禁色 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050430

感想・レビュー・書評

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  • 禁色に☆5の評価をしたからと、ひまわり高級化粧箱入めろんさん、私の本棚をそんな目で見ても、禁色の事は、嫌いにならないでくださいっ。
    十月の私の課題図書であったような本作品。たっぷり一月かけて堪能しました。全編、連載物でありながら、美文・寂文(調べないで下さい。調子にのって造語しました。)であり、煌めくボキャブラリーの広さと濃厚さ。

    老作家・檜俊輔は、作家としての名声もあり、知識人としての地位もある。加えて、自由になる資金も持ち合わせていた。無いものは、美貌。
    彼は、大理石の肉でできたような(作中表現のまま。その他、この青年の賛美の表現は小説を手に取ってご確認ください。)美貌の青年、南悠一と知り合う。そして、青年は老作家に女性を愛せない苦悩を告白する。
    老作家は、自分の青年期からの醜貌の為、数度、女性に裏切られてきた。その復讐を、青年を利用して果たそうと密約を交わす。
    檜と出会うまで、その性向から孤独であった悠一は、勧められて、愛する事のできない女性と結婚する。そして、自ら、その同族世界に足を運ぶようになる。作家が、復讐を企てた女性達はもちろん、その良人や、彼の友人達、当然その世界の人々、全て彼の美貌に支配されていく。
    資金ある物は、その力で、我が物にしようとする。美しき女達は、決して愛されずとも、良き理解者であろうとする。
    どうしたらこの甘美さが伝わるかと思っていたのだけれど、後書の後書きで、フランス文学者という森井さんが「気絶するほど悩ましい」と評していた。
    彼は、学生服時代、読んで途中で嘔吐したらしいです。この作品を擁護する訳ではありませんが(もちろん、ありますが)現代のBLコミックの様な表現はございません。ただ、彼らの隠しても隠しきれない視線の絡み、理解しあった時の刹那の心情が、文学として表現されているだけです。

    果たして、檜は、自分の策の中、悠一を愛してしまう。32章は、檜俊輔による「檜俊輔論」となるのだが、この章だけで、文学論的短編となりそうなのだ。彼の作品として、短い作中作が何編か投入されていく。どれも素晴らしい小品ですが、「仙人修行」という作品が秀逸。
    最後は、大団円というタイトルで、二人の別れが書かれている。檜は、存在として悠一を愛してしまった。愛されているという意識は、残酷さを伴う。檜は、真っ当なクズを世に送り出してしまったのかもしれない。
    三島は、檜と悠一に、自分に存在する複数の側面を表現したのか。彼の求める美しさの象徴なのか。
    孤島に持っていくなら、この一冊。(現時点)

    • おびのりさん
      作家は、川端康成モデルかなと思ったけどやっぱり違うなとか。
      ハーフ系の美少年出てくると、三輪さん思い出したり。
      私も知識不足だったけど、昔か...
      作家は、川端康成モデルかなと思ったけどやっぱり違うなとか。
      ハーフ系の美少年出てくると、三輪さん思い出したり。
      私も知識不足だったけど、昔から、いろいろあったんだねえ。
      メロリン、もうレビューも避けそうだから、あおりました。
      2022/11/07
    • ひまわりめろんさん
      マジでこのレビューはスルーしてました
      でも土瓶さんが余計なことを…
      (よっけいな〜こ〜と〜など〜なっいっよっね〜♪)

      うーん、そうねぇ〜
      ...
      マジでこのレビューはスルーしてました
      でも土瓶さんが余計なことを…
      (よっけいな〜こ〜と〜など〜なっいっよっね〜♪)

      うーん、そうねぇ〜
      ゆっきーね〜
      うーん、特にないかな〜
      わりと一生懸命考えたんだけど特にないかな〜w
      2022/11/08
    • おびのりさん
      弱点を見つけた気分
      弱点を見つけた気分
      2022/11/08
  • 今作が発表されたのが1951〜1953年。作品の持つ力が未だ衰えていない。ただそれはそれで社会的に問題な気もする‥‥

  •  面白いです。

    かなり読むのに時間がかかりました。

    文字と言うか文章のリズムが今と違うので中々読むリズムに乗れなくて。

     それでもやっぱりいいです。

     三島作品好きです。

  • 図書館本
    本屋芸人の紹介で読みたいと思い、図書館で借りた。読み終わるまで4週間。もしかすると、期限が無かったら読みきることを難しかったかもしれない。内容は、裏表紙の紹介に女を愛さぬことで、私の仇をうってくれ。という内容だが、読んでみるとそれだけでなく、なかなかに長かった。三島由紀夫の考えを記した所が何ヵ所も出てきて、難しい。
    まぁ適当に流し読みしつつ、話の流れは面白い。この題材で小説を描くということは、当時は新しかったのではないだろうか。また、今よりもタブーだったのではないか。そう考えると、難しい所はあるが面白い内容だった。
    解説は野口武彦さんと森井良さん。解説があって良かった。理解が深まり、昔の作品への抵抗感も薄れる内容だった。
    読書メモあり。

  • 『何故君はそんなに美しい?』...美とは到達できない此岸なのだ


    これは三島作品の中でも指折りの傑作だと思います。改めて、彼の嗜好が自分のそれと重複するのを感謝しながら読みました。
    こんなに美しく官能的な作品ない...これを書いたのが26歳なの、やばすぎない?

  • やっぱり三島由紀夫の作品は良い。
    コミカルな面白さも兼ね備えた本書だが、根底には『仮面の告白』でも繰り返し出てきた作者のギリシャ彫刻や男色への考え方が強く感じられる。

  • とにかく大変な作品だったかも。
    大変というのは、読み進めていくにはあまりに不快だから。
    現代は差別と言われかねないのだろうけど、この手の人たちに理解はない。吐き気しか催さない。
    三島文学は充分感じたけど、題材にこれしかなかったのかなぁ。悪趣味としか言いようがない。

  • 今まで読んだ小説の中で一番難しかった。いつか、読みこなせるようになりたい。ただ、文体の美しさは今の私にも分かる。格調高く、読み応え抜群。登場人物それぞれの思惑の交錯など、あんなにも複雑に描き切れるものなのか。尋常ではない。

  • 「ドリアン・グレイの肖像」を下敷きにしていると聞いたので読んでみた。「ドリアン」と同じく、男性の見た目の美しさに固執する人々と男色の話であるが、「ドリアン」が男色には明らかには言及していないのに対し、こちらは露悪的なまでに男色描写が続いてちょっと読むのがつらかった。19世紀には書けなかったことが、今(1950年代)はここまで書ける!ってことなのだろうか。いやでもほんと読むのがしんどかったです。
    あと、「ドリアン」では美しい主人公は一度は婚約するものの結婚には至らないのだが、こちらは結婚して子どもまで生まれている。ミソジニー全開なのによくもまあと驚いた。これは三島の周囲のリアルだったのだろうと思った。
    それにしても、ホモセクシュアルの一番危険な点は年少の同性の同意をどのように得るのかという点だとしみじみ感じた。知識や考えの浅い立場・弱い立場の人間に対して、暴力以外のいろんな力関係によって本人でさえ無理強いされていると気づかないまま行為を迫る場面が本書の中だけでも数限りなく出てくる。衆道的に教え導くというテイであるが、それは最近もなくなったことではなく、それどころか某J事務所のことではたいへん問題になっているではないですか。
    性的マイノリティやルッキズムやミソジニーということが50年前、100年前はどういうふうに捉えられていたのかという目で読むこともできる興味深い読書ではあった。でも疲れた〜。

  • 「禁色」は三島が二十代後期書いた長編小説。
    「仮面の告白」と並び同性愛小説をベースに構築されてるが、途中「仮面の告白」よりグロさが際立ちちょっと困ったが、そこは三島…一挙に読んでしまった。これは三島の作品の中でかなり上位に位置する名作ではないか…⁈その後の三島作品の方向性を決める指針になったような小説と思われる。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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