- Amazon.co.jp ・本 (692ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101287331
作品紹介・あらすじ
明治天皇の声がきこえない……宮内省編修の『明治天皇紀』など公式文書をもとに書かれた従来の伝記に不満を抱いた著者は、侍従の回想や元勲たちの証言、大正時代の雑誌付録など膨大な資料を渉猟し、わずかに残された肉声からその実像に迫った。西郷・乃木に親昵し、日露戦争を嫌悪する――明治天皇の人間性を探り、明治という時代の重みと近代日本の成立ちを捉え直した渾身の評伝。
感想・レビュー・書評
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明治という時代史は多く書かれるが、明治天皇個人については語られることが少なく、遠い存在の人のように思われがち。しかし、瞬間湯沸かしのごとく怒り、嫌い、頼り、そして年齢とともに弱気になり、拗ねる人としての存在を浮き彫りにしてくれた大著。西郷・大久保・岩倉を頼り、その後は当初はぎくしゃくしていた伊藤を頼ったが、大隈・陸奥・黒田らを嫌ったとのこと。西郷の病気を思いやり、桂太郎の愛人のことを「美人か?」と聞いたり、諸葛孔明・楠正成が好きで、南朝正閏論の立場を天皇自身が選んだ!西郷の銅像を許可したのもこの人。203高地攻略に苦労する乃木更迭論に対して「乃木を替えると、彼は死ぬぞ」と語ったとは、忠臣・乃木との深い関係も感動的なほど。血と肉を持った人であることが身に染みる。10万首にも及ぶ和歌は日本文化の体現者でもあったことを示している。北一輝が「国民国家を目指してが、天皇制国家に変質している!」と明治時代に警鐘を鳴らしていたとの記述があるのは全くの驚き。
岡倉天心の「茶の本」の言葉が面白い。「彼らは日本が平和な文芸にふけていたころは野蛮国と見なしていた。しかし日本が満州の戦場に大殺戮行動をおこしてからは文明国と呼んでいる」詳細をみるコメント0件をすべて表示