- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101247090
作品紹介・あらすじ
にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという…。表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。
感想・レビュー・書評
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短編11編。
帰還せず/飛べ、佐五郎/山桜/盗み喰い/滴る汗/幼い声/夜の道/おばさん/亭主の仲間/おさんが呼ぶ/時雨みち
すこしゾッとする話や、やりきれない話が多め。舞台はお江戸で、200年から昔の人間模様で、この本が書かれたのがだいたい40年そこら昔のこと。なのに今読んでる現代の私の胸の奥が、物語のなかの後悔や不首尾に共鳴してしまっていたりする。うまく生きられないねえ、いまもむかしもにんげんは、、、、
という溜息とともに閉じる、そんな読後感。となりのひとの話のようで、どこかに自分がいたようで。大人にオススメな短編集。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「おさんが呼ぶ」がとてもよかったです。ラストでおさんが兼七を呼びに走り寄るシーンはその情景が目に浮かびました。人の心の奥底で揺れ動く感情を、文章の「裏側」から感じさせられる、そんな作品ばかりでした。
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藤沢周平の短篇時代小説集『時雨みち』を読みました。
『三屋清左衛門残日録』に続き、藤沢周平の作品です。
-----story-------------
あの時あの女と添い遂げていれば……。
捨てた女を妓楼に訪ねる男の肩に、時雨が降りかかる。
取り返しのつかない時の流れを刻む珠玉の藤沢文学11編。
にがい思い出だった。
若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。
出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身籠っていたおひさを捨てた。
あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという……。
表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。
映画化 山桜(2008年5月公開)
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1979年(昭和54年)から1981年(昭和56年)に発表された作品11篇を収録した作品… 『夜の道』、『おさんが呼ぶ』、『時雨みち』は再読、『山桜』は、田中麗奈、東山紀之主演で2008年(平成20年)に映画化されており、1年半くらい前に観たことのある作品です。
■帰還せず
■飛べ、佐五郎
■山桜
■盗み喰い
■滴る汗
■幼い声
■夜の道
■おばさん
■亭主の仲間
■おさんが呼ぶ
■時雨みち
■解説 岡庭昇
田中麗奈、東山紀之主演映画『山桜』の原作を収録… とり返しのつかない回り道をしてしまった――若くして不幸な結婚を二度経験した野江、、、
一度目は夫に死なれ、二度目の夫は、野江を出戻りの嫁と蔑んでいる… しかし二度も失敗することなどできず、耐え忍ぶ日々を送っていた。
そんなある日、山桜をひと枝折ろうと、爪先立って手をのばす野江の頭上から、不意に男の声がした… 「手折って進ぜよう」――薄紅いろの山桜の下、たった一度出会ったその男は……。
『山桜』をはじめ、全11作品を収録した時代小説集。
藤沢周平の短篇集はクオリティが高いですねー どの作品も面白かった! 特に主人公・野江や一途に野江のことを想う手塚弥一郎の生き方に共感でき、爽やかな読後感に好感が持てる『山桜』は大好きです。
それ以外で印象に残ったのは、
公儀隠密の厳しい生き方が強烈な読後感を残す『帰還せず』、
殺人は許されないことだけど… 因果応報の結末に納得してしまった『飛べ、佐五郎』、
汗が滴るほどの緊迫感… そして策を弄することにより、墓穴を掘ってしまった結末が忘れられない『滴る汗』、
幼い頃を思い出すシーンが、映像に浮かんできそうなほど鮮烈な『夜の道』、
解決のないエンディングが恐ろしさを増幅させる『亭主の仲間』、
明るい未来が予感できる結末が心地良い『おさんが呼ぶ』、
かなー どの作品も面白いんですけどね。 -
表題作『時雨みち』の物語展開は、藤沢周平ならではのものだと思う。
過去の過ちに向き合うことの勇敢さ、あるいは偽善性を言い立てるのではなく、取り返しのつかないことを胸に秘めて、それでも生きることの哀しさを物語る。
時雨みちを歩む主人公と同じように、読者も雨に打たれているように感じる。
哀しいが、それでも生きることへの絶望を感じさせないのは、さすがの筆力だと思う。 -
青樹社の単行本で。11篇の短編集だが、読後感幸・辛・幸・辛とテレコで並んでいるような感じ。個人的にはやはり”幸”のほうの「山桜」「おさんが呼ぶ」が好みであるが、どの作品も、ひとの過ちと後悔、苦さが通底していていい。
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久しぶりの藤沢周平作品。映画『山桜』を見て原作を読みたくなり手に取った。
収録された11の短編のうち、お気に入りは『おさんが呼ぶ』。
ぜい肉をそぎ落とした文章に、情景がありありと浮かぶ様は、さすがの藤沢作品。映画化を望みたい。
『山桜』については、キーマンとなる手塚弥一郎の出番がほとんどないにも関わらず、その存在感が圧倒的。今更ながらに著者の手腕に驚いた。 -
2020.9.2(水)¥200(-20%)+税。
2020.9.7(月)。 -
2019年3月課題
収録作品より
「山桜」