深夜特急5 ー トルコ・ギリシャ・地中海〈文字拡大増補新版〉 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235325

作品紹介・あらすじ

アンカラで〈私〉は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティーに誘われて……。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅も、いつのまにか「壮年期」にさしかかり、〈私〉はこの旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた──。

感想・レビュー・書評

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  •  沢木耕太郎の旅行記はなぜこんなにも面白いのだろうか?それは彼が単なるヒッピー的なバックパッカーではなく、知性を備え、学ぶ力や応用する力を持った若者だからである。オーディブルで聴いたのだが、ハッとするような表現力にときどき読み返したくなった。オーディブルだとそのフレーズをメモろうとする間に流れてしまう。
     これも後から紙の本を買ってしまうかもしれない。

  • 一巻から六巻のうちの五巻に突入しました
    旅も終盤となると、ちょっと淋しい気持ちになります
    今回は、沢山の世界遺産や有名地が出て来るので、私もネット検索しながら一緒に旅した気分に浸りました

    トルコ(エルズルム、トラブソン、アンカラ、イスタンブール)から始まり
    ギリシャ(アテネ、ペロポネソス半島のミケーネ、スパルタ、ミストラ、オリンピア、パトラス)
    そして、地中海船旅でイタリアを目指します

    トルコでは、ちょっとだけ贅沢をして、著者お気に入りのブルーモスクと海が見える部屋に泊まります
    そして日本で頼まれていた事があり、それを果たしにアンカラに行きます
    今まで、厳しい経済的な状況とその時の気分で動いていたのですが、初めて使者として役目を果たします

    ギリシャでは、沢山の遺跡や廃墟を見ます
    それと、「暇か?」とたまたますれ違った男性に声を掛けられ、そのまま男性の友人の家の誕生日パーティーに行き、そのまま泊まるという、面白いエピソードもありました

    トルコとギリシャではどこに行っても、記念写真が大人気でした
    カメラを向けると沢山の人達が集まって来て、みんなが撮って欲しいと撮影大会になって大騒ぎになります
    トルコでたまたま知り合った若い男性に案内をしてもらい、そのお礼に日本の5円玉、今まで旅して来た国のコインを一つずつあげたらとても喜ばれました
    みんな記念を大事にしているのに、著者の記念に残るものと言ったら、パスポートの各国のスタンプだけです
    経済的な面も勿論ありますが、ちょっともったいないなあと、貧乏長旅の大変さがわからない私は余計な事を思ってしまいました

    次はいよいよ最終巻、イタリアからです
    『旅は人生に似ている』と語っていましたが、どうなるのでしょうか?!
    そして、『最後のオチ』って何なんでしょう!
    ワクワク(*'▽'*)します↑↑

    • hibuさん
      おはようございます!
      私もネット検索しながら、一緒に旅してる気分で読みました。
      いよいよラストですね!
      名残惜しみながら、楽しんでください^...
      おはようございます!
      私もネット検索しながら、一緒に旅してる気分で読みました。
      いよいよラストですね!
      名残惜しみながら、楽しんでください^_^
      2023/08/04
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      hibuさん、ありがとうございます

      初めはサラッと流していたのですが、次々と世界遺産や有名地が出て来るではありませんか!
      これは勿体無いと...
      hibuさん、ありがとうございます

      初めはサラッと流していたのですが、次々と世界遺産や有名地が出て来るではありませんか!
      これは勿体無いと思い、面倒くさがり屋の私ですが、ネット検索しながら読んでみたら全然違いましたね(*^^*)

      最終巻だけ手元にないので、どうにかしなくっちゃっ
      2023/08/04
  • 沢木耕太郎『深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海』新潮文庫。

    いよいよ完結まで残すは、この5巻と6巻だけとなってしまった。インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスでの移動を主題に旅を続ける著者はイランからトルコ、そして、ギリシャへ。

    多くの若者たちには本作を読み、著者と同じように色々な旅を経験してもらいたいと思う。何故ならば本作の中で著者が認めた通り『旅は人生』であるからだ。旅という特異で濃密な時間で様々な経験していれば、普段の生活など大した問題とは思わなくなるのだ。

    『旅は道連れ世は情け』という言葉があるが、旅先では普段の生活以上に、人との出会いや親切が身に染みる。著者も次第に長い異国での旅に馴れ、旅先での親切を素直に受け入れられるようになる。

    アンカラで画家のトルコ人女性を探し出し、東京の知人から預かった物を手渡すミッションを完了した著者は再びゴールを目指す。金が尽きたらいつでも旅を終えて良いという気持ちと出来るだけこの旅を続けたいと思う気持ちの葛藤……しかし、著者は納得のゆく旅を追い求める。

    巻末には高田宏と沢木耕太郎の対談『旅を生き、旅を書く』と『あの旅をめぐるエッセイⅤ』を収録。

    さて、いよいよ最終巻。

    本体価格590円
    ★★★★★

  • 唯一と言って良い「旅の目的」がここで明らかになる。前作読了後ブランクがあったから、そんな目的あったっけ?とスッとぼけていたけど本書でちゃんと紹介してくれていた笑(ネットも携帯も存在しない時代というのもあるだろうけど、手がかりが殆どない状態でよく筆者に依頼できたな…というのが個人的な感想…)

    目的を果たす舞台となったアンカラの回は意外とあっけなかったけど、シリーズの中では一番ドラマチックだったと思う。今回に限らず毎回お芝居のようなシナリオだから、通過地点をアップデートする度にこうした出会いが待っているのかと認識しちゃいそうになる。(筆者だからこそ、そうした出会いを実現出来たと言うのに) 一方で目的地へ急いでしまうと著者がトルコ行きのバスで見かけた、目に「無関心の色」を浮かべた少年みたいになるのだろうか。
    とか言うものの自分だってシリーズを追う毎に初期ほどの感動を見せなくなっていたりする…それでも著者のジェスチャー読解力だけは毎回感心してしまうけど笑(状況にもよるけど相手が両手をパーンと叩いただけでそれを「交通事故」だと理解されるのは凄すぎる…)

    「本当に旅は人生に似ているのだ。どちらも何かを失うことなしに前に進むことはできない……」

    筆者がイスタンブールとお近づきになるシーンは圧巻。(今まではバスや列車の移動がメインだったから、ここで船が登場しただけで新鮮…!)
    アジア圏ではあれだけ地域や人に溶け込んでいたのに、ここでは最初から簡単に行かなかったみたい。イスタンブールと言うよりコンスタンティノープル(響きが懐かしい笑)と対峙しているみたいだった。なお都入りしてからは無事平常運転に戻り、沢木節全開で城下をエンジョイされていたけど。(たとえ熊が相手であろうともそれは変わらず笑)

    スパルタ跡で出会った(古代ギリシアの学者を彷彿とさせる)老人とのエピソードとか絵になる話もちらほらあったけど、章を経るごとに文章が単調になりつつある気がした。
    筆者も前述の少年になったのか?と危惧したけど、地中海の一点の翳りもない青が彼を無力化させていることを知り、完全無欠な旅も案外危険かも…とまたもや認識しちゃいそうになるのであった。

  • 長旅が続き、新鮮さを失い、旅するモチベーションを失い空っぽになってしまったのですね。
    旅は人生に似ているという。
    何かを失うことなしに前へ進めない。
    旅はいよいよ最終章へ。

  • 文庫版では6分冊になっている「深夜特急」の第5集。ということは、旅の終わりが近づいてきているということである。最終目的地をロンドンに設定しているこの旅は、香港から始まり、途中空路が一部あるものの、この第5集では、ギリシャからイタリアに地中海を渡る船上まで来ている。ここまで来れば、陸路であってもロンドンは近い。
    この第5集でも、大きな事件は起こらない。むしろ、第5集のハイライトは、地中海を移動する沢木耕太郎が、船上での出来事や船上で考えたことを、知り合いに送る手紙の内容ではないか、とも思う。

    この手紙の中でというか、この第5集に入って、沢木耕太郎は、「旅とは何か」というようなことを、よく考え、作品中に書くようになっている。旅の途中で自分自身を破綻させてしまうほど、徹底的に自己に淫することが自分にはできなかった。そして、その機会は既に失われている。ということは、既に「旅は終わってしまった」という喪失感を感じる、ということを、沢木耕太郎は手紙の中に書いている。
    巻末に対談があるが、その中で松尾芭蕉の「奥の細道」が登場する。芭蕉は、「奥の細道」の前文で、「古人も多く旅に死するあり」ということを書いているということが紹介される。中世の先人たちは、終わりが決まっていない旅をしていたのではないかという考えも紹介される。すなわち、旅というものと、生というもの(あるいは、死というもの)がイコールになって存在していたのではないか、というのが沢木耕太郎の意見であり、そういったことを現実のものにする機会を「深夜特急」の旅では既に失ってしまい喪失感を感じるということを、手紙に書いたのだと解釈した。

    何故、人は旅をするのか、ということについては色々な人が色々なことを言っているのだと思う。紀行文や旅行記には、そういったテーマでの記述も多い。「何故、人は旅をするのか」と私が問われれば、「そうしたいから。あるいは、人間というのは、旅をせざるを得ない存在だから」と答えるような気がする。人類はアフリカで誕生して以降、移動することで種が生き延びてきた。アフリカで誕生した人類は、ヨーロッパに渡り、中東に渡り、アジアにたどり着き、そして、日本にもやってきた。それは生き延びるための移動であり、そういったことを人間は本能的に行ってきたからこそ、今の人類の繁栄があるのではないかと思う。要するに、人間は、考えもなく、放っておくと移動をする、すなわち旅をする存在、それが人間なのだ、と私は思う。

  • 旅のイメージがふわふわと頭に浮かんできて、今回も心地よい読書体験ができた。旅行記ってやっぱりいいよね。特に深夜特急シリーズは自分では体験できない旅だからこそ余計に面白い。

  • 有名な観光地やリゾートではなくて、テレビやインターネットなどの媒体では得られないその時、その都度の土地の人々との交流が描かれているから面白い。単に沢木さんはお金がなくその文化や 歴史背景の教養がないからだと仰っていたけど笑
    ヨーロッパに入ったばかりだけど、アジアでの旅の方がめまぐるしくハプニングが多いなぁと。 
    値切りの交渉にどんどん拍車が掛かっているし、 
    時に流される快感みたいなものも読んでいて楽しい。

  • "旅にも生涯がある。"とし、今は壮年期だからか、何かしらを見てもどこかで見たことがある既視感があり、新鮮味があまりない状態。
    ヨーロッパに近づくに連れて、チャイからティーに代わり、物価も上がり、観光客も増え、それぞれに異なった観光地はあれど、似たり寄ったりというのは否めない。
    思い出したようにカメラを向けることが増え、向けられた人達はポーズを決め、ついでに撮ってくれと家族を呼んできて撮ってもらい、名刺を渡して後で送ってくれという。それが写真屋のようにたくさんあり、微笑ましい。
    熊を連れた男から逃げるところは面白かった。

  • ずっと読もうと思っていたのだが、コロナで旅行できない今ほど最適なタイミングはないのではないかと思い、ついに手に取ってみた。
    寝る前に少しずつ読もうと思っていたのに、6巻一気読み。こんな旅行に憧れる一方、私には無理な気もするのでやはり読書が正解!
    あと、何気に対談と巻末エッセイが面白い。

    トルコ・ギリシャ・地中海編は、ゲンチャイ氏の不思議な魅力が気になった。
    あと、ハナモチ氏の「T」の茶の国と「C」の茶の国に分けられる説が興味深い。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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