方丈の孤月 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101211848

作品紹介・あらすじ

齢五十余にして粗末な庵で想う。私の一生とは何だったのか。下鴨神社の神職の家に生まれながらも、不運と挫折の連続。孤独を抱え、災禍に遭った都を悶々と歩き回る。やがて歌の才が認められ「新古今和歌集」に入撰するのだが――。晩年、独り方丈に坐し、筆を執る。「ゆく河の流れは絶えずして…」。人はどこから来てどこへ行くのか。世の無常と、生きる意味を見つめ続けた長明の不器用で懸命な生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 鴨長明と聞くと、卑屈で意地っ張りという像を浮かべる。

    確かにこの小説でも、自分にとって気に入らないことからは目を逸らし、最終的に方丈の庵に籠ってしまう、そんな面倒くさい人が描かれているのだが……。

    一方で、平安から世が移り変わる中で、長明が出会った人々もまた、荒んでいたのではないかと思う。

    「狂うてこそじゃ。狂うてこそ、本物になれる」

    後鳥羽院の言葉に示されるように、長明の眼は、それがたとえ、尊敬する師であっても、愛しい息子であっても、権謀術数によって力を得るという、人の忌まわしさ、浅ましさを見抜いてしまう。

    だからこそ、長明は誰にも寄り添えず、また大事にされることもない。
    歌を詠み、琵琶を奏でる、忘我の時間だけが癒しを与えてくれる。
    その中で実朝に対しては、共感の意を感じ取るのだが、ハリネズミよろしく「わたしの何を見抜いたというのか」と近付き傷付け合い、また背を向けることになる。

    だけども、最後まで狂わなかったのではないか。
    世の人が言う、狂人とは違った意味で、彼は世を見つめ、見出し、絶望し、でも望みを捨てきれなかったように思う。
    何かを遺すとは、そういうことではないだろうか。

  • 下鴨神社の神職の家に生まれながらも
    プライドばかり高い卑屈で意固地な性格ゆえ
    零落し、最後は京の山中の庵で暮らした鴨長明の一生を描いた作品。

    怠け者で凝り性で、卑屈で・・・と
    ひどく人間くさい長明が最後にはすべてを捨て去り
    悟ったような心に落ち着くまでが切ない。

    ってか、神職から仏教へ乗り換えるってアリなんだ!と驚き

  • 方丈記は、古文でもあり、無駄をそぎ落とした文章なので、作者・鴨長明はさぞ高潔な人物だと感じていたが、本書ではとても人間臭く描かれている。神職の家に生まれたが、生来の人付き合いの悪さと逃避癖から神官としては大成せず、下鴨社の正禰宜であった父の死後に零落していく様は、彼の棲む世界を巧みに泳ぎ切れない悲哀を感じた。大原、日野の里と隠棲場所を替え、方丈の庵を終の棲家にしたわけだが、「やることがいっぱいであって、実はすこぶる忙しい」というくだりは、野田知佑氏が語る大自然・ユーコンでの生活を彷彿させ、肯ける。

  • はじめて梓澤要さん
    モノローグがいい
    展開は退屈

  • 方丈記の作者鴨長明の人生、疲れた!

  • 出世欲や承認欲といった社会の中にいることでしか得られない満足と、芸術家としての孤高の追求欲が、鴨長明の中で共存している。疫病と飢饉が相次ぐ中世世界の場面描写も見事。田舎の現実世界を体現するがや丸が清涼剤。

  • 神職の家に生まれながら、不運と挫折の連続。
    天変地異に見舞われた京を歩き、地獄絵図を精力的に取材。
    その後、後鳥羽院に認められ、新古今和歌集に十首入撰を果たします。
    しかし思わぬ横槍が入り、失意の底に。
    晩年、方丈に坐し、世の無常と己れを見つめ、生きる意味をひたすら問う。
    己の人生は何だったのか。
    鴨長明の一生を描きます。

  • 鴨長明の生涯をテーマにした小説。武士中心の政治への転換が進む環境で、名家出身者の困惑と達観が感じられる一冊。方丈期はこういう心持ちで、描かかれたろうと感じられた。

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著者プロフィール

1953年静岡県生まれ。明治大学文学部卒業。1993年、『喜娘』で第18回歴史文学賞を受賞しデビュー。歴史に対する確かな目線と骨太のドラマを織り込んだ作風で着実な評価を得てきた。作品執筆の傍ら、2007年から東洋大学大学院で仏教学を学ぶ。2014年『捨ててこそ空也』で、第3回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。主な作品に『百枚の定家』ほか。

「2016年 『井伊直虎 女にこそあれ次郎法師』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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