三等重役 (新潮文庫 け 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (611ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101118017

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  • 新聞記事で見かけて興味を持ち図書館で予約したところ保存庫から出てきた古びた文庫本。昭和36年発行とある。
    舞台は終戦直後の大阪の名門企業。パージにより棚ぼたで社長に就いた「三等重役」桑原さんと老獪な人事課長浦島さん。ちょっとおっちょこちょいの秘書若原君に同僚の女事務員久保さん。彼らを中心に、社内に起きる些事、本人たちは至って深刻・はたから見れば至ってのんきな事件がとりとめもなく続く一話完結小説。サンデー毎日の連載だったのだそうな。

    源氏鶏太という作家を全然知らなかったのだが、ちょっと辛口でとぼけた味わい、観察日記のように淡々と書かれているのが面白くて、当時人気があったというのがうかがえる。パワハラセクハラ公私混同プライバシー侵害・・・コンプライアンス的にはすがすがしいほど真っ黒で、だからなのか、こんないい娯楽作家なのにそんなに知られていないのが惜しい気がする。

    当事者が同時代に書いているものなので、当時の”家族主義のニッポン株式会社”のリアル歴史資料として実に興味深い。社員同士をくっつけようとするおせっかい、恩ある前社長の娘の起業支援、愛人の店で慰労会、運動会・・・・地方都市は戦争の被害はそれほどでもなく、やってる仕事も今よりずっと単純だったからなのだろう、会社員はこんなに元気いっぱいだったんだなぁと。野趣あふれるというか本能むき出し、エネルギッシュ。

    戦後の「公職追放」はこうした地方企業の経営者もだったんだ、とか、当時の女性の流行言葉と思われる「放っちいちい!」(文脈からしてどうやら「大きなお世話」というニュアンスのようである)、「自動車に乗り込んで」「自動車で向かった」と、「クルマ」というとリヤカーでも浮かんでしまうのか、まだ車が特別だったことがわかる用語遣い、役割語(重役風ワシハデアル言葉、若手社員のボカァナノサ言葉、女事務員のアタシナノダワ言葉、奥様方のアタクシザァマス言葉・・)に大阪弁が混ざって破綻しているセリフなど、ああきっと戦後の”中流以上”はほんとにこんなふうにしゃべってたんだろうなあと想像される。

  • キャリコンにて紹介
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    昔はこんなもんだったのかー…と、思わされた。
    今とは、全然違うのか?
    それとも、上は、そんなもんなのか?

    全く、下っ端は辛いし、
    社内婚だらけの理由がわかる…

  • がんばれ日本のサラリーマン!
    …仕事してたんですよね??

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