古都 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101002439

感想・レビュー・書評

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  • 川端康成文学忌 1899.6.14 ー1972.4.15
    川端忌 又は 康成忌

    川端康成が、京都の風景・伝統行事・四季折々の木花を美しく描き、京都弁を文字で読めます。(京都弁に関しては、手が加えられているとのこと)
    生き別れとなり、全く別の人生をたどった双子の姉妹の出会と別れの物語。
    捨て子だが、大切に育てられ呉服問屋の一人娘となった千恵子。親元に残されたが、早くに両親を亡くし家も失い山仕事で生計を立てる姉・苗子。
    二人は、祇園祭で偶然に出会う。二人は心通じ互いの幸せを願う。姉苗子は、自分の境遇が妹の幸せに影を落とすことを恐れて、一人山に戻っていく。
    メインのストーリーは、姉妹の互いを思いやる心象ですが、着物産業の変化衰退が呉服問屋を家業とする千恵子の家庭事情を変えようとしていました。古都に寄せる波です。お嬢様として育てられた千恵子に、家業の経営を指南する若者が現れて、彼女がこれから変わるだろうと思わせるところです。貧しくても清らかに働き生きる姉は、おっとりと豊かに暮らしてきた妹に、違う生き方も見せたのかもしれません。
    執筆時、睡眠薬を多用されていたことは有名ですが、古都は文書がシンプルでとても読みやすい小説だと思います。

    • 1Q84O1さん
      原作も映画もみてないけど…!
      原作も映画もみてないけど…!
      2023/04/16
    • aoi-soraさん
      私も
      原作も映画も見てないけど!
      これ読んでみたい
      私も
      原作も映画も見てないけど!
      これ読んでみたい
      2023/04/16
    • おびのりさん
      川端康成だけど、サラサラの文章だから、読みやすいよ。
      川端康成だけど、サラサラの文章だから、読みやすいよ。
      2023/04/17
  • 東山魁夷の挿絵ではなく、2022年綿矢りさ解説が追加になった新版。

    美しい京の四季が豊かに描かれていて、行ってみたい場所が増え、行ったことのある場所を鮮やかに思い出させてくれる。いつか行く予定の京都旅の予習。

    平安神宮の紅しだれ桜、植物園のチュウリップ畑、祇園ばやし、丹波つぼの鈴虫、青蓮院の尼僧が薄茶の接待、もくせいの花の匂い、時代祭などなど、五感を刺激する情景で、双子の運命のはかなさがさらにひきたつよう。

    「あたしは、すぐわかるように、道ばたで、働いています。」と千恵子を待つ苗子の言葉に思わず嗚咽。
    「さいわいは短うて、さびしさは長いのとちがいまっしゃろか。」と押し入れから夜具を出す千恵子と手伝う苗子との二度はない夜の深さ。

    睡眠薬を濫用し体調不良が続いた中での執筆とは思えない。
    山口百恵主演の映画を見てみたくなった。

  • たゆやかで美しき日本語。
    後半「幻」にこだわるシーンがあったのは
    川端康成が当時ゆめうつつであったからだろうか。

    近くにいる。
    されど、交わることはない2人。

    それもまた美しいのである。

  • 美しい京都の街並みが静謐な文章によって描かれており、実際に旅をしているかのようだった。
    始めは京言葉に慣れず読みにくく感じたが、途中から全く気にならなくなり、むしろ京言葉に親しみを感じるようになる。

  •  古都は主人公千重子の実家の庭のもみじの描写から始まるのだが、その描写が良い。まだ千重子に関する情報はほとんどないのだが、その古木は執拗に千重子を秤に描写される。
     幹は千重子の腰回りよりも太い。古びてあらい膚は、青く苔むしており、千重子の初々しいからだとくらべられるものではない。幹は、千重子の腰ほどのところで、少し右によじれ、千重子の頭より高いところで、右に大きく曲がっている。
     何なんでしょう?もうこの段階で千重子に心奪われている。身長は標準よりちょっと小柄。色白で痩せ型、頭も小さい。僕が勝手に妄想した千重子像ですが皆さんはどうでしょう?もみじの古木との対比だけで勝手に若くてしなやかな女性を思い描いてしまう。
     物語は四季の京都の情景や祭、お店や町家の描写に溢れ、その度に画像や位置を検索確認した。風情はないかもしれないが、便利だ。虫籠窓とか黒木鳥居、たる源の湯豆腐桶とか言われても全く判らない。ネットがない昔の人は大変だっただろう。
     しかしさすが京都、左阿弥、大市、湯葉半、ほとんどのお店が健在だ。竹伐り会など祭事に至っては動画まで確認出来た。もちろん実際に京都に行きたくなる。半世紀以上前の作品ながら、今なお現役の京都ガイドブックだ。
     物語ももちろん現代でも面白い。若者それぞれの決断をハラハラしながら読み進んだ。永遠の拗らせ童貞、川端康成翁の面目躍如だ。

  • 原田マハの異邦人のお手本にした本ということで読んだ。たしかに、京都の季節の移ろいとともに物語が進んでいくこと、京都の自然や文化の美しさ、生き別れた姉妹、というところで共通する。
    京ことばが今よりも強くて、親子、姉妹の愛情が美しくて、おとぎ話を読んでいるかのよう。色んな京都の自然の美しさの描写があったけど、北山の杉が一番見たいなと思った。

  • 京都の呉服問屋の娘の千恵子は、祇園祭の夜、自分にそっくりの娘 苗子と出会う。幼馴染の真一やその兄の竜介、機織職人の秀雄などとの関わりなど絡ませながら、物語は進んでいきます。
    京都の言葉が飛び交いますが、文章はすっきりして美しい。
    千恵子と苗子が会う北山杉の凛とした姿がいいです。2人の今までの違う人生を思わせながら、顔はそっくりだけど、人に流されやすい千恵子と自分の考えをしっかり持っている苗子との対比がいいです。
    2023年12月2日読了。

  • 初めての川端康成。
    冒頭のもみじの木の幹に一尺ほど離れて2つのくぼみがあり、それぞれのくぼみに毎春すみれが咲く。近いようで交わることのないように見えるすみれが、千重子と苗子を表しているのだろう。
    そのあとに描写される亀壺のなかで一生を終える鈴虫たち。この亀壺も盆地の京都という本作の舞台を指しているのだろうなと思った。
    『古都』というタイトルの通り、京都の有名な寺社やお店、年中行事がふんだんに作中で描かれる。京都の地理に詳しくない人でも楽しめると思うが、詳しい人はより楽しめるはず。伝統的な建物の中に、今も残る北山の植物園が京都にとって新しい場所として出てきてスパイスを効かせているような感じだった。
    千重子と苗子の性格や人柄の違いが明瞭に書き分けられていて、その対照的な人物像が印象的だった。

  • 一文一文、一行一行が美麗で気持ち良し。
    睡眠薬で頭がイカれた狂人が書いたものとは思えない程である。
    著者本人が認める「私の異常な所産」意外なにものでもない。
    読後は甚だ清涼感に包まれ、暖かさが胸に宿っている。
    京言葉に少々難儀はするものの、双子の出会いから織り成す四季折々の情景は美しく描写され、京都民への羨望がでてくる。天才のセンスっておそろしい。

  • 読み終わってから再度はじめから読み返すと尚良い。
    綺麗な言葉やストーリーの数々が睡眠薬の裏にあったと思うと、信じられないし、その事実がこの作品をさらに儚くて美しくしていると感じた。
    解説も後書きもすごく良かった。
    京都に行きたくなる。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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