深夜特急6 ー 南ヨーロッパ・ロンドン〈文字拡大増補新版〉 (新潮文庫)
- 新潮社 (2020年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101235332
作品紹介・あらすじ
イタリアからスペインへと回った〈私〉は、ポルトガルの果ての岬サグレスで、ようやく「旅の終り」の汐どきを摑まえた。パリで数週間を過ごしたあとロンドンに向かい、日本への電報を打ちに中央郵便局へと出かけるのだが──。 Being on the road ──ひとつの旅の終りは、新しい旅の始まりなのかもしれない。旅を愛するすべての人々に贈る、永遠の「旅のバイブル」全 6 巻、ここに堂々の完結!
感想・レビュー・書評
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旅は5巻の地中海クルーズでもう終わってるようなもので、南ヨーロッパの風土を知りながら余韻を楽しむ。
終わり方カッコいい。それが全て。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
旅はついに、あの美しくて美味しいイタリアへ、、!! 四半世紀前の記憶の扉が開かれてゆく。わたしも、フィレンツェがいちばん美しかったとおもったことを思い出した。もっとも、釣り銭がないからといってちょろまかされたことはなかったとおもうけれど。
沢木青年が観光地という観光地にけっして行かないのがなんだかおかしかった。ピサの斜塔はきっとまだワイヤーなとかけられていなかっただろうに。とがってるな~。ほら、
「私は自分の心に感動することを許さなかった。こんな人工的な観光地に感動するとは何事だ、と無理に自分の心を押さえ込んでいた。」
なんていっているみたに。とても信頼できる。この沢木耕太郎という作家を。モナコのカジノに本気で入れると思っていたところとか。卒業して何年もたっているのに学んだスペイン語をきちんと覚えているところとか。そして「この世の中に天才などというものがいるとは信じたくはない」とおもうところとか。
まだまだ 旅 の途上。終わらせたいけれど、そのなかでなにか煌めきと学びを見つけなくっちゃ。そう、選択肢はほんとうはたくさんあるはずだもの。
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最終巻。単行本第三巻の後半部分だから、5巻と同様に如何に旅を終わらせるかと言う点について自問しながら旅をする。イタリアからモナコを経由してスペインに入りポルトガルまで行き、ヨーロッパの果てまで来て旅の終わりを確認する。その後はパリに出て、ロンドンに移動する。文庫本に入っている対談で沢木さんはあまり美術品などの感想を記していないと書いてあり、唯一あった風景がこの巻に出て来た。美術品の解説より人との触れ合いの方が面白いよな。パリでの出会いも素敵だったし、最果ての地での宿泊地の見つけ方も良かった。運がいいんだろう。しかし全巻通じてあっという間に読めた。今は出来ない旅になってしまっている。あとでやろうと思っても出来なくなる事もあるんだな。行こうと思った時に行かないと。旅がしたくなった。
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Cの国から始まりTの国を渡り、そして再びCの国に舞い戻る。だからこんなに良い出会いが巡っていたわけだ。
イタリアの美しい街並み、アートが想像力を掻き立て、パスタを食べたくなる、人々の悪意のないいい加減さ。凄く行きたくなった。
沢木さんは色んなものを引き寄せている。
コミュニケーション能力も高くて誰からも愛され、それでいて人間臭さもあり、なんと魅力的な人間なのでしょうか。
彼の文章は自分も共に旅をしているかのような、彼が観ている景色が思わず浮かんでくるような、それでいて一癖あって面白くて中毒性がある文章。
旅はまだまだ終わらない。 -
旅は続いていく、そんな自由な空気感を感じさせる終わり方だった。趣くままに旅に出たい、自由な雰囲気を感じさせてくれる面白い内容でした
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ワレ到着セズ
私も人生こうありたいと思った、簡潔で好きなフレーズ。
井上陽水との対談が面白かった。
バランスを欠いている人は何かで補おうとしているというくだり。
私もバランスの欠いた人に惹かれるが、その欠けている部分を補うものが、その人の魅力になるのだろう。 -
アジアと違ってヨーロッパは国としてはもう落ち着いて何も事件が起きない。そこに虚しさも感じていた著者がなんとか旅を終わらせる理由を探す。
それをローカル路線バスを乗り継ぐうちに見つけたのが面白かった。
旅の終わりは本人が終わりと思ったらそこで終わるもので、そこがどこだろうと大した違いはないのかもしれない。そこに何も大きな感銘を受けなかったことが何よりもリアルに思えて良かった。 -
「分かっていることは、分からないということ。」
インドのデリーからロンドンまで乗合バスで駆け抜けた旅の終わり。
世界はどこまで行っても分からないことばかりだった。
一緒に旅したような達成感といくばくかの喪失感を味わっています。
いやいや、旅の終わりは旅の始まり?
最後に打った電報がイカしてますね。
日本に住んでいるとオブラートに包まれているけど、人間が生きる上で必要な根源的な営みや欲求がむき出しのまま晒されていた。
それをむき出しのまま体感したかったのだと思う。
特に香港、インド、シルクロードがエキサイティングでしたね -
旅の始まりの香港・マカオの活き活きとして熱気に溢れた描写に比べて、旅の終わりを迎えるポルトガル、スペイン、イギリスでの穏やかで抑えた文章が印象に残りました。
それは、若者が幾多の経験を積んで歳を重ねて落ち着いていく様にも似ているような気がします。
はじめは「旅は人生に似ている」と言われることに否定的だった著者が、旅の終わりが近づくにつれてその思いに変化が出てくるのにも何か繋がる気がしました。
話は変わりますけど、6巻のあとがきでの著者と井上陽水氏の対談がまた面白かった。仲の良い、互いに独特な感性を持つお二人ならではの会話が楽しくて、だから二人のファンになったんだよなと、妙に納得してしまいました。
また、何年かしたらもう一度読んでみようと思います。