ストックホルムの密使(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.85
  • (30)
  • (56)
  • (34)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 382
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223162

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦争は情報戦だと言われるのに、現実から目を背け耳を塞ぎ、信じたいものだけを信じ、国内の重要機密をスパイに筒抜けにし、外交も腹立たしいほどにヘタクソで、国力差は圧倒的不利。そもそもこんな国が何で戦争なんて始めてしまったのか。この非常時に陸軍と海軍は対立し合い、大和田文書が早い時期に届けられたとしても、ソ連の参戦・原爆投下は阻止できなかったのではないかと思う。
    だが、戦争を終わらせようと最後の最後まで望みを捨てなかった人達の尽力を忘れてはならない。
    主要人物はもちろんだが、個人的には磯田の死に胸が詰まった。磯田は…「エトロフ」でも読んでいて辛くなるほど職務に忠実な男だった…。
    そして、気になっていた安藤大尉の消息…。そうか、彼らしい…。
    この本もまた、素晴らしい作品だった。佐々木譲さんありがとうございました。

  • 上巻途中での感想に
    【日本人は阿呆ばかりだ!】と書いたが…………。

    通読しての感想を一文で表すならば
    【日本人は阿呆ばかりではない!】となった。



    太平洋戦争末期、何故にあれだけの被害を受ける前に、戦局から判断して早期講和に持ち込めなかったのか……。

    何故に日本人は、世界初にして唯一の被曝国となってしまったのか……。



    フィクションではあるが、指導者側登場人物にはそれぞれモデルとなる実在の人物がいての、史実の流れを汲んだ物語。

    長いものには巻かれろ
    臭いものには蓋をしろ
    溺れる者は藁にもすがる
    会議至上主義で決断力が欠如

    ……日本人の“負の特性”そのものな人間達と闘った、勤勉かつ己の正義と国全体の未来を考えて動いた信念の人……。
    彼らはあくまで架空の人物たちではあろう。がしかし、きっと彼らのような人達も、確かに存在したのだろう、と思うことができた。

    日本人は、阿呆ばかりではなかった。
    だからこそ、壊滅的な打撃を受けた敗戦国にして、天皇制を廃止させられることなく、短い期間でめざましい復興を成し遂げることができたのだろう。

    カタチは違えどやはり再び“阿呆な日本人”が多くなってしまったこの国も、やはり捨てたものじゃないのだなと、思えた。

    2012.04.02.了。

  • 10年以上前の読了。

    3部作の中で最もアクションに特化してたような…シリーズの最後、冒険巨編です。

  • 「ベルリン飛行司令」「エトロフ発緊急電」に続くやつ。エトロフ〜では出てこなかった安藤大尉が出てきて、安藤大尉!!!ってなります。

    ストックホルムからの密使、いつになったら密使出てくるん…?と思いながら読み進め、上巻の最後でやっと放たれます。下巻は、えー!どうなるのー!先が気になるぅぅー!と、引き込まれました。

    ソ連参戦や原爆投下などの史実はわかっているので、先が読めると言えば読めるのですが、史実と創作が上手い具合に絡み合い、そそそそれでどうなっちゃうの???と、先を知ってるのに先がわからないという面白さがありました。

    面白かったー!

  • どこまでが真実かは分からないが、開戦や終戦に関しての超一級の情報を日本が活用出来なかったのは確からしい。今に至るまで日本はインテリジェンスのレベルが低いのが悲しくてならない。

  • すごく良かった。
    戦時中の、政府のあの分からず屋加減が何とも腹が立つ。
    あの時代は、今とは色々違うから考え方も違うのかもしれないけれど、終戦が決まるまで、やきもきした。

    • hs19501112さん
      【戦時中の、政府のあの分からず屋加減が何とも腹が立つ。】

      に、同意します。
      【戦時中の、政府のあの分からず屋加減が何とも腹が立つ。】

      に、同意します。
      2014/01/06
  • 「第二次大戦三部作」
    祖国とは血・生まれ、地・育ち、、
    誰を何を信じてたらいいのか。。

    大和民族とは・・・
    人を人と考えていたか。。

  • 密命を背負ってストックホルムから日本へと向かう… シチュエーションは違っても主立った部分は前二作と同じパターンな印象。

    主人公に日本人の血が流れているけど、純粋に日本人と言いづらい境遇とか、いろんな妨害を受けながらも臨機応変に、そして友に旅してきた仲間が犠牲になってしまうが、なんとかゴールにたどり着く展開。「ベルリン飛行指令」は零戦での移動で特殊性が感じられましたが「エトロフ発緊急電」と本作は似通っているところが多く感じられ、新鮮味が減退してしまった感があります。

    加えて、本筋であろう冒険譚以外のパートが大ボリュームすぎて、少々冗長な感が強いです。“密使”としての話は、実質全ページの半分くらいなんじゃないでしょうか。

    なので、前二作ほど集中して読むことが出来ず、微妙な気分で読んでいましたが、終盤に安藤大尉の映った写真と、彼が書いた手紙が登場する場面。そして(おそらく幻と思いますが)零戦の姿が現れたときは、さすがに胸がアツくなりました。

    • hs19501112さん
      この三部作の感想・・・

      “ベルリン~”>“エトロフ~”>“ストックホルム~”

      ってことでしょうか?
      だとしたら、自分と全く同じ...
      この三部作の感想・・・

      “ベルリン~”>“エトロフ~”>“ストックホルム~”

      ってことでしょうか?
      だとしたら、自分と全く同じ順番です。世間的評価は“エトロフ”が高いようではありますが・・。
      2012/10/23
    • inutoolsさん
      hs19501112さん>
      コメントありがとうございます。登場人物が他二作より魅力的に感じられたためか、私も「ベルリン〜」が一番面白いと思い...
      hs19501112さん>
      コメントありがとうございます。登場人物が他二作より魅力的に感じられたためか、私も「ベルリン〜」が一番面白いと思いました。
      2012/10/23
  • (★★★より上の ★★★+ )

    どこまで行っても報われない命がけの密使。

    結局すべてに間に合わなかった。


    下の “引用” を何と読むか。
    これによって、数知れない命が。

  • 山脇が最後に思いを馳せる石川啄木の詩「飛行機」、恥ずかしながら知らなかったので詠んでみた(コメント)。山脇の決断の苦悩を踏まえ戦後日本の歩みを鑑みると、経済成長、復興とは何か?震災後の今だからこそ考えさせられる。

全33件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐々木譲の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×