おとこの秘図(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156187

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  • 何度も火付盗賊改方長官を務め、激動の人生を送ったが、この世を去る時に、隠していた秘図は?

  • 将軍家の護衛に迄上り詰めた主人公は最後の勝負に出る 

  • 解説:中 一弥
    「……とにかく、池波氏の、文章に乗ってあらわれる男と女の、こまやかな愛情の交わりには、その表現のうまさには、まったくもって頭がさがる。そこには、真を知ってそれを書かず、そして、それ以上のものを読む人の胸に灼きつける、心にくいまでの独特の文章力の持ち主、池波氏の真価がある。私は心からそう思うものである」

    この一文に池波さんのすべてが凝縮されている。

  • 時代小説。旗本徳山五兵衛の生涯。
     腐女子には身をつままされるお話。
     夜の生活に満たされない五兵衛は夜な夜な男女の交わりを描いた絵巻を見ているのが趣味。
     そのうち自分で描き始め、幕府のおつとめをするようになってからも続ける。
     彼は思う。
    「こんなものが見つかったら身の破滅」だ。
     死後に見つかってもいけない。
     一生懸命隠す。だったら絵筆を捨てればいいものを、五兵衛は盗賊捕縛の旅に出た先でも、こっそりと筆を滑らせて、部下に見つかりそうになってあわてたりする。
     ・・・・・・この後ろ姿に自分を重ね合わせる人は多かろう。
     五兵衛は将軍の身代わりをすることになり、死を覚悟。身辺整理をするさいヤバいもんはみんな燃やす。
     無夜は彼のように潔く、秘図(無夜のは小説)を全部燃やせるかどうか。わからない(笑)
     無理だろう。
     生き残っちゃった五兵衛は悔いる。手本にしていた秘図だけでも残しておくのだった、と。
     引退すると余生を傾け、昔の愛人とのそういうのを全部絵巻にして表紙までつけて立派なヤバ絵を完成させ、ご満悦になる。

     ラストは、五兵衛の死の直前、妻に「御公儀の密書だから焼け」と命じる。
     ところが(笑)、妻は鍵を開けて中身を取り出しておいて五兵衛の前で空箱を焼く。妻が死ぬときに「お父様から預かった御公儀の密書だから焼いてね」といって焼かせてから息を引き取る。これにも鍵がかかっていたのだけれど、息子はやっぱり死ぬときに鍵のかかった箱を息子に託して同じように焼くように言う。で、五兵衛の孫にあたるこの子は名前もずばり五兵衛の幼名「権十郎」なのだった。
     五兵衛の裏形見。いつまでこっそりひっそり受け継がれるのやら(笑)

  • 2010/03/10完讀

    最後一卷主要是徳山五兵衛擔任吉宗的替身,替幕府一網打盡暗殺吉宗的幕後集團。後來步入老年的五兵衛還被任命為火附盗賊改方,逮捕了以日本左衛門為首的許多盜賊。退休後,則熱中於「秘圖」的製作,完成後安然地度過晚年。

    五兵衛夜間秘密繪製春宮圖,和他在家臣面前威嚴的態度形成一種滑稽感,呼應了池波的觀念:人總有善惡兩面,還有世間很多事情都是「勘違い」造成的。當然他萬萬想不到的是一張草稿被勢以發現,最後繪卷也沒有燒掉,被勢以搶救出來,甚至子孫一代代傳下去…(每一代都說:這是關於幕府的重要機密文件,趕快拿去燒掉XD)

    晚年和小沼與勢以的對話,含著太多沒有明說的千言萬語和情感,都讓我覺得很感動。

    **

    整體來說,我最大的遺憾就是不該先看さむらい劇場…這就跟看過真田太平記之後,忍者丹波大介就不怎麼新鮮是一樣的感覺,不然這本書還是很棒的。不過,結局的感動與有趣還是挽救了我對前面重複的不耐感。

    雖然因為連載的關係得不停重複某些劇情的交待,讓份量有些過長,我還是覺得這是一本很成功的小說。男女的模樣,欲情,男性的心理都描寫得很具說服力(雖然中卷一度讓我很不舒服)。主角不是聖人,但也因此讓這本作品更為立體踏實。七情六欲、善惡交錯、親友關係,一個人的人生也不過就這樣,要說單純也很單純,卻是一個說不完的故事…因此才有讀不完的趣味。

    據說「週刊新潮」連載時有請插畫家繪圖,或許這次的新版封面就是從那裡擷取而來吧。五兵衛的繪卷,優美而不猥褻的春宮圖是什麼樣子,我也很想看看。

    **

    「ちかごろ、、市中見廻りに出てくると、一目で悪者どもの顔がわかるようになった。なれど、それをいちいち捕まえてしまっては、これはもう数限りのないことじゃ。江戸の御牢內には入りきれまい。ま、一口に盗賊と申しても、困窮の揚句に切羽つまって盗みをはたらく輩をすべて御縄にかけていては、いまの時世から申して、それこそ捕らえきれまい。のう、小沼。善のみの人間なぞ、この世に在るはずもない。わしとて同様じゃ。悪と善が支えあい、ともかく釣り合いがとれておれば、先ずよしとせねばならぬが今の世の中じゃ。」
    「盗賊と申すものは、御役人より何より、おのれの手傷、病に心弱きものでござります。」

    (570page)

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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