絶倫食 (新潮文庫 こ 37-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259451

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  • 「読むバイアグラ」「紙の赤ひげ薬局」とも言うべき本書からは行間から妖気が漂ってくるような内容でした。古今東西の精力のつく食材および調理法を紹介し、男が昔から精力絶倫であろうとしたかがよくわかりました。

    「醗酵仮面」もしくは「味覚人飛行物体」などのさまざまな異名をとる小泉武夫教授。今回のテーマはなんと、「精力絶倫」になるにはどのような食べ物を摂取すればよいのか?という疑問にピンピンズンズン、ピュッピュッピュッ、ピョロン、ドロドロネバネバ、ピュルピュル、ムンムンムラムラという、小泉先生オリジナルのオノマトペを交えながら、語られる食材の多様さ、怪しさはまさに「読むバイアグラ」または「紙の赤ひげ薬局」の名前がつきそうなくらい、行間から「妖気」が漂うような一冊でした。

    ニラやニンニクにはじまり、モンゴルの草原に野生している薬草などの「葉物」やハブやマムシ、エラブウミヘビなどの蛇を酒につけたり串焼きにしたヘビ料理。交尾中のヤモリを糸で縛ってそのまま酒につけたもの。オットセイ。オオカミ。シカ。ヤギの睾丸を白酒につける。もしくは刺身にしていただく。さらに南米はマカやガラナ。北極圏にはキビヤックなども網羅し、カーマ・スートラなどの「性典」を用いてあくまでも学術的に男と女のことを語り、男が古今東西、涙ぐましいまでの努力をして精力絶倫であることを追い求めていたかということが痛いほどによくわかりました。

    僕が小泉先生を尊敬するところはここに書かれている食材を現地に行って、ほぼすべて試して書いている、というところに尽きると思うのです。たとえば、中国で三種類のヘビをつけた白酒のカクテルを一気に飲み干して、その夜はホテルの部屋で一晩中元気になって、鼻血も二回出ました。などということはやはり実地に体験しないことには書けない文章であると思います。さすがに極端な例はありますが、スルメやヤマイモ、生卵やドジョウ。ねぎま鍋などの比較的一般に入手できる食材についてもさまざまな「精力向上効果」を科学的に解説されておりますので、余計なお世話かとは思いますが、最近「そちら」のほうに不安がおありの方はぜひお読みになって「励み」になっていただけたら、などと考えています。

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著者プロフィール

小泉武夫(こいずみ・たけお):1943年、福島県の造り酒屋に生まれる。東京農業大学名誉教授。専門は醸造学・発酵学・食文化論。専門的な話を、分かりやすく伝える達人。また食の未来を中心に、日本が抱える多くの大問題に挑んでいることから、「箸(★正字)を持った憂国の士」と評される。140冊を超える著作があり、小説も『猟師の肉は腐らない』、『魚は粗がいちばん旨い』など、専門的な知識に裏付けられた独自の作品が多数ある。


「2023年 『熊の肉には飴があう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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