石の眼 (新潮文庫 あ 4-10)

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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121109

感想・レビュー・書評

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  • 長年探していた安部公房の絶版文庫を古書市で100円で購入。いつもの公房とは少し毛色が違い推理小説風。いろんな人の思惑や疑心暗鬼が重なり、真相は藪の中。犯人らしい犯人が出てくるのは珍しいかも。絶版でも致し方がないのかな……とは思う。他の作品に比べると少し落ちる。

  • 一人の男、一人の若い女が、ダム工事現場を訪れることから幕が開き、一つの石ころから、登場人物達の疑心暗鬼、策略が次々に始まります。
    誰が犯人で、誰が殺されるはずなのか?

    著者、作風の過渡期に書かれた作品だそうです。
    言われてみれば、いわゆる推理仕立てで、各自の吐露で話が進んだり、珍しく結末があるところなど、彼の本ではあまり読んだ事がないですね。

    もしかしたら、読みやすい部類かも。

  • 観念的な要素のほとんどない著者の作品を読むのは初めてだが、ダム工事の現場に向かう未明のバスの車内の描写なんかに、いつもの雰囲気が出ていてうれしい。推理小説仕立てで、大団円への収束はうまいのだが、登場人物の誰が本当のことを言ってるか、という「藪の中」的な部分はあまりうまくいってない気がする。本作の「藪の中」のような嘘は、それぞれの人物の性格から生じるものというより、こうも考えられるああも考えられるというような一人の人物の論理の思考のような感じがするからと思う。

  • 一癖も二癖もある登場人物8人が、全員途中で起こる殺人未遂事件の容疑者であり、更に新たな殺人の計画を練るというミステリ。全員容疑者という設定はよくありがちなのだけど、そこは安部公房流に料理され、それぞれの人物目線での状況の描写、心理的な動きがあり、見えない部分がなかなか明らかにされず追い詰められていく。読み落としがあるだろうからまた再読したい。力強い表紙の絵は、奥さん作なのね。

  • 安部公房『石の眼』読んだ。三人称で語られていて、一見『藪の中』のようだけど、ちゃんとオチがある推理小説。死体が最後に出てくるあたりが作者らしい作品だなと思いました。

  • 推理小説です

  • 完成近いダム建設地、しかしそのダムは業者と政治家の闇取引による手抜き工事で、満水になれば決壊は必至であった。不正の露見を恐れ、対策に狂奔する工事関係者たちへの審判の日が来た―――。その朝、登場した一人の殺し屋によって、彼らの恐怖の24時間が始まる…。(裏表紙から引用)

    ちょっと物足りなかった…かも。

    今まで読んできた安部公房作品の中では一味違った感じです。
    ちょっと社会風刺で、推理小説風。
    推理小説風というより、裏表紙の言葉を借りるならば、推理小説の「手法」です。
    見かけは推理小説だけど、これは推理小説ではないと思います。
    なので複雑な複線が張り巡らされていたり、大どんでん返しのラストが準備されているわけではありません。(一応…どんでん返しだったかもしれませんけど)

    私が注目したいのは、それぞれが勝手にそれぞれで被害者意識を持ったり、犯人を推理しあっているところです。
    読んでいる時は、誰が犯人かサッパリわかりませんでした。でも、自分自身推理する気持ちは殆どありませんでした。
    全員が被害者で、全員が加害者のように思えました。
    誰だって良いような気がしました。
    犯人が分かってもスッキリしない。
    ただネズミだけが最初から最後まで変わらないで、狂った妄想にも取り付かれないでいたような気がします。

    そうそう、今回麻子みたいな登場人物は新鮮でした。


    もうちょっと世の中の汚さを知ってから読み返すのもいいかも。

  • 絶版で10年以上探した。全集では持っていたので、読めないことはなかったけど文庫で欲しかったの。
    ブックオフで105円で見つけた。
    で、喜んでいたら1週間後にまたブックオフで見つけた。105円で…
    古本探していると、こういうことってよくあるよね・・・

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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