- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101191140
感想・レビュー・書評
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着物の世界もかつてよりずいぶん敷居が低くなり、自由な感想を綴ったエッセイも多く刊行されていますが、本書は経済力もセンスもある大人の女性の立場から、ほんとうの着物の楽しみかたを若いひとに伝えるとともに、お高くとまった伝統的な着物の世界の閉鎖性に対する辛辣な意見を織り込んだエッセイです。
この著者の立ち位置が絶妙で、しかもエッセイの名手らしい小気味のよい言葉で語られているので、ほとんどなじみのない世界であるにもかかわらず、楽しんで読むことができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
筆者が単衣の長襦袢の話をしていたが、お茶会では先生方から単衣の下は絽の襦袢で構わないと言われてかれこれ20年、わざわざ単衣用を誂えたことはない。麻を合わせても注意されたことはない。もしかするとお点前さんになれば何か言われたかもしれない。現代だと長襦袢は白ならお茶会でそこまで厳格な決まりはないと思う。
時代によって着物の解釈も変わりうるというのは筆者の実感として語られていたが、そういうことなのだろう。
越後上布のくだりの「これをまとうには、私にはまだ多くのものが不足していると思う」というのは自分にも当てはまる。とっておきの着物はTPOにもこだわりたくなる。結果、箪笥にしまわれることになるのだ。
展示会のお話は興味深かった。いろんな失敗をしても展示会に行って着物を買う林さんはメンタルも経済力も逞しい。一方私は押し売りに近い販売員さんに辟易して、それ以来着物はすべてネット通販で購入している。あれこれ見れないのは残念だけど、思考を奪われるのは御免被りたい。訪問着から大島、結城などの紬、ポリの着物までネットで幅広く手に入るので、また筆者が着物のエッセイを書くならネット通販についても書いてほしいなと思った。 -
着物に夢中になった著者が、買いまくり、あれこれ失敗をして、挙句に日舞とお茶も習って、着物の魅力にとりつかれたエッセイ。
着物は、洋服やブランド品やジュエリーと同じく女性を待ち受ける魔性の散財対象のようだ。
理性が飛んじゃって衝動買いしたり、展示会で言われるままに、何十万、何百万を使ってしまう。
着物屋さんにしてみれば毎度あり、であるが、普通の人は恐ろしくて近づけないワールドであろう。
買うのに何十万とする。
お店で気軽に買えない。販売員がしつこい。
お手入れが大変。
着まわし、着る機会が限定される。
濡らしたり、走ったり、車の運転ができない。
下着や小物など付属品が多い。
着るのに時間がかかる。
着あわせルールやマナーが複雑で難しい。
高い安いで値踏みされたりセンスをチェックされる
…こんなに大変なものを、着たいという人が減ってしまっても仕方がないと思う。
だから、現代人は、
安い
手入れが簡単
すぐに着られる
付属品がシンプル
マナーは簡略
という風にしなかったら着物は着られないと思う。
昔の人だって絹物を着てお姫様のように暮らしていた人ばかりではない。もっと街着や普段着、家事作業着があったはず。豪華な人間国宝の手描きや手織りの高級品より、そっちの方が求められていると思う。
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今年に入って着付けを習い始めたので読んでみました。時代や林さんの経済力もあるけど、着物ってお金掛かるなぁと思ってしまった。
あとがきの、「誰がここまで着物をむずかしくしたのだろうか」に激しく同意。もっと気軽に楽しみたいと思った反面、これを執筆した時の林さんは今の私より年下という事に衝撃。
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着物の沼の話
林麻里子さんならではの視点で着物のの魅力、難しさが表現されている -
成人式や結婚式、特別なシチュエーションでしか着たことがなかった着物。ひょんなことから着物に興味を持ち、林真理子の着物のエッセーを読んでみた。失敗したり恥をかいたりしながら着物にのめり込んでいく著者の様子が面白可笑しく、一気に読み終えた。
箪笥の肥やしと化した着物を、また着てみようかなと思う。 -
結構前の本なんだな。
著者の当時の年齢が自分と近くて、初心者には面白く読めました。
わりと傲岸不遜て感じの自己分析がこの人らしい(笑) -
他の人の感想で、金持ちならではの、着物の楽しみ方という批判はあるが、
安い着物にも通用する普遍的な真理も多い。着物が着てみたくなる一冊。 -
この本で「志ま亀」を知った。すてきだ~憧れだ~。