妻は忘れない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101023816

作品紹介・あらすじ

私はいずれ、夫に殺されるかもしれない。義父の弔問に訪れた前妻の佑香。夫は彼女とよりを戻したのではないだろうか。苦悩が募る中、通勤バッグにある物を発見してしまう(表題作)。日常を一本の電話が切り裂いた。大学生の息子哲生から元交際相手傷害事件について話を聞いている。刑事がそう告げたのだ(「戻り梅雨」)。平凡な家庭に潜む秘密を鮮やかに浮かび上がらせる、五篇の傑作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 5編の短編集ですが、どれも面白かった。

    それぞれ当初の思惑通りに完結することなく、少し意外な結末に終わるので、次の話が楽しみであっという間に読み終えました。

    勝手に相手が自分に悪意があると決めつけてかかってもその逆だったり、いい人だと思っていてもそうじゃなかったり、現実にもこういうことありそうで怖いと感じた本でした。

  • 自分の妻と被る内容があるか楽しみに読んだ。すべてインパクトのある内容だったけど、残念ながら妻と被るお話しは無し。一番インパクトがあったのは表題通りの「妻は忘れない」。義父が急死する。そこで別れた妻が現れた。今妻VS別れた妻。旦那は別れた妻とちょくちょく会っている模様。今妻は旦那を信じられるか?これは厳しいね、疑心暗鬼になる。結局、別れた妻が義父の子どもを妊娠した!という訴えがあり、今妻は反撃に出る!DNA鑑定せい!!さすがに今妻は強し。旦那は今妻に事前になぜ事情を説明しないのか(怒)、でも面白かった。

    • ポプラ並木さん
      こんにちは。忙しいということは必要とされていること!と思って頑張っています。毎日上から、下から蹴飛ばされてもへこたれませんよ!この話しも凄か...
      こんにちは。忙しいということは必要とされていること!と思って頑張っています。毎日上から、下から蹴飛ばされてもへこたれませんよ!この話しも凄かった。妻はとてもいい人だ!自分の見る目が合ったのか?運が良かったのか?いずれにしても感謝!妻にね。
      2021/08/24
    • アールグレイさん
      ごちそうさまです!
      ごちそうさまです!
      2021/08/24
    • ポプラ並木さん
      アハハ!
      アハハ!
      2021/08/24
  • 矢樹純『妻は忘れない』新潮文庫。

    5編収録のミステリー短編集。『夫の骨』が面白かったので、本作も読むことにした。

    5編共に女性の強かさや内に秘める恐ろしさ、表と裏の二面性を描いている。表題作の『妻は忘れない』と『戻り梅雨』の2編が面白かった。

    『妻は忘れない』。表題作。短編の中に起承転結とミステリーとがバランスよく配置され、小気味良く読める。バツイチの夫と結婚して数年後、夜の夫婦生活が途絶え、悩む妻・千絋が主人公。義父の通夜に弔問に訪れた夫の前妻の佑香。それを境に頻繁に外出するようになった夫の通勤バックに見付けたスタンガン。夫は自分を殺し、前妻とよりを戻そうとしているのか……

    『無垢なる手』。全体に漂うベタついた雰囲気の保育園のママ友の話。女性同士なら簡単に意気投合するかと思えば、背負っている家庭の事情や子供たちへの教育のこともあり、見えないところでバチバチと火花を散らすようだ。『妻は忘れない』と同じパターンの結末なのが残念。

    『裂けた繭』。サイコミステリーっぽい短編。10年間も自室に引き籠る誠司には、もう一人《みゆな》という女性の人格があった。実際に過去に起きたよく似た事件をベースに凄惨な結末が待ち受ける。

    『百舌鳥の家』。母親が手術のため入院したことから、久し振りに帰省した沙也は姉から母親が死んだら相続を放棄してほしいと告げられる。父親の死の真相と忘れていた過去が……

    『戻り梅雨』。本作の中では一番ミステリー性の高い短編。二転三転の展開が面白い。7歳年上のシングルマザーの佐山美玲との交際を諦めたはずの哲生が、美玲が自宅で頭部を殴打され、倒れているところに居合わせる。警察に参考人として拘束された哲生は美玲を襲った犯人なのか。

    本体価格590円
    ★★★★

  • クセになりそうな一冊。

    この作家さんはクセになりそうな中毒性を孕んでいると強く確信した五篇、どれも満足。

    次は?と早く読みたい心をめちゃくちゃ刺激された。 

    描かれているのはごく普通の日常を営む人達。
    だからこそすぐ隣に身を置く感覚で眺められ、また生活感溢れる描写がすんなり心に溶け込んでくる、このリアル感が半端ない。 

    随所でのセリフ、間合い、それらによって伝わってくる主人公の揺れる、掻き乱される心情。
    その心情に読み手もシンクロさせられる時間もたまらない。

    「無垢なる手」「戻り梅雨」の対照的な読後感が好き。次作も楽しみ。

  • 初読みの作家さん。

    2作目の『無垢なる手』の役員決めのシーンや、主人公が「彼女は決して悪い人ではない。彼女の言動に悪気はないのだ」と一生懸命その人の良い面を心の中で挙げてみるものの、どうしても自分の生活や精神的な領域がじわじわと侵食されていくことへの拭い切れない嫌悪感や違和感。
    これらの描写が実に見事。

    主人公は『これらの行為について、いくら私が不快に感じ、それを人に訴えたとしても「悪気はないんだから」あるいは「気にするあなたの心が狭いのよ」と反論され、同情してはもらえまい。』(113ページ)と考え、そしてきっと彼女はそういうことを実際に口にすると、それは悪口や陰口になってしまうから絶対に言わないのだろう。
    この主人公に言ってあげたい。
    その気持ち、私は心底わかるよ!と。

    という具合に、心理描写が上手い作家さんだなと思ったところで、次の3作目の『裂けた繭』では私の苦手な描写が出てきておぞましくて気持ち悪過ぎるので、そのシーンは飛ばし読み。
    でもその凄惨なシーンを飛ばしても、この話全体の異常な状況が想像できてしまう、つまり表現力が上手いということなのだろう。

    以前「読みたい」に『夫の骨』を一時期登録していたことがあるのだが、その作家さんであるらしい。
    『夫の骨』も読んでみたいけれど、本書の『裂けた繭』系の話が含まれていなければいいな。

  • 家族をテーマとしたどんでん返しミステリー、ノンシリーズの5作品の短編集。
    よくありがちな家族設定からはじまり、彼らが抱える悩みや疑念が除々に大きくなり、あれよあれよという間に小気味良いオチが待っている。『私の骨』で、してやられた感があったが今回もたっぷりやられて楽しめた。

  • 短篇集
    女性の視点で日常から起きてもおかしくない事件が次々と。主人公は一編づつ変わる。
    どんでん返しもあり、思っていた展開と違った展開になる編もあった。よくできているが、欲を言えばひねりがもう 少し欲しい。

  • “妻は忘れない”というか“女は忘れない”が集まった短編集。
    どこにでもいる普通の人々が主人公だけれど、いったいどうなるんだとドキドキさせる展開と予想できない着地点に落ち着く意外性がおもしろかった。
    「無垢なる手」のママ友のズレた感覚、「裂けた繭」の母親の正常な感情の麻痺、どれも真正面からくる直球の怖さではないが、胸のざわつきがいつまでも残るイヤな感触の怖さ。
    平穏な母と息子の日常が脆く崩壊する苦さを味わい、その分ラストの安堵感が倍増する「戻り梅雨」を終わりに持ってくる構成が巧み。

  • スッキリ3割
    イヤミス7割

    …ってところでしょうか。
    特に『裂けた繭』はグロテスクな描写があるので
    苦手な方は要注意。
    (殺人鬼フジコの衝動みたいな)

    読後感が良かったのは
    表題作の『妻は忘れない』と『戻り梅雨』だけど
    全体的に最初に勘違いさせるような描写のあと
    ひっくり返される所謂どんでん返しの趣向があり
    読んでいて楽しかった。

  • 妻は忘れない
    矢樹純さん。

    初めましの作家さん。
    日本推理作家協会賞短編部門賞受賞作家。

    短編ミステリー。

    おもしろかったー!!
    一人読みながら、
    えーっ!!マジか!!と、
    声が出ちゃった。

    おもしろかったー!!


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著者プロフィール

1976年、青森県生まれ。実妹とコンビを組み、2002年、「ビッグコミックスピリッツ増刊号」にて漫画原作者デビュー。『あいの結婚相談所』『バカレイドッグス』などの原作を担う。2012年、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』で小説家としてデビュー。2019年に上梓した短編集『夫の骨』が注目を集め、2020年に表題作で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

「2022年 『残星を抱く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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