未来をつくる言葉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042411

作品紹介・あらすじ

哲学、デザイン、アート、情報学と、自由に越境してきた気鋭の研究者が、娘の出産に立ち会った。そのとき自分の死が「予祝」された気がした。この感覚は一体何なのか。その瞬間、豊かな思索が広がっていく。わたしたちは生まれ落ちたあと、世界とどのように関係をむすぶのだろう――。東京発、フランスを経由してモンゴルへ、人工知能から糠床まで。未知なる土地を旅するように思考した軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • コミュニケーションツールとしての言語、
    自分にとっての環世界を形成するための言語、
    波打ち際を彷徨うための言語。

    境界線を明確にすることで、自己を知り
    境界線を曖昧にすることで、他者を受け容れる

    対話、共話、ダイアローグ、シンローグ。
    それらは何が正解というより、
    どのツールがどの場面で自分と他者を助けるか、
    によるもの。

    人文学的でありながら、とても実践的な素敵な一冊。
    まだ、感想をまとめられる程に
    全ては咀嚼できていないかも。
    明日はご本人と康太郎さんのトークショー、楽しみでならない。 

  • 読み解すというよりは、流し感じるといった読書の時間だった。

    「自分の弱さが他者をエンパワーしうる」

    この言葉で、私は自分の足下をもう一度見直せた。
    感謝したい。
    誰かが傷付けられることを当然としない社会、わたしの、ではなく、「わたしたちの」ウェルビーイングを目指すこと。

    そのキッカケは、きっと、わたしという、一人の存在からだ。

    第三章で触れられた弁証法(正反合)と、守破離の関係について。
    分かること、分からせることの、質感の違いがそこにあるように思う。

    それは、第八章、共話と対話における、日本人の相づちの多さにも関係しているのでは。
    身体的な結びつき、学びは、言語化できない何を表しているんだろう。

    この本が「論理国語」にも「文学国語」にも採られているという面白さに、共感する。

  • 人間関係で悩んでいる方、コミュニケーションが苦手な方、新しい考え方が見つかるかもしれません。
    人は一人ひとり違うのは尊くて。でも違いが争いのもとにもなる悲しい現実。
    一読すると、苦手な私でもコミュニケーションって素敵だなと思いました。
    コミュニケーションに新たな意味や価値を見出せます。また一つ学びました。

  • ドミニク・チェンさんの康太郎性を感じ、渡邉康太郎さんのドミニク性も感じた。

    集合知?文脈の共有?おもしろ。

    とても興味深く、多数の他分野・他書籍への好奇心が湧く素敵な本。

  • 自己と他者の関係、生命とは、生命の意志とは、その継承とは・・・などをテーマに、この世界に存在する多様な様式、文化、芸術、テクノロジーなどのイメージを触媒に発火した著者の思念のゆらぎを、あえて整理するでもなく、流動するままに提示しているように見える。捉え方によっては、カオスであることそれ自体を思想の形相としているようでもあるし、すべからく読み手に委ねるのが正しいコミュニケーションであると確信しているようにも見える。

  • 言葉は「わかりあう」ために用いられるだけでなく、「わかりあえないこと」をつなぐ力を持っていて、人は言葉によって未知の領域に踏み出し、新たな「世界」と「自分」を作り出していくことができる。そうした言葉の可能性を説く、希望の書です。

  • 美術作品のようなとても美しい本。

    コミュニケーションはわかりあえなさを互いに受け止め、なお共に在ることを受け入れる技法。

  • コミュニケーションについて深く考えさせられます。自律した人の間で、分かり合えないままでも共にあり、伝えよう、理解しようとする中で生成発展するそんなイメージが浮かびました。

  • 本書の中で「共感覚」と言う言葉を私は初めて知った。

    「共感覚」は音に色を感じたり、視覚で匂いが引き起こされたりするような、異なる感覚同士が関連する心理現象のことを言うようだ。

    少し本書からはそれるが、今学んでいる「声」に関しても声に色をつけ、視覚で捉えているのは「共感覚」なのか!とハッとさせられた。

    そんな心理現象があることを知らずにそのことを学んでいたと分かってまた1つ学びの解像度が上がり嬉しさを感じた。

    著者の父親が多言語を話す方だったため様々な言語に触れるシーンが著者も多かったと思う。
    その中でフランス語と日本語の違いに関して非常に面白く、あまり意味のないアルファベットで紡ぐ文字と成り立ちから意味がある漢字も含む日本語では言葉の捉え方が違う。
    私はこの漢字や言葉の語源を知ることが好きで、それを知ることでよりその言葉を好きになる。

    フランス語にそのようなものがないわけではないが、著者は様々な言語に触れる中で無機質に感じるアルファベットにも人格を伴うような共感覚を持っていった事は頷けた。

    ====
    ジャンル:グローバル リベラルアーツ
    出版社:新潮社
    定価:605円(税込)
    出版日:2022年09月01日

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    ドミニク・チェン
    1981年生まれ。博士(学際情報学)。NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現コモンスフィア)理事、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文化構想学部准教授。一貫してテクノロジーと人間の関係性を研究している。著書に『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』(フィルムアート社)、『謎床』(晶文社、松岡正剛氏との共著)、監訳書に『ウェルビーイングの設計論』(ビー・エヌ・エヌ新社)など多数。

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    flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/2338

  • 初っ端からこどもの誕生により自らの死を予祝するという、哲学的な言葉から始まり、不思議な感覚になった。
    人はみな違うのだからわかり合えなくて当たり前と思えたら、コミュニケーションのハードルが少しだけ下がって、肩の力を抜くことが出来そうだ。
    あいちトリエンナーレ2019で、タイプトレースは鑑賞していたが、著者による作品であったとは…気付かずに本を手に取っていた。

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著者プロフィール

情報学研究者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドミニク・チェンの作品

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