- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101051024
感想・レビュー・書評
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戦後の混沌と荒廃の中、生きていることの喜びと尊い自由を自覚することに全てを捧げた生涯。
とても難解な主題に、読んでいる間にも『一体、何を言わんとしているのか』を何度も見失いそうになりました。
肺結核と重度の心臓病に冒された青年・砂川安太。いつ死を迎えるとも分からない病状を宣告された帰り道の橋の上、安太は自分のすぐ隣に人間がいることに気づき、たったそれだけのことにいたく感動をします。
死に対して安太が抱いたイメージは『恐怖とも歓喜ともつかない戦慄』であり、ひたすらに怯え、恐怖するものではなかったのです。
戦後の復興の中に沸き立つ社会主義が勢力を伸ばしていくのを背景に、安太もまた革命に飲み込まれていくのですが…。
友人の銀次郎とその妹の登美子、下宿屋の主・おかね。彼らと過ごすなかに安太は、革命と自由の意味を見い出すのです。
私が本作を読み感じたのは、有り体に言うところの『ポジティブな生き方』の行く先のこと。安太の生き方が果てしなく前向きであったからこそ、その結果として、虚無の海に浮かぶ必然系に不可能を可能へと変える術を見つけられたように思うのです。
安太が銀次郎に対して言ったように、私も安太に言ってやりたいと思いました。
『あなたは一つの立派な永遠なる序章だ』ったと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
復刻版で手に入れた!同じようなニュアンスで数ある椎名作品の中、特に優しくて強い、今作品の主人公が好きです。他同様、タイトルがセンスないですが、内容と合わせると、なにか深みを感じます。武士道に似た精神に、生きてくことの真実。よくも悪くも「向き合う」ことが大事なのでしょう。
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日本文学の中で一番好き。自分の死が確実になって初めて積極的に生きだす主人公。ニヒリズムの向うにあるもの。