幸せを約束してくれない男を愛してしまった女性たちの物語7編。
第1話「不幸体質」は、理子(さとこ)という、すでに彼氏の津田の気持ちが自分から離れていることを心の底では知りながらも、悲劇のヒロインの位置に自分を置こうとする女性の物語。
第2話「明日のニュース」は、ほぼ全編男女の会話で構成されている短編。戸倉和実と中谷茂貴の2人による、相手に対する不信を匕首にように隠し持った言葉のやりとりを通して、両者の距離が決定的になるまでが描かれています。
第3話「整理整頓」は、2度目の浮気をした村瀬晋一を、またしても許そうとしている原田真美(まさみ)という女の話。
第4話「この人のためなら」の主人公・樋口佳世は、付き合っている竹下俊行に思いがけずも「あなたのためなら死ねる」と口に出してしまいます。それ以降、俊行の態度が傲岸なものになり、佳世は言葉を取り消そうとするが、そんな彼女に俊行は、「ぼくは君のためなら死ねる」という言葉をかけます。この言葉で、女の気持ちは以前よりいっそう俊行のもとにつなぎとめられてしまいます。
第5話「ヒロインの格式」も第1話と同じく、悲劇のヒロインであろうとする女性の物語です。
第6話「平均点」は、付き合っている男に自分以外に親しくしている女がいることを知った女性の心を描きます。瀬田真由子は、実家に帰ったときに両親から平凡な生活を慈しむ生き方を学び、中井秀行のプロポーズを受け入れることを決意します。
第7話「オスの上限」は唯一、男の視点から描かれているストーリーです。
いずれも、著者が描こうとしている心情が明確で、分かりやすいストーリーです。ただ、それ以上のひねりはありません。恋愛小説の習作を読まされているような印象でした。