- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101026619
作品紹介・あらすじ
大学で言語学やロシア語を教え、時にはチェコ語で講演もする。スラブ諸語を研究する言語学者が何より愛するのは小説である。『犬神家の一族』を英語版で楽しみ、『細雪』のロシア人一家についてあれこれ推理。スウェーデン語に胸をときめかせ、物語に描かれる大学教授の人望のなさに溜息をつく。文庫版書下ろしエッセイ「長い長い外国語の話」も収録。言葉はきっとあなたの世界を広げる翼になる。
感想・レビュー・書評
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著者の『ことばはフラフラ変わる』も同時期に図書館から借りていたが、私にはあまりにも難しくて、ほんの数ページで諦めて返却した。
内容は比較言語学だった。
本書では、シェイクスピアと安西徹雄氏に言及されていた。
私はたまたまそれも並行して読んでいたので、その偶然性に少し驚いた。
本書で「絵本作家にはうさぎ(とオバケ)を専門とする人さえいる。」(126ページ)という箇所があり微笑ましい。
それは明らかにお母様のことだから。
また、今までに読んだ書籍からも感じられていたが、黒田氏の教え子達への愛をいつも感じられる。
教え子達からも慕われているに違いない。
本書を読んで私なりの勝手な解釈なのだが、私が翻訳本を20年間くらい一向に読み進めないでいる『老人と海』は、もう諦めて手放した方がいいのだろうという結論に達した。
私がずっと翻訳本(その上、古典・名作)に対して苦手意識を持っているのは、この『老人と海』による部分が非常に大きい。
(数十年前の中学生の頃、『車輪の下』や『罪と罰』を数ページより先に進めなかったこともトラウマ)
『老人と海』に何度もチャレンジしようとしたが、あんなに薄っぺらいのに、何故か老人が漁に出るところにすら全くたどり着けずにいる。
しかしこの度、黒田氏の本書を読んでみて、私の蔵書は大正元年生まれの翻訳者によるものだから、私には合わないのかなと思った次第。
新訳なら読みやすいものもあるのかもしれない。
『クマのプーさん』で私は1章ずつ先に翻訳本を読んで次に原作を読むということを、つい先日数ヶ月かかってやっと終えたのだが、読んでいる言語も物語も黒田氏とはレベルがまるで違うけれども、やり方は近かった。
『老人と海』も、そのように読むつもりで原書も持っているのだが、何しろ翻訳本の方が進まないので原書は全くの手付かずのままだ。
翻訳本は見切りをつけ断捨離して、原書にとりかかってみようと思う。
ただ、この期に及んで初めてあらすじを検索してみたのだが、内容にどうにも興味がわかないので挫折必至かもしれない。
昨夜、デンマーク語の映画を観た。
冒頭はエストニア語だったらしい。
デンマーク語はドイツ語っぽい気がした。
これまた黒田氏の理解力の足元にも及ばないながらも、馴染みのない外国語を聞いているだけで楽しかった。
本書を読んで、そのようなことをつらつらと考えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
祝文庫化
黒田龍之助 『物語を忘れた外国語』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/102661/ -
語学を勉強している、もしくはした経験があり、中級者以上に向けた本。
留学以外の方法で如何にしてスキルアップ出来るか?それは〝物語〟を読むことではないか…という内容。
全てを理解しなくても何となく予想出来たり、邦訳と読み比べをしたり。言語学習で物語を読んでみようと考えたことがなかったので、目から鱗だった。
ただあくまでも学習者に向けた本で、多数の読者に向けた本ではないと感じた。
面白く読めた章もあったが、視点がマニアックすぎて共感出来ない所もあった。
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楽しい本。
物語には言語がある。文化がある。人がいる。
物語に触れれば、いろんなことがわかる。感じられる。原著であればなおさら、なのだろう。
私は日本語しかできないので、夢みたいな話であるけど。。
しかしどれだけの読書量に裏打ちされた本なんだ。。恐るべし。自分もその物語たちに少し触れられたような気がして楽しかった。
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黒田さんが本の中でツラツラと綴って紹介してくれているいろんな物語や映像を読んでみたい、見てみたいと思った。章がいくつもに分かれていて読み進めやすかった。
黒田さんの外国語との向き合い方や考え方、捉え方などが魅力的。
これから、書籍が映像化したものは、同じ内容だったとしても映像は映像として、書籍は書籍として違う楽しみ方をしたいと思った。映像でないと分からない情景や音があるだろうし、逆に、文字じゃないと想像できない風景もあると思った。
あと、日本の名作の外国語訳とかも、言語の違いがあるからこそ同じものでも違う味が出るのかなと思ってわくわくした。 -
ふと目についたので、なにげなく購入した本。思いのほか、引き込まれた。黒田という人のことは知らなったのだが、言語学の感覚で世界のあちこちを感じる、という味わいの軽妙なエッセイで、楽しい読書であった。いろいろな国の映画、いろいろな国の文学が、探す気になりさえすれば、手に届くところにあるのだな、と気づく。文法も何もまったく知らない言語の原書でも、対訳さえあれば、訳をちらちら見ながらゆっくりと読めば、少しわかるような気になってくる、ともある。
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エッセイをほとんど読まないが、本書は非常に魅力的で面白く読めた。作者の捻くれた性格を不快に思わせない「物語愛」を強く感じられ、外国語に対する合理的な考え方にシンパシーを覚えた。読みたい海外文学もたくさんできた!
p23 常に新しいものをおいかけるばかりが読書ではない
p67 その土地に根差した小説が好きである。歴史背景や文化事情が濃厚に反映していて、外国人がただ読んだだけでは容易に理解できない物語。
p155 言語感覚とは実に微妙なものなのだ。機械翻訳の技術がどんなに進んでも、こういった感覚まで納得させることはおそらく不可能だろう。 -
英語で挫折しているので、語学の達人と言われるような人の書く文章は敬遠してきたのだが、著者が外国語習得の良き案内役としていい文章を書くらしいとの評判を聞いていたので、ちょうど文庫化された本書を読んでみた。
外国語学習のことももちろん書かれているのだが、著者の方法は実に真っ当なもので、分からないなりに、その外国語の本を読んでみる、映像化されたものがあればそれを見てからでも良いし、順序はお好みで良い。著者は特に物語を読むことを推奨する。
本書はそのような各国語と各国語で書かれた小説や戯曲を素材にして、著者の経験や思いを平明な文章で綴っている。
あまりメジャーとは言えないスラブ語圏やアジアに関する話も多く取り上げられており、関心を呼び覚まされた。 -
「外国語の面白さ、それを学ぶ楽しさを語らせたら並ぶ者がないと言われる」著者のエッセイ。
さらっと楽しく読みながらも、時折なぜ外国語を学ぶのかということを突きつけられます。
第五章では翻訳小説の楽しみ方を言葉にしてくれていて嬉しい。機械翻訳が進んでも、物語は人の手で悩みながら訳してほしいと思います。
外国語で本を読むことは言語学習に効果があるのか。その答えは言語とどう付き合うかにより変わってくるようです。