」ほか4篇の連作短篇集。

    亡き父の愛人と関係を持ち、その愛人の娘にもそこはかとなく惹かれてゆく。
    なんとも背徳的な話だが、不潔な感じはしない。
    そばには必ず焼き物がある。焼き物のそばに人がある、ともいえる。

    志野焼、楽焼、唐津焼。
    焼き物にはあまり詳しくないので、ヤフーで画像検索しながら読んだ。
    綺麗な器の写真を見ていると、実物に触りたくなってくる。

    この小説はじつに触感的だ。

    菊治は太田夫人の触感を思い出す。
    「触感がよみがえって来ると言っても、彫刻的な感じではなく、音楽的な感じであった。」

    川端康成の文章も、彫刻的というよりは音楽的だなと思う。

  • 忍びないという言葉を日常で使うことは余りない。

    恋愛について、昭和という時代は忍びなさが大切であった。

    今はそれが廃れつつある。

    それが良いのか悪いのかは別にして、何故だか悲しいのは私だけだろうか。

    古き固定観念は、全て捨てて良いというものではない。

    変動させて残すべきなのだ。

    下手な恋愛の歌詞がのさばる世相では、全く相手にはされないだろうが。

    東海道線に乗りながら、読み終えて良かった。そうでなければ、浮かばれない。

  • (1998.01.29読了)(1979.11.18購入)
    内容紹介
    鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。

    ☆川端康成さんの本(既読)
    「雪国」川端康成著、新潮文庫、1947.07.16
    「伊豆の踊り子」川端康成著、新潮文庫、1950.08.20
    「眠れる美女」川端康成著、新潮文庫、1967.11.25

  • 2006. 11月ナカバ 
    ネタバレだけど意外に肉体関係が多いんですよ。でも全体的には純文学的なプラトニック感が漂ってるんですよ。その辺に理想と現実の拮抗する日常を見いだした、というのはウソです。ああ、結論を出さないのが僕好みでしたね。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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