麦ふみクーツェ (新潮文庫)

  • 新潮社
3.87
  • (349)
  • (302)
  • (416)
  • (33)
  • (4)
本棚登録 : 2959
感想 : 300
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069227

作品紹介・あらすじ

音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。-音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。坪田譲治文学賞受賞の傑作長篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人生相談で、いしいしんじさんの回答を見て、素敵な人だなぁと思ったのでこちらを手にとってみました。
    ですが、わたしにはまだ早かったのかもしれない…
    文章はとても綺麗でわくわくします。
    文の節々にどこか少年を感じます。

  • 読むのに時間がかかりましたが、読み終わってしまうのが惜しいような、長編大作でした。
    ファンタジーが好きなので私にはとても面白かったです。どんな本とも似ていなくて、独特でしたし、登場人物が、際立っていました。

  • 混沌と秩序、呪いと祝福、グローバルとローカル。
    相反するものと出会い、葛藤することで世界は動いていく。

  • 一気に読み切ってしまいました。同じリズムで流れていても、音楽は先へ先へと進んでゆきます。変わらないことを抱えながら(あるいは信じながら)、自分に出来ることを黙々と続けることが大切なんだなぁ、と改めて気づきました。
    僕たちはみんな「クーツェ」なんですね。

  • #麦ふみのいいもわるいも同じ音風吹く大工と指揮者と素数

  • この世で出会う、たくさんの出来事。
    自分という人生を初めて生きる僕たちは、翻弄され、右往左往し、コテンパにされることも度々だ。

    自分て何者なんだろうとか、生きるってどういうことなんだろうとか、そんな、答えのなさそうな問いかけにについて思い悩んだりして、途方にくれて、くたびれることも数知れない。

    でも、そんなこんなも引っ括めて、生きるっていうことなんだって思う。

    色んなことに直面して、少しづつ自分がいったい何者なのかってわかってくる。
    自分が生きるっていうことが何なのかが見えてくる。
    自分の周りに起こることをちゃんと受け止めること。
    正しいとか間違ってるとかじゃなくて、ありのままを受け止めるってこと。
    それが大事そうだって、やっと最近分かるようになってきた。


    麦ふみとは、霜が降りるような寒い冬の日に、霜で盛り上がった土ごと若苗の麦をふみつぶすこと。そうすることで麦が力強くよく育つそうです。そうしないと、麦が弱くなって実りもすくなくなってしまうそうです。いい苗も悪い苗もなく同じようにふみつぶす。つぶれてしまってダメになった麦も畑の肥料になって役立つそうです。
    それが麦ふみ。農家の大切な仕事です。

    とても素敵な物語です。

  • とてもやさしい、希望に満ちたお話だと思いました。読み終わった今、自分の「へんてこさ」に誇りを持って生きていこう、と自然に前を向けそうです。

    昔、知り合いが、この本は「自分にとって一番大事な本だ」と言っていたのがずっと心に残っています。読んでみて、その理由が少しわかるような気がしました。

  • 音楽に取りつかれた祖父と素数に取りつかれた父と、ねこの鳴きまねが上手い「ぼく」が3人で慎ましく暮らすというあらすじから、ほのぼのした童話を連想した。でもそうではなかった。悲劇が次々に降りかかり、それでも希望をつかもうとする話だった。この世に起きる悲劇も喜劇も些細な出来事も、実はどこかでつながっている。へんてこな存在は目立つから、真っ先に火の粉が降りかかる。だから一人でも生きて行けるように、技を磨かなければならない。抽象的で哲学的な、生きることに少し疲れた人を優しく受け入れてくれるような本だった。

  • いしいしんじさん読むの4つ目。「トリツカレ男」「プラネタリウムのふたご」「ぶらんこ乗り」。
    どれも世界観と文章がとても好きなんだけど、これ読んで確信した。ストーリーが自由に進んでいくようで、実はものすごーーーく緻密に構成されてるんだよ。印象的な途中のエピソードや何気ない小道具が後からバチバチバチって嵌っていって物語の中で意味を持ってくる。それが凄いの。鳥肌。
    いやオムレツのエピソードに不意打ちされて涙がぶわってなりましたよ…あんなのむりだろ…うう…

    クライマックスで、すべてがつながってひとつの音楽を奏でる、暗闇の中での観客たちがそれぞれの音を鳴らす、ホッチキスやはさみやおもちゃの合奏。生きている人たちのたてる雑多な音が音楽になる。
    このシーンを読んだ後ふと本から顔あげると、窓の外から聞こえてくる電車の音とか、家族の足音とか、空を行くヘリコプターの音とか、そういう世界の音がなにもかも愛おしくなるような気がした。

    そしてねこのおかあさんの話のあとの一文。これがこのどこまでもやさしい物語におけるもうひとつの核心でもある気がする。
    「たったひとつの『ひどい音』、一瞬の音とそのこだまが、あらゆる吹奏楽の音色、それまで過ごした生活すべての彩りを、真っ暗に塗り替えてしまうってことが、この世ではまちがいなく起こり得るのだ」

    そうなんだよな、残酷な悲しい出来事は起こり得る。どこにでもやみねずみは潜んでいる。
    だけどそれに飲み込まれないために音楽を奏でる。合奏をする。シャドウボクシングをする。

    いしいしんじさん、いままで読んだのも全部好きだったんだけどこれはホントとくに衝撃というかもう…やられた…ってひっくり返りました。ため息。

  • 一度読み始めた本は最後まで読む主義のため頑張って読んだけど、自分には理解できない類の本だった。
    ただひとつ「音楽のよろこびの大きな部分を合奏のたのしみが占めている。なにかにつながっていること、それをたしかめたい、信じたいがために、音楽家はこれまで、そしてこれからも、楽器を鳴らしつづけるのかもしれない。」という文章は共感できた。また、栗田有起さんの解説「読書とは、文字による合奏に参加することだ。」という言葉には大きな衝撃と共感を感じた。

全300件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

いしいしんじの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×