- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101206516
作品紹介・あらすじ
百円――それが彼女の値段だった。山口きぬは父によって、東の廓「福屋」へ身売りされた。明治三十三年、わずか七歳の折の出来事だ。置屋の養女となったきぬは、厳しい暮らしに耐え、踊り、三味線、鼓の稽古に励み、やがて金沢を代表する名妓鈴見となる――。明治から昭和まで、城下町の世相を背景に、花街に生きる女の華やかさとその裏の切ない心情を描き切った、不朽の名著。
感想・レビュー・書評
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読了。どこの国でも、同じようなシステムがあったのだろうと想像できた。男の欲望からお金が出て経済が回る。今の世の中は少しは、良い方向に進んでいればよいと思った。
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明治30年代、7歳で身売りされ、芸者になった女性の生涯。ご本人に聞き取った話をもとに、かつての金沢の遊郭の世界を丹念に調べている。
華やかな花街の裏で、そこに身を置いた女性たちの悲しみや苦しみがある。かなり聞きにくいと思われる話まで書かれている。
主人公は山口きぬという元芸者の方である。
売られたときから、修業時代のこと、水揚げのこと、「旦那」との関係など、普通はあまり話したがらないのではないかということまで細かく語られている。 -
解説で井上理津子が書いているように,きぬさんからこのような話を聞き出した著者の力量は凄い.明治から大正・昭和にかけての金沢の東の廓の様子が目の前に浮かぶようだ.数年前に現地を訪れたことがあるが,小ぎれいな街並みにリニューアルされているものの,女たちの悲しい現実をカムフラージュできないなと感じた.女性の権利という言葉自体がない時代.男たちの世界にも貧富の差が大きかった時代.このような歴史をしっかりと受け止めていく必要を痛感した.
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一気読み。時代劇や宮尾登美子の小説にありそうな話。いや実際にあった話なのだ。山口きぬは明治33年、7歳のときに父に金沢の東の廓「福屋」に身売りされた。そのあと妹も同様に身売りされ、花街でいわゆる名妓として生きていく。
語りの金沢の方言がそのせつない感情を助長させる。
解説の井上理津子は大阪飛田新地の女性たち、飛田新地の「すがた」をあぶりだしたドキュメンタリーで知られているが、その井上が書いているように「潔さ」が確かに、随所に感じられる。 -
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