秘密の花園 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167541

作品紹介・あらすじ

私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう?カトリック系女子高校に通う、三人の少女、那由多、淑子、翠。性格の異なる三人の「私」は、家族、学校、男たちの中にあって、それぞれが遠いはるかを、しずかに深くみつめている。「秘めごと」をかかえる彼女たちの微笑の裏側の自由。甘やかな痛みの底に眠る潔くも強靱な魂。自分を生き抜いていくために「私」が求めていたことは-。記念碑的青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 聖フランチェスカという修道院と連なるミッションスクールに通う3人の女の子の日常が描かれています。彼女たちそれぞれがブレスレットを飾るモルジブの宝石みたいに、澄んでいて、尖っていて、眩しくて、美しい。

    お母さんを亡くしたばかりの五十嵐那由多は、80pと92pにそれぞれ事件に遭遇。
    本屋さんの娘中谷翠(すい)は、生まれなかった兄を時々日常に紛れ込ませる。
    のんびりやさんの女の子、内科医の一人娘坊屋淑子は、国語の平岡先生と不倫。

    つまり、賢くて繊細な彼女たちは、あろうことか尊敬すべき大人に、直接、間接的に傷つけられている。
    まだ未熟な女の子が出会った絶望の理由と意味を一緒に考えたいと思いました。
    それから、淑子の170pの不安と孤独の吐露は、懐かしさでいっぱいになりました。その感情と逃げずに向き合っている彼女は、もうちゃんと成長の道を歩いていると今ならわかります。

    ノアの箱舟、パンドラの箱、ラザロ、乙女峠、希望と災厄、奇跡と経験則などなど、恋愛あり、陰謀ありで、中だるみしている暇もなかった。
    199pの王子様談義はとっても楽しかったなぁ。
    37pのマンガはキャンディキャンディかな。アンソニーとテリーをよぎらせながら懐かしさに浸りました。

  • うーん。女子高には行きたくなかったな。正解だったかも。

  • カトリックの女子校へ通う少女たちの其々の秘密と葛藤が描かれている作品。
    那由多、淑子、翠と主に3人の少女たちの秘密が各章で描かれているのですが、広い意味で其々が「性」に対してのコンプレックスを持ち、皮肉にも処女信仰であるカトリックの学校が舞台という設定は面白かったです。
    作中で其々の少女をお姫様に例える描写に凄く納得してしまいました。
    どんなに打ち解けた友人でも知らない秘密は誰だってあると思います。罪悪感や羞恥心から言葉に出来ないままに心の底に鬱々と育った秘密を、間接的な言葉でありながらも発することの出来た那由多に、この作品の救いを感じました。

  •  同じ女子校に通う少女たちの物語。少女だけどまだ何も知らないわけじゃない、けど自分の女性性に対しての嫌悪感や疑問を拭いきれるほど成熟しきっているわけでもない、この曖昧な時間は十代の一瞬であり、少女時代の儚さを感じた。どんな小さなことだって大事件になってしまう女の子の狭い世界は、年を重ねると自然に趣が変わってしまうのだろうなぁ。また、女子校ならではの閉鎖的で濃密な雰囲気、少女たちの関係性が綺麗な文章からじわりと染みてくるようで、うっとりとむせ返るような気分になった。

  • 女子高に通う3人の女の子の視点。

    露出狂の痴漢に遭遇し、性器を切りつける美少女。
    教師との恋愛に溺れ、思い込みの激しい少女。
    他人と距離を置いているように見えてしっかりと周りを気にしている少女。

    彼女たちは引きこもったり、
    九十九里浜に向かって失踪したり、
    幻想の兄を追いかけたりしている。

    -----------------------------------------

    女子高って神秘的なイメージ。
    カトリック系のお嬢様女子高なんて世界が違い過ぎるし、もっとブルジョワなのかと思ってた。

    漫画『青い花』のイメージで読み始めたのが間違いだった。百合物かと思ってミスリードしてしまった。

    3人ともストーリーに決着をつけずに終わすっていうのが作者のテクニックなのかな。
    ちょっとむずむずした。

  • そう、女子高生ってこういう生き物だよな、という本。危うい均衡を超えて、うまいこと神経を磨耗させた個体が生き延びて大人になる。

  • 一番悩んでなさそうな人が暗い悩みを抱えていたり、冷たく見える人が一番温かかったり、自分の中と他人の目は全く異なるということを教えてくれる一冊。

  • 大人でも、子どもでもない。”少女”という生き物。

    「閉じ込められた世界」「なにかに追われているよう」「どこかに行きたい」
    …こういうことを考えない学生なんていないのでは?閉塞感と、逃避願望と、焦燥。高校生の頃考えていたこと、そのままが生々しくここにある。

    この作品に出てくる三人の少女が見せる、脆い心。意地と隣り合わせのプライド。
    したたかさを持たず、ある意味純粋すぎるといってもいい彼女たちには、ふとしたきっかけで簡単に崩れ落ちてしまいそうな危うさがある。
    外から見たとき、その脆さと危うさはひどく魅力的で。いつか失ってしまう、一瞬でここを過ぎ去ってしまう。そんなことをひしひしと感じるから、”少女”は魅力的なんだろうか。


    巻末に寄せられた、稲村弘さんの「夢のようにリアル」もよかった。

  • 『ののはな通信』を読んで、しをんさんの女子校ものが読みたくて積読の中から手に取りました。

    女子高生の那由多→淑子→翠の視点で話が進んでいく。
    それぞれ胸のうちに秘密を抱えながら多感な
    時期を過ごしている。
    難しかった…。

  • 知り合いの女子校出身者曰く、
    学校の中はガサツで下品で動物園だと言う。

    本書は随所でたおやかで神秘的な品が感じられ、なんとなく「外から見た女子校」いう印象を受けてしまった。

    女子同士なら、もっと陰湿でもっともっと意地悪なことをするのでは、と思ってしまった自分は、相当心が荒れているかもしれない。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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