予定日はジミー・ペイジ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.89
  • (116)
  • (158)
  • (121)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 1147
感想 : 179
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058276

作品紹介・あらすじ

流れ星を見つけたとき、あ、できたかもと思った。初めての妊娠。でも、「私、うれしくないかもしれない」。お腹の生命も大事だけど、生活って簡単に変えられないよ。ひとり驚喜する夫さんちゃんを尻目に、頼りなくも愛おしい妊婦マキの奮闘が始まる。目指すは、天才ロック・ギタリストの誕生日と同じ出産予定日!笑えて、泣けるマタニティ小説。著者描き下ろしイラスト多数収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • つい先日読んだ『自分で名付ける』とは全く違う感じ方。やはりエッセイと小説という違いはあれど。
    『自分で名付ける』は今の子育てしづらい点やジェンダー感などまで、感じるところを赤裸々に書かれていて、これからの子育て、気合い入れねば。と感じた。
    この『予定日はジミー・ペイジ』では、子供が生まれるまでの将来の期待感を強調されているためか、そうか、未来はこんなにも希望に溢れてるんだ、的な、ぼんやりと幸せを感じるような読後感だった。
    下記の表現なんかは特に素敵だし共感した。

    「時間ってのはいつもいつも流れているんだけど、子ども産んだとたん、それが目に見えるようになる」
    「そうか、ここには時間が詰まってるのか」突き出たおなかを神妙にさすると、Kは笑った。

  • 自分は男だし、結婚もしてなくて子どももいない。妊婦さんの身体的に感じるところや思うところも、正確には理解して共感することはできない。ただ、妊婦さんの日記を垣間見て、ちょっとはわかったかも?
    読みやすくて、読んだ後、なんかいい気持ちになった。
    全然感想になってないな…

  • 温かくて読みやすい一冊。のんびり読書したいときに良い。
    ただ、登場人物に少し違和感をおぼえてしまった。久しぶりに角田光代作品を読んだからか(私自身が社会に出て温かみを失ってしまった?)、主人公と自分の状況が近すぎたからか(妊娠中なのにレバーや鰻を食べているのが気になる)、はたまた少し古い作品だからか(女性の就労を取り巻く環境や空気感はこの10年で激変したと思う)。

    あと、角田さんの絵はとても素敵だけど、挿絵としての挿入箇所や挿入の仕方はこれで合っているのか。私の読み方が悪いのか、読みにくかったし、絵も楽しみにくかった。

  • すごく面白かった
    妊娠したことがないから共感はできなかったけど、楽しく読めた
    ホルモンバランスで怒ったり泣いたりするけど、自分の生理前とかとは違いマキちゃんは可愛げがあっていいなと思った

  • 日記風で読みやすく、作中の時間の経過とともに私も妊婦の気持ちになれる気がした。ただし見た夢の話が多いため、リアルな実体験・あるあるエピソードというよりかは心情面が大半を占める。
    不安や理不尽さ、怒りの反面、世界が新鮮に見えてくる感覚や誕生日・名前の意味、過去の恋人への感情の変化。これで作者が出産していないというのだからすごい。その上でラストは「これはあくまで小説」と言いたいメッセージ性を感じた。

  • 3.8

  • 妊娠したので、作家が書いた妊娠エッセイが読みたくなり。戸惑いや父親に対する感情など共感できるところが多かった。毎日の食事や海の描写が好きでした。最後までエッセイだと思っていたので笑ったり泣いたりしながら読んでいたが、あとがきで小説だったことを知り驚く。小説家ってほんとうにすごい。読めて良かった。

  • 喜びより戸惑いが勝ってしまい妊娠を上手く受け止められない主人公が、出産までに自分なりに受け入れていく様子が日記形式で丁寧に綴られている。

    自分の母性に自信が持てなかったり、
    そのことで罪悪感を感じたり、
    なんとなく孤独を感じたり、
    夫の気持ちとのギャップがあったり、
    急に独身時代が懐かしくなったり、
    これが2人での最後かーとしみじみ思ったり、
    お腹にずっといてほしい気持ちと、会いたい気持ちとがあったり、
    やっぱり孤独じゃないんだなって気付いたり、、

    十月十日って改めて、身体的にも気持ち的にも、めまぐるしい日々で、不思議な体験だなと思った。

  • 物語のようなエッセイのような、軽めの文体でスイスイ読める。ページが厚く、挿絵も多くて、物語とエッセイと絵本の間みたいな感じ。自分の妊娠体験と被ったり被らなかったりだけど、こういう感情って発信されることがないから、内心安心して心の支えになる人が沢山いるとおもう。不覚にもちょっと泣いてしまった。妊婦になる前もなったあとも、産んだ後でも。寄り添ってくれる物語

  • 非常によかった。
    わたしは妊娠・出産を経験していないのですが、これを読んだら経験してみたくなりました。
    と、書くと、妊娠や出産を推奨している本のように思うのですが、そうじゃない。(こともないんだけれど)

    「妊娠ってすばらしいよね」「子どもを産むのって幸せだよね」
    それって、確かにそうなんだけど、それが全てではない。
    だけど、世の中には不妊で悩む人もいるし、「せっかく授かったのに」「悩んでいる人もいるのに贅沢」なんて言われてしまうと、「産みたくない」とか、「子どもができて嬉しくない」とか、言いづらい雰囲気がある。
    もちろん命は大切だし、堕胎も気軽に行っていい行為だとは思わない。
    だけど、それも一つの選択肢なんだと、自分の善悪の価値基準を他の人に押し付けてはいけないんだと、そう改めて思います。

    妊娠や出産に対する考えがマイノリティで、それに引け目を感じている人を肯定してくれるような本でした。

全179件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×