クジラの来る海 (新潮文庫 か 22-12)

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101102221

感想・レビュー・書評

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  • たいへん味わい深い短編集。いちじらにじら〜

  • 「景山民夫」の短篇集『クジラの来る海』を読みました。

    「景山民夫」作品は昨年の10月に読んだエッセイ集『ONE FINE MESS―世間はスラップスティック』以来なので久しぶりですね。

    -----story-------------
    毒島町の財政は破綻寸前だ。
    予算を根こそぎ使ったあげく、町長はポックリあの世行き。残された者たちが苦しまぎれに思いついた、観光客誘致の妙手とは…?
    表題作をはじめ、人の心を読んで犯罪捜査を行う刑事が活躍する『チャネリング刑事』、謎の団体「裏プロレス」の死闘を描く『闇のリング』、ジュラシックならぬ『クラシック・パーク』など、バカバカしい笑いに溢れた11編。
    -----------------------

    なんだか気持ちが疲れ気味、、、

    軽く読めて、笑える楽しい作品がいいなぁ… と思い、本書を選択。

    気楽に読めるけど、深い余韻のある作品も含まれた以下の11篇が収録されています。

     ■地球防衛軍、ふたたび
     ■犬と神様
     ■クジラの来る海
     ■真説・クジラの来る海
     ■闇のリング
     ■チャネリング刑事
     ■サトル、町を行く
     ■骨折記
     ■悲しきサイキック
     ■霊能者たち
     ■クラシック・パーク


    『地球防衛軍、ふたたび』は、近未来に地球防衛軍が設立(復活?)されており、その役割のひとつとしてミステリーサークルの謎を解こうと調査する物語、、、

    ミステリーサークルを造っていた宇宙人はUFOを操縦した暴走族だったとは… あり得そうことですね。

    時代設定が2013年… 執筆された当時は近未来だったんでしょうけど、既に2014年なので不思議な感じがします。



    『犬と神様』は、交通事故で死んだ柴犬の雑種「ショウゴ」のあの世での物語、、、

    「ショウゴ」は、人間に生まれ変わりたいと願うが… イエティって人間だったっけ?

    コメディのカタチを借りつつ、生きることの意味を問い掛ける深い作品でしたね。



    『クジラの来る海』は、離島で観光資源のない町・毒島町(ぶすじままち)の役人が、財政破綻から町を救うために観光振興策として、マッコウクジラの来る島をPRする物語、、、

    実際にマッコウクジラが出現したことはないが、マッコウクジラを目当てにした観光客が増加し、マッコウクジラ作戦は成功したかに思えた。

    しかし、水産庁と環境庁が調査に訪れることになり… 「鳥兜(とりかぶと)」町長らは、最後の手段として島の西の端の鹿追い谷に住む「毛萩のお婆」に祈祷を頼む、、、

    「毛萩のお婆」は、「イーチージラッ! ニージラッ! サンジーラッ!…」と祈祷を始めるが、「ゴージーラッ!」で酔い潰れて祈祷が中断… 現れたのはクジラではなく!?



    『真説・クジラの来る海』は、『クジラの来る海』とは全く関係のない話で、フリーランスのカメラマンたちがメキシコでクジラの撮影に挑む物語、、、

    この作品、えっ… と思うくらい、まともな物語で、ちょっと拍子抜けでしたね。



    『闇のリング』は(裏)プロレスの物語、、、

    プロレスには興味がないので、あまり感情移入できませんでした。

    強敵に勝ってスッキリと思ったら銃弾が… ちょっと後味の悪さが残りましたね。



    『チャネリング刑事』は、超常現象モノで特殊能力を持った刑事の物語、、、

    こんな能力… 欲しいような、欲しくないような。



    『サトル、町を行く』は、人間の心を食べるもののけ「サトル」の物語、、、

    何百年も山に潜み、山中に迷い込んだ人間の心を食べていた「サトル」(八甲田山、死の彷徨も、雪山を彷徨う陸軍兵士が「サトル」によって心を食べられた… という設定)だが、徐々に山を訪れる人間がいなくなったことから、「サトル」は町へ行く決心をする。

    都会の人間の心は腐っていたんでしょうねぇ… 「サトル」に待っていたのは無残な運命でした。

    現代人の生き方に、疑問や批判を投げかける作品でしたね。



    『骨折記』は、骨折して入院した病院での恐怖を扱った物語、、、

    医者のことが気に入らなくても、なかなか言えないもんですよねぇ… 担当医師を選べないってのは怖いですねぇ。



    『悲しきサイキック』は、超常現象モノで、三流地方銀行の取立て係で四十代で平社員の主人公が、突如、特殊能力を使えるようになるという物語、、、

    特殊能力を徐々に自由に扱えるようになり… 予言者「モーゼ」のように海が二つに分かれる技を身に付けようとするが、待っていたのは、草津温泉での悲しい結末でした。



    『霊能者たち』も超常現象モノで、日本の霊能者特集を組もうとした雑誌編集者の物語、、、

    三人の霊能者を一か所に集めてぶつけ合い、それをルポルタージュしようとするが… 想像以上の激しい戦いに発展。

    狐と狸と青大将の代理戦争だったんですね。



    『クラシック・パーク』は、十億円近い赤字を抱え破綻寸前の町・蔵敷町(くらしくまち)の町長が町興しを目的にクラシックパークを建設しようとする物語、、、

    町に伝わる、鬼の角、河童のミイラ、人魚の鱗、カラス天狗の嘴から、DNAを採取し、クローン培養してクラシックパークの目玉にしようとするが… 実は、これらは太古に生存していた恐ろしい他の生物のパーツだった。

    こいつらが蘇ったら、まさにジュラシックパークですね。



    面白いけど、それだけじゃなくて、考えさせられる作品群でした。

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著者プロフィール

1948年3月20日生まれ。
主な著書
『さよならブラックバード』(1999、 文庫、角川書店 )
『どんな人生にも雨の日はある』(1999、ブロンズ新社)
『ハッピーエンドじゃなけりゃ意味がない』(1999、ブロンズ新社)
『KIKOの冒険』(1999、ブロンズ新社)
『野鼠戦線』(1999、文庫、徳間書店)
『』
『オンリー・イエスタデイ』(1998、文庫、角川書店)
『途中で、ごめん。』(1998、マガジンハウス)
『エル・ドラードの鷲』(1998、中央公論)
『 仰天旅行』(実業之日本社)
『九月の雨—トラブル・バスター4 』(1998、文庫、徳間書店)
『さよならブラックバード』(1998、角川書店)
『パンドラの選択』(1998、文庫、中央公論社)
『リバイアサン1999』(1997、 文庫、角川書店 )
『ハイランド幻想』(1997、文庫、中央公論社)
『ホワイトハウス』(1997、文庫、角川書店)
『時のエリュシオン』(1997、幸福の科学出版)
『 宗教に入るひとの心が分かりますか?—新新宗教と精神療法』(共著、1996、弓立社)
『スターティング・オーバー』(1996、文庫、中央公論社)
『トラブル・バスター〈3〉国境の南』(1996、文庫、徳間書店)
『すべては愛に始まる』(1996、角川書店)
『野鼠戦線』(1996、徳間書店)
『トラブル・バスター』(共著、1996、同文書院)
『東へ三度、西へ二度』(1996、マガジンハウス)
『トラブル・バスター』(1995、文庫、徳間書店)
『俺とボビー・マギー』(1995、文庫、徳間書店)
『サラマンダー』(1995、ベネッセコーポレーション)
『この人に逢いたかった!〈上〉』(1995、文庫、中央公論社)
『この人に逢いたかった!〈下〉』(1995、文庫、中央公論社)
『だから何なんだ』(1995、文庫、朝日新聞社)
『パンドラの選択』(1995、中央公論社)
『九月の雨』(1995、徳間書店)
『ハイランド幻想』(1994、中央公論社)
『チュウチュウ・トレイン』(1994、角川書店)
『普通の生活』(1994,文庫、朝日新聞社)
『ボルネオホテル』(1993、文庫、角川書店)
『スターティング・オーバー—僕の1991年』(1992、ブロンズ新社)
『 遠い海から来たCOO』(1992、 文庫、O角川書店)

「1993年 『僕の憲法草案』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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