音楽は自由にする (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101291222

感想・レビュー・書評

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  • 「僕はそれまでずっと、自分はこういう方向性で生きていくんだ、と思い定めるようなことはなるべく避けてきました。できるだけ可能性を残しておくほうがいいと思ってもいた。」
    この文章が私が今まで抱えていた気持ちを言語化してくれたように思う。そして将来的に選ぶ可能性があっても"今は"選ばないという選択をする自分を頭ごなしに否定していたこと、うまく言葉にできない気持ちをないものとして考えていたことに気がついた。選ぶ、選ばないの善し悪しではなくてどちらの思いも持っているという自分と出会えたことは大きな収穫。まだまだ未熟な私にはたくさんのヒントが隠されている本だった。

  • 本を読むというより優しく語りかけられているようで、まるでラジオを聴いているかのような時間を過ごすことができた。インタビューをもとにしているというから、それもあながち間違った印象ではなかったようだ。

    著者がその時々に感じたことを書いているが、人一人の人生を振り返ることと時代は切り離せないのだろう。昭和から平成の世相が浮かび上がり、自分自身の人生を振り返る契機ともなった。

    印象に残ったのは映画に関して述べられた点だ。

    「『現実』とか『虚構』というのはあえて境界を設けるための言葉で、もともと現実は虚構で、虚構も現実で、境目はないんです。」(p.228)

    境目が曖昧化されるのではなく、境界はあえて設けられるものだという。この一節をきちんと理解しきれてはいない気がするが、全く分からないかと言えばそうでもない。

    著者の人生を通して、自身の人生を見る。そんな不思議な体験だった。坂本龍一の音楽を聴きながら読み耽る、いい時間だった。

  • 坂本龍一の生涯を知るにはこの本が一番かと思う。
    音楽でしか坂本龍一を知らなかったからこの本で本当の坂本龍一が知れた気がした。あらゆるジャンルの音楽を生み出していてその時代の背景も見えて面白かった。とくにラストエンペラーは驚きだった。

  • 月刊誌のインタビュー連載記事がまとめられ、2009年2月に刊行された、同名作品の文庫版。
    なので、2009年以降のことが書かれていない。
    書店で買った時に、中身を見ずに衝動買いしたので、そのあたりのことを知らなかったため、少し落胆した。

    生い立ちから、学生時代のこと、映画のこと、YMO時代のこと、アルバムのこと、実に様々なことが書かれているけれど、個人的に面白く感じたのは後半からで、音楽の話ではないけれど何故か一番強く印象に残ったのは、環境問題についてのくだりー(316頁)。

    『人間が自然にかける負荷と、自然が許容できる限界とか折り合わなくなるとき、当然敗者になるのは人間です。困るのは人間で、自然は困らない。(略)
    そして、人間はもういなくてもいいのかも知れない、とも思った。』

    坂本龍一さんの経歴を知る以上に、どのような考えを持ち、今の時代をどう感じていたのか、そういうことに興味があるので、他の本も読んでみようと思う。

  • 2009年出版の坂本龍一さんの自伝。小さい頃から音楽に親しみ、バッハ、ドビュッシーから現代音楽を愛する。本人は勉強しなかったと言っているが、芸大の修士は伊達じゃない。山下達郎、細野晴臣との出会いのエピソードが興味深い。ポップスをやっていて音楽は独学だった彼らが、音楽を専門的に学んできた自分と同じように、音楽の核心に触れていることを知って衝撃を受けたそう。
    リベラルな環境で育ったからか、学生運動や社会運動にも積極的だった。YMOについても、どこか冷めた目で関わっていたというのは知らなかった。彼の社会や物事に対する距離感とか立ち位置がわかって興味深い。
    本書を書かれたのは57歳のとき。それから14年。やはりまだ早すぎる。

  • 2009年に刊行されたインビューによる自伝。
    この自伝によると、坂本龍一自身は自身の才能の活かし方に最初から方向性を見つけていたわけではなく、時流の中で、ある意味流されるまま自身の音楽を見出していった、と感じる。才能ある人物であるから、そのような生き方ができたのかもしれない。
    同時代の才能ある人々との出会い、様々な人々と影響し合いながら、音楽はもちろんのこと、音楽以外にも関心を広め、人生を歩んできたのだろう。
    今年、2023年、逝ってしまった。もう少し彼の活躍をみてみたかった。

  • 著者の音楽的な背景が知れてとても興味深かった。

  • 坂本龍一さんの生い立ち、歴史、考え方がわかる。

  • 坂本龍一の2008年位までの自伝
    淡々と振り返っていてサラッと読める。

  • 坂本龍一がどんなことを思って、どんな人生だったかのエッセイ。
    すごくロジカルに音楽を考えていた人だと思った。
    とても素敵な人生で、読んでいて楽しかった。

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著者プロフィール

さかもと・りゅういち:1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京藝術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、細野晴臣、髙橋幸宏とともにYMOを結成し、シンセサイザーを駆使したポップ・ミュージックの世界を切り開いた。83年の散開後は、ソロ・ミュージシャンとして最新オリジナル・アルバムの『async』(2017)まで無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasyo」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。「東北ユースオーケストラ」など音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動もおこなっている。2006年に「音楽の共有地」を目指す音楽レーベル「commmons」を設立、08年にスコラ・シリーズをスタートさせている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)など著書も多い。

「2021年 『vol.18 ピアノへの旅(コモンズ: スコラ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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