- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101174198
感想・レビュー・書評
-
未完ながらもここまで楽しませてくれれば本望である。葉隠武士道を貫く魅力的なキャラたち、事業承継の困難さ...。様々なものが詰め込まれているが、戦乱の世も終わり、忍者が無用の長物と化したこの時代と同じように、AIやITの進化によって淘汰される仕事がある現実を突きつけられた思い...。
杢之助らの最期を改めて夢想しよう...。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上巻に続き、佐賀鍋島藩の危機を救おうとする斎藤杢之助とその朋友・萬右衛門、中野久馬の三人の生きざまを語っている。
武家社会になど興味を持てないというひとも多いだろうが、この3人があまりにも生き生きと描かれているため、いつの間にか入り込んでしまう。
もうその魔力は恐るべしで、隆さんの筆力の冴えにはひれ伏してしまいそうだ。
若かった杢之助も下巻では父親となり、そのふたりの子らが活躍する章もある。
剣の腕に父親譲りの才を見せる長女の、『果し合い』の場面が特に好きだ。
性酷薄な松岡主水との闘い、主君勝茂公とその孫・光茂との悶着と相続問題、
その光茂をけん制する3人の腕の冴え、迫力の『海難』の章、有名な『振袖火事』、何よりも、佐賀藩を取り潰そうと目論む老中・信綱との長年に渡る確執等々・・読ませるシーンは枚挙にいとまがない。
そのひとつひとつに、杢之助たちの煩悶と苦悩があり、秘策がある。
おおそうきたか!と膝を打ったり涙が出そうになったり。
どの場面でも人間の描写が非常に上手いので、佐賀藩士とはこんなにすごいんだぞ、で終わらないものがそこに流れている。
「死」から逆に人生を考えるということが、こんなにもひとを強くするのだろうか。
打算のない、ただ己を頼りにその時を精一杯に生きる生き方はいっそ爽やかで、まるで優れた映画を観るかのように鮮やかに心に刻まれる。
また、読みながら何度も何度も、恥ずかしい生き方をしてこなかったかと自分自身に問いかけもする。
巻末に、隆さんがしたためていたと見られる続編のモチーフが書かれている。
どうやら登場人物たちにも死が訪れるらしく、そこまで読まずに済んだのはある意味幸運なのかもしれない。
いやそれとも、見届けられないことを惜しむべきなのか。
隆さんは、続きを読者に想像する楽しさだけを残して逝ってしまった。
そしてたぶん私は、現代小説からは遠ざかっていくのだろうな。。
まぁそれもかなり幸せなことではあるけれど。 -
初隆。…いや、これは凄いッ!?今まで読んだ時代小説の中でトップ(※マイベストは藤沢周平「蟬しぐれ」である。)に並ぶ大傑作。こんな作品が絶筆だなんて——完結していたら、間違いなく星五つ。今度は完結している作品を読みたい。
-
未完とは、残念。
-
産まれたての娘を嫁にくれる、大猿の死を仲間として弔ってくれる、そんな友があなたの側にいるだろうか。邪道で結構。葉隠はロマンだ。
-
読了2回目
数少ない何度読んでも面白い話。 -
傑作。作者が亡くなったため、未完であるが面白い。
-
上巻レビューの続きですよ。
この本を好きな理由ですが、まず主人公が単純明快でヒロイックなこと。
これはこの著書の描く主人公のパターンですが、自分の世界観がきっちりと
あって、それに従って即断即決即行動。このパターンが死ぬほど好きなのです。
わたしは火星が牡羊座にあるので、単純・明快・行動的という火の男をこよなく
愛しているのですね。過去につきあった男はすべて火の男です(どうでもいい)
そしてこの小説の主人公は「死人」です。毎朝イメージの中で死ぬ。
なので死を恐れない、という付加価値がついてくる。
この死人であることが、蠍座のわたしにはたまらないのですね。
蠍座は生と死を司り、オール・オア・ナッシングで物事を決めていく実に極端な
性質を持っているのですが、そことベストマッチするわけです。
つまりわたし自身の投影であるからこそラブ!というわけですね。
世界は自分の投影の塊ですね。 -
登場人物がそれぞれ魅力的。感想も未完にします。