白痴 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3504
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101024011

作品紹介・あらすじ

白痴の女と火炎の中をのがれ、「生きるための、明日の希望がないから」女を捨てていくはりあいもなく、ただ今朝も太陽の光がそそぐだろうかと考える。戦後の混乱と頽廃の世相にさまよう人々の心に強く訴えかけた表題作など、自嘲的なアウトローの生活をくりひろげながら、「堕落論」の主張を作品化し、観念的私小説を創造してデカダン派と称される著者の代表作7編を収める。

感想・レビュー・書評

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  • 戦時下の混沌とした、言いようのない不安感と破滅思想、芸術家として死にたいジレンマがそこはかとなく漂う作品。
    私の感覚としてこの時代の死生観は、殺伐としていて、生きることも死ぬこともさほど大きな価値はなく、ただ眼前の事実を嚥下するというイメージがあるが、まさにそう。まさに冷たい灰色。

    初めての坂口安吾でした。

  • いずれも退廃感あふれる作品。退廃感と言っても単なるそれではなくて、アグレッシブというか積極的退廃感なので読んでてしんどくなる。退廃というものには辟易させられると同時に、どこか弱々しいというか人間の悲しい性がそこに垣間見られてしまうものだが、この作品群にはそういったところがあまり感じられない。これは、いずれも戦争の影を引きずった時代背景ゆえなのだろうか。なんかよくわからないが、とにかく疲れさせられた。

  • ①白痴
    主人公は、死ぬかもしれないと思うことで生きていることを感じ、白痴の女を肉の塊と呼んですすんで愛することを恐れている。臆病だなー。結局死への恐怖を抱いている。でもそんなこと気にしない(気にできない?)白痴の女をやれやれ、って見下しつつもどこか癒しだったり愛情を見出してるんじゃないか。
    白痴って現代ことばに置き換えると何になるだろう。軽く言えばメンヘラかな。チキンとメンヘラの風変わりな生活。


    ②女体
    傷つく、いけない、と思っていても素子を本能的に求める谷村と、彼の全てを愛し身を尽くすことすらも愛する素子。純愛だなぁ、二人の夜の遊びは情欲のぶつけ合いでなく愛の確かめ合いのような感覚なのではなかろうか。ただ性欲の強い女は引かれがち。素子は谷村を愛することが夢であるのに、それを谷村自身は知らない。肉体のない愛に就いて考える。

    ③恋をしに行く
    肉体のない恋がしたいと言いながらも結局信子の純潔さに惹かれちゃう谷村!浮気っちゃ浮気だと思うけどそこを抜きにしたらとても情熱的な告白。いるよねー、みたされないことによってしか、みたされることができない人。自分を突き放してでもその人を愛したいと思う人。
    素子も信子も愛してたけど出力量と種類が違う。素子へは感謝、さほど強くはない愛。信子へは燃えるような肉体への賛美。前者が愛で後者が恋。愛は小さくとも長く燃え、恋は激しいが短い。

  • わたしは坂口や太宰を読むタイミングを、もはや永久に失したのかもしれない。
    「白痴」を手に取るくらいには快復してきたけど、「白痴」一編で限界。
    全編まともに読んでたら、お腹が悪くなる。
    あああ、三島は大丈夫だといいけど。

  • ハンチバックの市川沙央氏が対談でおすすめしていた。情欲や愛情、戦中前後の暮らしぶりや人間模様、生き様が新鮮だった。

  • 今まで読んできた本の中で1番文体が好きかもしれない。

  • 私は誰かを今よりも愛することができる。然し、今よりも愛されることはあり得ないという不安のためかしら。

  • 登場人物は、男女の肉体関係を、浮気を、戦争を愛する。それが正しいかどうかよりも、そういった小説のフィクション性が、現実の輪郭を際立たせること。というかなんなら「現実はフィクションを含む」ことを思い知らされる。

  • どうしても見つけよう!!と思ってないからあれだけどわーこれ刺さる!って一文とかもなかった、別に、、

  • 特に青鬼の褌を洗う女ですが
    一応奥様がモデルとされていますが
    可愛くってしょうがない感じが
    にじみ出ております
    ひねくれた溺愛が心をくすぐりました

    戦争のさなか
    馬鹿々々しさや絶望があっても
    しっかり生きている感じ
    白痴や女性に対する
    憎悪や嫌悪があっても
    それは自分の怒りの投影であり
    そのなかで 支え合う姿には
    愛を感じます

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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