二十歳の原点 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101183015

感想・レビュー・書評

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  • 去年古本市でふと目に止まって購入した本。二十歳を目前にして読むべき本だった。出会えて良かった。
    特に「独りであること」について彼女は何度も思考を巡らせている。考えることは苦しい。それでも考えることをやめない、向き合うことをやめないこと、それが彼女を支えて、やがて追い詰めたのか…。学園紛争の最中、この本の時代の大学生、大学の様相は今とはあまりにも違う。彼女が綴った日記は正直で、赤裸々で、理想と現実の狭間でもがいている。読んでいるこちらも苦しく、恥ずかしく、彼女の感情の波に飲まれていった。ときおり挟まれる美しい自然の詩は、現実を離れ、心の羽を伸ばしているようだ。
    自分について、大学について、孤独について、性について、労働について…50年前の同い年の学生がここまで自分の周囲の物事を深く、内省的に考えていたことに驚き、その熱量に圧倒された。彼女の人生の最期の半年間。薄い本だけどとても重かった。

  • 感じていること、焦燥感、希死念慮、厭世的な姿勢、自分は優れているという欺瞞、それに見合わない実力と努力できない自分への失望、劣等感
    そのまま私すぎて、私と違い、言語化が上手で面白くて一気に読んだ

    学びに貪欲になりたい

    自分を律する力を、自分のものとしてやりたい


    面白い本を読んでいる時の人生の輝かしさというのは、慢性的な希死念慮をも凌駕するな
    そのおかげで今まで生きてこれたのではないかと、少し思う
    もちろんそれだけではないにしろ、かなりの割合を占めるのではないだろうか

    私の孤独を肯定されたみたいで、心が和らぐ


    事前知識無しに読み始めたのですが、2冊目最後まで読んだら、まさかの高野悦子さん自死していた
    こんなに言葉選びが上手で言語化が上手だったら、そのまま詩人にでもなったのかしらと思いながら読んでいたのに

    別にその選択を否定するわけではないが、私自身が、彼女のその後の生き方や、その後生きていく中で彼女から生み出されたであろう言葉や感性を知りたかったと思っている

    この気持ちの終着点が自死しかないなんて言わせない

    抗ってやるのだ という気持ち


    この本がベストセラーということは、多かれ少なかれみんなこのような気持ちと向き合っているのだな
    そして、乗り越えて、高野さんから言わせれば妥協をして、生きているのだな


    私もね、ほどほどに内省して、生きていくことにしたんだ
    生きていく中で自分にたくさん妥協しているけど、その中で少しでもマシになろうと日々戦っている

    高野さんが見れば、軽蔑するんだろう

  • 彼女はこの日記が出版されいわゆる「名が知られた存在」になった。でも(闘争以外は)同年齢の私と同じところがいくつかあったので、読んでいるうちに彼女が自分の友達みたいな存在になっていった。だからこそ最後の詩を読むのが辛かった。
    なぜ彼女が自殺を選んだのか、要因はいくつか考えられると思う。でも考えること自体ナンセンスなのではないかと思う。

    ちなみに、読む時は物理的に独りで、できれば個室にいる時がおすすめ。

  • ひどく落胆。同時にニヤけた。

  • 青春というものは如何なるものかを思い出させてくれる本。読んでいると、自分が生きていること、存在していることに不思議な自信が湧いてくる。
    全共闘の時代に自殺した大学生の手記。終始灰色なトーンで日々の生活や心情が綴られている。理想と未熟な自分のギャップに悩み、自分の弱さをいつも反省している。
    一方で、時々に綴られる詩や自然の描写はとても美しい。純粋無垢な心を持ちながら、仄暗い自己批判を続けているアンバランスさが愛おしい。

    漠とした不安を抱きながら、形のないものに真剣に悩む経験こそが青春だと思う。
    そして、自分もこのような経験を持っていることを時折思い出す必要があると思う。
    年を取ると青春を経験できなくなってくる。青春には孤独が必要だが、孤独は特権だ。孤独を手放さなければ、生活ができなくなる。生活のために、仕事、家庭、お金など目に見える具体的なものに悩むようになる。具体的なものは自分の外にあるものだ。他人や社会によって、常に変わっていく。青春を忘れてしまうと、これらに右往左往することになる。
    この本の中で「青春を失うと人間は死ぬ。」という言葉が書かれている。青春を失うことは精神の熱的死だ。青春という経験を思い出すことで、自分の中に目を向け直すことができる。1個の自分というものを意識することができる。現実に対する1個の自分。それが存在の矜持と自信。

  • この日記を読み終わると、1人の女学生が居なくなってしまう、そんな気持ちで大事に読んだ

  • 青春を駆け抜けていった一女子大生の愛と死のノート。40年ぶりの読書です。

  • 自らの未熟を許せぬまま、苦悩と錯誤の最中に沈没していくよう。抜け出せるだけの何かがなかったのか、あるいは必要以上に深みにはまってしまったのか。

  • 50年前のある20歳の人は京都でこんなことを考えながら学生時代を過ごしていたのかと思うと面白かった。
    読んでいて、当時の学生闘争の匂いと生活が感じられた。

  • 「独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけていった一女子大生の愛と死のノート。学園紛争の嵐の中で、自己を確立しようと格闘しながらも、理想を砕かれ、愛に破れ、予期せぬうちにキャンパスの孤独者となり、自ら生命を絶っていった痛切な魂の証言。明るさとニヒリズムが交錯した混沌状態の中にあふれる清冽な詩精神が、読む者の胸を打たずにはおかない。」三宅香帆

    高野悦子
    タカノ・エツコ
    (1949-1969)栃木県那須郡西那須野町生れ。立命館大学文学部史学科に入学する。社会・政治問題に関心を持ち、部落問題研究会に入部したり、学内バリケードに入るなどの活動を経験するが、20歳6ヵ月で鉄道自殺を遂げる。中学時代から書きつづけていた日記が、死後に『二十歳の原点』(1971)、『二十歳の原点序章』(1974)、『二十歳の原点ノート(1976)として出版され、いずれもベストセラーになった

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著者プロフィール

1. 高野悦子(たかの えつこ)
1949年1月2日 - 1969年6月24日
『二十歳の原点』で知られた女性。逝去当時、大学生だった。栃木県生まれで、栃木県立宇都宮女子高等学校を卒業し、立命館大学文学部史学科日本史学専攻に入学、京都に拠点を移す。ジャズ喫茶に通い、詩作、そして学生運動に励んでいたが、1969年6月24日、列車に飛込み逝去。死後、20歳の誕生日から続く内面の吐露を記した日記が、同人誌「那須文学」に掲載され、1971年に『二十歳の原点』という題で書籍化、ベストセラーとなった。2019年に没後50年を迎える。

2. 高野悦子(たかの えつこ)
1929年5月29日 - 2013年2月9日
映画運動家、岩波ホール総支配人。『母 老いに負けなかった人生』『岩波ホールと〈映画の仲間〉』などの著作がある。

高野悦子の作品

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