商う狼 (新潮文庫 な 107-2)

著者 :
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101028828

作品紹介・あらすじ

江戸の金の流れを握る。それはお上を動かす力になる――。甲斐の農家から出て江戸で名を挙げた茂十郎は、永代橋の崩落事故で妻子を失ってしまう。だが悲嘆を糧に、茂十郎は立ち上がる。大胆不敵な資金集め、流通の構造改革、旧弊の刷新。すべては江戸の繁栄のために――。既存の枠を超えた発想と、強引なまでの辣腕で「狼」と畏怖され、歴史の闇に消えた謎の経済人を描く。新田次郎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 木挽町のあだ討ち文庫化待ち、図書館にある永井さん全部読みます、4作目。
    ロカさんにお勧めいただいた 江戸商人・杉本茂十郎。江戸の経済の大きな流れを作り上げた一商人の活躍です。
    残してある山川の日本史の教科書には、取り上げられていません。私も全く知らない人物伝。
    農家に生まれた茂十郎は、江戸飛脚問屋の養子となり、十組問屋の紛争解決に助力する。そんな中、永代橋の陥落事故で息子を失う。そこから 江戸の橋の堅実な建設運営を目指していく。
    莫大な費用の捻出のため数々の名策を立てて江戸中期にはびこる慣例を崩していく。
    菱垣廻船・飛脚・十組問屋と江戸の流通の中心にいて 狼と例えられるほど、強引なところはあったが、大きな経済の流れを見据えていた。
    最後は 武士の世界に沈められた。
    今まで読んだ作品より時代小説感が充実していたと思う。

    • ロカさん
      おびのりさん、こんばんは。
      実は永井先生の作品で一番好きです。
      楽しんでいただけたようで、嬉しいです。
      おびのりさん、こんばんは。
      実は永井先生の作品で一番好きです。
      楽しんでいただけたようで、嬉しいです。
      2024/02/24
    • おびのりさん
      ロカさん、ありがとうございました。
      今まで読んだ永井さんとは、一味違いました。
      こんな作品も書けるんですね。
      そして、続けて永井作品読んでい...
      ロカさん、ありがとうございました。
      今まで読んだ永井さんとは、一味違いました。
      こんな作品も書けるんですね。
      そして、続けて永井作品読んでいきます。
      よろしく、どうぞ。
      2024/02/25
  • 将軍家斉の時代に生きた商人、杉本茂十郎の半生。すぐそばで見ていた堤弥三郎の目線から語られる。
    型破りな茂十郎に、おかたい弥三郎はいつしか魅力を感じ、彼の為すことがどのような結果に繋がるのか、見届けずにはおれないようになっていく。ただ、その根底にあるのは妻子の死――もしかしたら避けられたかもしれない――という大きな悲しみと、それを無にしないという想い。全くの私利私欲とは違う原動力で突き進んでいるから、時折いさめつつも弥三郎は彼の肩をもってしまうのだろう。

    親子とも友情とも言えそうな2人のやり取りは常に真剣だ。
    茂十郎は弥三郎の前で、商人という存在や金の流れについて幾度となく自分の考えを熱く語る。お上というものが大きすぎてどうにもならないと感じながら、なお諦めず策を繰り出そうとする姿に、現代をも思う。
    「商人が商いをして金が正しく世の中を回っていれば、暮らし向きは豊かになり、商人は天下に資する役目を担う」
    「金をどう使うか。そこを間違えればまた人が死ぬ。――どうして金を無為に使うことしかできないお上を敬うことが出来るんです。」

    出る杭は打たれろとばかりに"領分を弁えろ"と諭され続け、ついには江戸を追われた茂十郎。もし、ずっと江戸市中で力をふるっていたら――江戸の経済状況は違っていたかも――老境の弥三郎がそう述懐するところは、お上という絶対権力への諦めもにじみ出ていて、ほろ苦い。

  • 久々に面白い時代小説に出会った。
    江戸商人が主人公。「いざとなればね、金は刀よりも強いんですよ」

  •  江戸の商業に革命を起こし途上で消えた男、杉本茂十郎。想像以上に面白く、あっという間に読み終えてしまった。私自身、ものを作らない業界で働いている関係で、商業・金融の果たす「繋ぎ」の価値について考えさせられた。
     栄光と没落、後半は陰ってばかりなのにどこか爽やかなのが印象的。茂十郎が残した遺産は多々あれど、その後の商業界は狐狸が跋扈し混沌としていくという点が幕府への皮肉としてそう思わせるのかもしれない。初めて作者だったが、人となりや心情を描くのが非常に上手だと感じた。一方で彼女らしさを感じられなかったので、他の作品で見つけられることを期待したい。

  • 202210/序盤、自分には読みにくいかなと思いつつ気づいたら一気に読み進めてた!茂十郎をはじめ登場人物達の人となりや言動描写もうまくて入り込んで楽しめた。現代に通じるところも多々あり、見事さと哀しさに圧倒された。

  • 良書。
    作者、映画やドラマの脚本が書けそう。上手い。
    江戸時代って、三方よしの人才が数多くいた。今の政治家、実業家に見習ってほしい。

  • 著者の直木賞受賞がらみで読んだが、さすがの出来映え、勉強になりました‼

  • 127

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、「絡繰り心中」で第11回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2021年、『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で第40回新田次郎文学賞、第10回本屋が選ぶ時代小説大賞、第3回細谷賞を受賞。他に『大奥づとめ』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『帝都東京華族少女』『横濱王』『広岡浅子という生き方』などがある。

「2023年 『とわの文様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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