終着駅は始発駅 (新潮文庫 み 10-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101268033

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  • ●関東の私鉄比較 →東武と東急を乗客層、乗客の服装、乗客が読んでいる物、車内広告、沿線大学などから比較。原武史「鉄道ひとつ話」の元ネタか。
    ●山手線の地形 →これも今尾恵介「鉄道でゆく凸凹地形の旅」の元ネタか。
    ●というか、自分が知らないだけで、現在の鉄道愛好作家が書いていることは、宮脇俊三がほとんどのことをすでに書いてしまっているのではないか。
    ●雑誌に掲載された短編エッセイをある程度はテーマ別に編集しているものの、一貫性という意味で長編との違和感が大きい。
    ●現在ではその魅力を説いた北海道の赤字ローカル線は全滅し、今またローカル化した本線も廃止の危機にさらされている。時代の流れを感じさせられる。
    ●そう言えば、昔といっても大学や新入社員の頃は朝夕のラッシュ時に尻押しがいたが、いつの間にいなくなったのだろうか。

  • ネタバレ 1985年(底本1982年)刊。著者が文筆業専業になった初期の紀行文集。関東圏、北海道を中心とする地方ローカル線、史的過程を意識した作品等。最後の点に関し、電車特急こだまが東阪を当日往復可能になり、車両運用の効率がそれまでよりも上がったという指摘から、己が思い込みに気づかされる。子供の頃から特急とは複数編成が当然で、最低数往復、多ければ十数往復が常態(新幹線なら10数分間隔)。だが、S30年代にはそれは何ら普遍的でなかった。己が当然に思うことの落とし穴には自戒を。なお、鳥取ストリップ劇場譚の叙述に感服。
    上手く路線名を掛詞にし、山陰/夜の風俗のある種の寂れ具合と、翌日に予定していた旅程の楽しみを対比させつつ、さらに急ぎ旅の味気無さをも風刺して見せる。お見事である。

  • 宮脇俊三氏の、初期の随筆集。
    …というより、あの「山陰ストリップ特急」の所収作と言った方が通りは良いでしょうか(笑)。
     
    タイトルのインパクトや2000年の「旅」誌宮脇特集で宮嶋茂樹が面白おかしく(しかし敬意を持って)取りあげたことで、妙に有名になった感のある「ストリップ」ですが、改めて読んでみると、宮脇氏の文章の魅力がことごとく詰め込まれた名作であることに気づかされます。

    鉄道の運賃制度に関する疑問を端緒として、どこか文明論めいた(しかし高慢さとは無縁な)視点が提示されたかと思うと、鉄道旅行の孤独さへと話題は転じ、場末のストリップ劇場へと物語は迷い込む。ここで放たれる「これも客が特急を望むからだろうか」というキッツイ皮肉が、冒頭の文明論としっかりつながって、実に見事。比較的文量のあるエッセイですが、なかなか劇場に辿り着かないあたりも、「道行」を重んじる氏の姿勢を体現しています。

    色気も何も無い、淡白な文章。でも妙に方向がずれた艶かしさは伝わってきて、そこが何とも可笑しい。やはり「ストリップ」、有名になるべくしてなった作品のようです。

  • 14/12/22、ブックオフで購入。

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著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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